ライブレポート【ネタバレ注意!】サザンオールスターズLIVE TOUR 2019〝キミは見てくれが悪いんだからアホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!?ふざけるな!!2019.05.18-05.19福岡ヤフオクドーム(2)

ここまで20曲だが、まだまだ中盤!あまりメジャーとは言えない、やや重苦しいムードでライブは進んできたが、ここから雰囲気は一変!

21. 当たって砕けろ
22. 東京シャッフル
23. DJコービーの伝説
24. わすれじのレイドバック
25. 思い過ごしも恋のうち

ガラッと雰囲気が変わり、スクリーンにはカラフルな「SOUTHERN ALL STARS」の文字が浮かび、関口ムクちゃんのベースはモータウンぽいリズムを刻む。前のパートの重苦しい雰囲気から一気に明るくて楽しい雰囲気に。しかも曲は滅多にライブでやらない「当たって砕けろ」!今回始めて、デビューアルバム「熱い胸さわぎ」からの曲。この構成が桑田さんの「大いなる裏切り」であり、このギャップがあまりにも大きくて、会場の客もここまではやや戸惑いがちだったのが、ようやく「普通に」ノリノリになってくる。とにかくここからの盛り上がりは尋常じゃない。この曲の♪Wooo, Wanted!なんてフレーズも楽しくってしょうがない。

「当たって砕けろ」から切れ目なしに「東京シャッフル」へ。テンポよく明るい曲が続く。「D.J.コービー」の前はあの「ベストヒットUSA」のテーマソングが流れ、スクリーンに小林克也氏が登場。往時を彷彿とさせるDJぶりで“The Legend of D.J. Koby”と紹介されてこの曲がスタート!リアルD.J.コービーの登場に会場は大盛り上がり!こんなストレートなロックンロールもこのライブではこれが初めてで、ここもひとつのハイライトになった。小林克也氏の映像は、曲の間も、終わってからも続き、最後は“See you next week.”というお決まりのフレーズで締め。

さらにさらに!次の「わすれじのレイドバック」の感動は忘れられない。レコードではイントロはふわっとした始まり方だけど、同じメロディながらここではバスドラムなんかが入ってインパクトの強い、感動的なイントロになっていた。しっとり聴かせるというより、レコードよりわずかにテンポが早くてちょっとリズミカルな感じ。映像では初期のサザンの写真がモノクロで映し出されてなんとも言えず感動的。昔のことを思い出して、っていうのもあるけど純粋に今ここで聴いているこの曲の素晴らしさに感動して、ここは思わず落涙。この曲のメロディはホントに最高。最後の♪ラララ~ララ~ララというパートでは両手を大きく広げて左右にウェーブ。桑田さんもこの時はアコースティックギターから手を放して、また楽器を持っていないTigerやODYのコーラス陣も、そして広いドームの観客全体が。圧巻。レコードではここの歌詞は“Everything is alright now. I believe in you just forever.”とかだけど、ここは「一人じゃ泣いたって情けないまで」「ひと夜の恋なんて夢見てるようで」と来て、最後は「ひとりひとりを抱きしめたいのさ」そして「Oh, Oh, Oh, Oh~」で終わり。感動しかない。このパターンは25周年ライブでもあったけど、あの時はメドレーのラスト。今回はフルコーラス。この曲をフルコーラス演奏したのって、いつぞやの年越しライブを映像で観たことあるけど、ほんとに久しぶりじゃないだろうか?

初日にスタンドから観てた時、「レイドバック」の途中でステージ下にぞろぞろと10人くらいのスタッフが集合して中央付近に進んでいくのが見えた。「もしや?」と思ったら、果たしてこれは思い過ごしも恋のうちのイントロでチープな紙テープをステージに放り投げる人たちだった!このチープ感は明らかにデビュー当時を意識したものだろう。「レイドバック」の感動のあとだけに「思い過ごし」のイントロでは会場は爆発したと言ってもいいくらいの盛り上がり!ステージのメンバーも含めて全員がノリノリ。サビの部分ではみんなで両手を前後に振るのがお決まりになったようだ。「当たって砕けろ」からのこのコーナーは78年、83年、82年、80年、79年ととにかくデビューの頃の初期の曲を集中投下していて、しかもストレートに心や身体に響く曲ばかりなので、まあ盛り上がる盛り上がる。間奏のギターは桑田さんと誠さんのツインで向いあうようにして弾いていた。こういうシーンもライブの中で毎回1度はあるけど、二人の息の合ったプレイも40年以上の年月を超えたもの、と思うと感慨深い。「思い過ごし」は今回一番盛り上がった曲のひとつかもしれない。

26. はっぴいえんど

27. シュラバラバンバ〜VENUS~恋の季節
28. マチルダベイビー
29. ミスブランニューデイ
30. イエローマン
31. マンピーのGスポット

ここでまた雰囲気が変わって2015年のはっぴいえんど。これはまた人気曲。ここで意外だったのは、映像は何もなくて(!)桑田さんはここまでギターを持っていたのが手ぶらになってハンドマイクでステージ両サイドを移動しながら隅っこのファンに手を振り、「ありがとね」と声をかけながら歌っていた。1番では上手(ステージ向かって右側)、2番では下手(同左側)へ。このリラックスした感じと、曲の持つ「仲間」とか「大切な人」を思う気持ちがまた感動を誘う。またライブでいつも思うけど間奏のバンドアンサンブルが最高。この辺になるともう夢うつつ状態。

たいていのサザンのライブでは、後半の盛り上がりに入る前はバラードでしっかり感動させて、というパターンが多いけど、そうじゃないこともある。今回はそのパターン。「はっぴいえんど」から「シュラバ★ラ★バンバ」へ。この曲ではまさに90年代!のジュリアナ風の衣装と扇子で飾ったダンサーが現れて、桑田さんも扇子を持って、サビではジュリアナ風に頭の上で扇子を振る。お客もそれを真似して大盛り上がり。また、2番のサビから少しキーが上がるところで曲調が変わった。なんか聞いたことある曲だなぁと思ったら、これは確か80年代に流行ったBananaramaの“VENUS”だ!♪I'm Your Venus, I'm Your Fire, Your Desire.というヤツ。ただし歌まではいかず、イントロだけだったので気付いた人は少なかったかも?そしてそこからさらに曲が変わって、♪忘れられないの あの人が好きよ 青いシャツ着てさ 海を見てたわ・・・ピンキーとキラーズ恋の季節!昭和の歌謡曲!シュラバ★ラ★バンバにこれをぶっこんでくるとはビックリ!そしてまたシュラバ★ラ★バンバのサビに戻って大盛り上がり♪この曲はもっとライブでやって欲しい!

ここからは最後の怒涛の連チャンノリノリコーナーへ。「マチルダBABY」はいつもの通り。炎の玉(これ広いドームの中でもあの熱が伝わってくるから凄い)と爆竹の特効、「HEY!HEY!」というシャウト、これぞサザンのライブ、という熱気はこの曲を最初にライブで聴いた83年から変わらない。当時は特効はなかったけど。

「マチルダミス・ブランニュー・デイが続くパターンはよくある気がするけど、何度聴いても、「ブランニュー・デイ」のイントロが始まった時の盛り上がりは凄い!「マチルダ」もそうだけど、この辺りは偉大なる予定調和というか、これがないと始まらないというか、新鮮さや意外性は全くなくて毎回同じパターンなんだけど、毎回必ず自分の中でグッとくるものがある。またこの曲もライブが真骨頂だろう。毎回違う間奏は、昨年の「40周年キックオフ」「Rock In Japan Fes」以来のちょっとハードなバージョン。

たたみかけるように「イエローマン」のイントロ!そしてあの謎の黒マントの仮面男が登場!この男こそがイエローマンだったんだ!途中メンバー紹介やムクちゃんのダンスのコーナーはここの伏線だったということがようやくわかる。この手法は2017年の「がらくた」ツアーでの「ヨシ子さん」(途中で謎の映像が流れて後半でヨシ子さん登場)以来か。ステージ上はイエローマンやら水着の女性ダンサーやらが入り乱れて大騒ぎ。会場大盛り上がり。🎵Tururururu〜ではみんなで両手を波のように動かすイエローマンポーズ。もう楽しくって仕方がない!

そして間髪を入れず重いベース音がリズムを刻む。「マンピーのGスポットへ!今回もマンピーヅラは「マイクを握ってろ!」バージョンだが、より進化してなんとなく男のイチモツを思わせるマイクを赤いマニキュアの手が握ってるというデザイン。なんか旗が立ってるなと思ったら「福岡好いとうよ」というメッセージだった!もうこの辺はとても冷静ではいられなくて、記憶も定かでないくらい。パンツを頭からかぶった男のダンサーがたくさん出てきて、桑田さんを挟んで桑田さんが困ってるという設定。これは昨年の「ROCK IN JAPAN」以来のパターン。盛り上げるだけ盛り上げて、曲が終わると、突然寂しげなメロディで「パンツを頭に被ったら、勉強ができなくなっちゃうよ」とか「お化けに会っちゃうよ」という桑田さんのおかしな歌が流れ(これはライブではなくて音源だった)、ダンサーが我に返って床に落ちたパンツを拾ってすごすごと寂しそうに引き上げる、という設定。「マンピー」でバーンと盛り上げながらなんとなく盛り下がって本編終了という、ワザと中途半端なままでアンコールへ。

 

でも客はみんな疲れ切っていて(メンバーはいつまでも若いけど、ファンはやはり高齢化の波には逆らえない?)、みんな座り込んで拍手や手拍子をする元気もない。ウェーブも起きない。

それでもサザンは再び出てきてくれる!

いつものようにメンバー、サポートメンバーみんなツアーTシャツを着て。でも桑田さんだけはツアーTシャツではなくて、また違うTシャツを着ていた。


32. I AM YOUR SINGER
33. LOVE AFFAIR〜秘密のデート
34. 栄光の男
35. 勝手にシンドバッド
36. 旅姿六人衆

I AM YOUR SINGERはやっぱり感動的な曲で、あの2008年の「大感謝祭」(無期限活動休止ライブ)以来、この曲がライブで聴けるとは思っていなかったので感動。桑田さんはここでもステージを上手から下手へと動き回り、会場全体に手を振りながらこの曲のメッセージをリスナーひとりひとりに伝えようとするかのように歌う。終盤に「太陽が沈むのをOh, Oh, Let's sing along. 止めて」という歌詞があるが、まさに「ここで時間を止めて!」という心情だった。

そしてこの後がプチ・サプライズ!4月に聴いた広島ではこのあとは「栄光の男」だったが、福岡ではここで港を思わせる汽笛の音などが・・・あれ?広島と変わってる?と思ったらやはり「Love Affair~秘密のデート」だった!順番が変わってる!この曲はサザンの全楽曲の中でも有数の人気曲だしライブの定番曲なので、ここは「みんなで歌おうコーナー」という感じ。「ボウリング場でカッコつけて」というところがこれまでよりも強調されていて、早くからボウリングのピンが大きく映像で映し出されていた。最後のコーラス部分では“The night we met I needed you so.”というザ・ロネッツの名曲“Be My Baby”の一節を取り入れていた。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドつながりのリスペクトだろうか。こんな細かなこだわりもファンとしてはすごくうれしい。

そして長嶋茂雄さんのあの有名な映像「我が巨人軍は永久に不滅です!」から「栄光の男」。1974年の大学生桑田佳祐もこの映像を見て、2013年になってこの曲が誕生した。広島の時とは「Love Affair」と順番が逆になっている。もう残り少ないし、個人的に大切な曲なのでここも食い入るように聴く。2番からは映像は「平成の栄光の男」イチローの映像に変わる。この曲はいつものように桑田さんはアコースティックギターを抱えて歌う。「終わりなき旅路よ明日天気にしておくれ」。

この後は広島同様「ロックンロールスーパーマン」を期待したが、あれ?様子が違う。

毛ガニがおもむろに「はじめまして!パーカッションの毛ガニです!」と語り始めた。*毛ガニはメンバー紹介でスルーされて紹介してもらってない…  「でも桑田!酷くない!?僕を無視するなんて!僕だって、サザンが大好きなんだ!!」そして毛ガニがリズムを刻み始めた!

!!!あ!!!これは!?まさかの!?

桑田さんが「Oh Yeah〜!」と客を煽り始める!

なんと禁断の(?)勝手にシンドバッド!!

あの紅白歌合戦のあとだけにもともと今回のツアーでは絶対やると思ってたけど、広島では演奏されなかったのが凄く意外で、それはそれで桑田さんのある種の「裏切り」〜シンドバッドはなくてもファンを楽しませてやる!というこだわり、決意の表れなのだろうと解釈していた。それが、5月4日放送の「夜遊び」で、ライブ後のファンのアンケートを読んでいて、「あの部分は××と同じでしたね。」という指摘があったそう。実はそこは桑田さんも気にしていたところらしく、痛いところを突かれたらしい。それで「今回は絶対やらないと決めていた曲を引っ張り出した」と、ライブの内容、構成を途中で変えたことを示唆していた。たしかに、「Love Affair」〜「ロックンロールスーパーマン」という流れは昨年の「40周年キックオフライブ」(NHKホール)のアンコールと同じで自分も気にはなっていた。だから今回「Love Affair」と「栄光の男」の順番を変えてきたのかと思ったし、もしかして別の曲の投入があるのか?とは思ったが、まさか2005年の発表以来どんなライブでも必ず演奏してきた「ロックンロールスーパーマン」を外すとは思わなかった!さらにまさか「勝手にシンドバッド」が入るとは!

でも個人的には、また会場全体としても、ここは超超ビッグサプライズで、最大の盛り上がりとなった。🎵ラララーラララで銀打ちテープがバーン!あの紅白の印象があるだけに、ここで聴く「シンドバッド」は最高!!

いよいよ最後の曲がやってきた。短いMCの後で「最後の曲を聴いてください」と言って始まった「旅姿六人衆」。映像には「旅姿四十周年」と表示された。サザンは今六人衆ではないからだろうか?ファンの方を指差しながら「お前が目の前にいるならいい」と歌われるとこっちも涙を堪えられなくなる。「華やかな者の影で今 動く男達」は「〜動く仲間達」(今は女性スタッフも多いのだろう)、「Mr. Suizuらがいてくれたら」は「Mr. Nanyaさんらが〜」(現在の舞台監督)へ変えて歌っていた。ラストの🎵ラララーという“Hey Jude”を思わせるコーラスはみんなで両手を広げて大きくウェーブさせる。もう一度最後に桑田さんのボーカルだけで🎵お前が目の前に〜と歌い、最後は🎵福岡でまたやろうね みんな元気でまた逢おうね 福岡でまたやろうね〜 みたいなエンディング。ここのメロディは「20周年渚園ライブ」のラストで演奏した時に「Do you remember love is forever ?」と歌っていたのと同じメロディ。なんとも言えない感動的なエンディングだった。

終わっていく寂しさ、圧倒的なパワーやエネルギーをもらった興奮、感謝、いろんな感動が渦巻いているけど顔はひたすら笑顔になってる。

エンディングはいつものように簡単なメンバー紹介とともにみんなステージ前方に整列(ここでも毛ガニはスルーされていた)してご挨拶。いつもはサザンの最新曲がBGMとして流れるが、今回は茅ヶ崎の大先輩、尾崎紀世彦また逢う日まで。サポートメンバーやダンサーは退場してサザンの5人だけで再びステージを端から端まで移動して挨拶。いつものように手厚いエンディングだった。最後は「福岡バンザーイ!」と万歳三唱で終了。

考えてみるといつもにも増してダイナミックな構成だけど凄いパワーを感じ、エネルギーをもらったライブだった。ファンの顔ぶれもかなり年齢が上がってるのがわかるけど、こんなオジサンやオバサンが派手なツアーTシャツを着て群がるというのがよくわかる。今このライブを形容するのに一番しっくり来る表現は「愛と生命力」という感じかな?

2日間で計7時間。ずっと笑顔でいられるこんな時間って間違いなく他にない。