稲村ジェーン/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

稲村ジェーン

10枚目のアルバム 1990.09.01

桑田佳祐監督作品「稲村ジェーン」のために制作された曲を集めたアルバム。いわゆる「サウンドトラック」とは違う。またすべてがサザンオールスターズの演奏によるものではなく、ジャケットには"Southern All Stars and All Stars"と記載されている。だが一応分類上はサザンのアルバムということになっている。

いずれにしても1990年は年の初めに「サザンオールスターズ」というセルフタイトルアルバム、そして9月にこの「稲村ジェーン」と、1年にサザンのアルバムが2枚も出る!ということで我々ファンとしては狂喜したのを覚えている。

またこのアルバムの大きな特徴はなんといっても「希望の轍」「真夏の果実」というサザン/桑田さんの全キャリアを通じても代表曲と言われるこの2曲を収録していること。この当時はそこまで思わなかったけど、今考えるとこれはすごいことだと。ベスト盤や企画盤じゃなく、オリジナルアルバムでというのが凄い。

とはいえ全体的にはやはり「稲村ジェーン」という、60年代の湘南を舞台としたサーフィンやバンドに明け暮れる若者達を描いた映画のために創られた曲が多く、桑田さんも当時言っていたが「スパニッシュ」音楽にかなり振ったものが多い。したがって通常のサザンのテイストとはかなり異なる曲も多いが、これはこれで楽しめる。

ただひとつだけ残念なのは、曲と曲の間に挿入されている、映画を観に来た男女の客の会話。実際の映画の音も挿入されて、映画との一体感というか関連は感じやすいが、純粋に音楽を楽しみたい場合にははっきり言って邪魔。特にアルバムを通して聴いてるときはまだいいが、特定の曲だけを聴きたい場合には明らかに余計なものがついてくる。このアルバムでしか聴けない曲もたくさんあるので、そこが非常に残念。

でも、最後の最後に、主演の清水美砂(現在は美沙)さんのセリフ「暑かったけど、短かったよね、夏」という一言。これにはやられた。この一言にこの映画が集約されているのだろう。