Eric Clapton 102nd Live at BUDOKAN 2023.04.23.mon

Eric Clapton Live at Budokan 20230424

自分にとっては初めての日本武道館。2006年以来17年ぶりのエリック・クラプトン

過去には2001年福岡。初めてのクラプトンのライブに大感激。生Layla、Bellbottom Blues、Change The World、Tears in Heaven・・・このツアーの模様は"One More Car, One More Rider"としてCD化された。

2003年広島。初めてI Shot The Sheriffを聴いてぶっ飛んだ!

2006年大阪。デレク・トラックス参加のツアーで当時は知らなかったが、デュエイン・オールマンの息子ということでこれはデレク&ドミノスの再来か!とあとから感激。デレクのスライドギターによる、空をたゆたうようなLayla後半のギターソロはこの時だけのスペシャルバージョン。このツアーはアメリカではJJケイルも参加して、その模様が昨年になってLive in San Diegoとして発売。

そして今年のツアーは武道館で100回めの公演。これは外国人アーティストでは最多の記念すべき公演。またクラブトンさんも78歳ということで次があるのか?ということで今回は参戦を決断。

 

席はスタンド1階南東席の前から12番目だったか。ななめ上手側からステージを観る感じで、近くはないが、全体が見渡せる。両サイドに大きなスクリーンがあってここでクラプトンのアップ、特にギターを弾く手元のアップなどを映していた。照明はステージ上にまんべんなくあたるような反射板のようなものが設置してあって、スポットライトはなし。

観客の年齢層はかなり幅広くて、けっこう若い人が多いことにびっくり。

開演予定は午後7時だったけど、6時59分にメンバー登場。バンドは、エリック・クラプトン〈G./ Vo.〉クリス・ステイントン〈Key.〉ドイル・ブラムホールII〈G./ Vo.〉ネイザン・イースト〈B.〉ポール・キャラック〈Key. / Vo.〉ソニー・エモリー〈Dr.〉シャロン・ホワイト & ケイティ・キッスーン〈Back Vo.〉。ギターのブラムホール、ベースのイースト、キーボードのステイントンはよく覚えているけど、ドラムはスティーブ・ガッドではなく、はじめての人みたい。途中で気づいたが、ドラムの人が来ていたTシャツには日本語で「侍」のプリントが。もう一人のキーボード、キャラックは初めて見たが、途中で「あ、昔ラジオで聴いたニック・ロウのライブで一緒にやってた人だ」と気づいた。また女性コーラスは自分が行ったクラプトン・ライブでは初めて。この2人のどちらがあの「ケイティ・キスーン」さん、なのだろう?

M1. Blue Rainbow

注目の1曲目は、聞いたことのない、ちょっとブルースっぽいインスト曲。後から知ったがこれは「Blue Rainbow」という新曲で、先日亡くなったジェフ・ベックにささげた曲らしい。初めてながらとてもいい感じで、できたらレコーディングしてほしい。

M2. Pretending

そして聴きなれたイントロ。でもライブで聴くのは初めてのPretending。今回はいきなり「ロックなクラプトン」からスタート。

M3. Key To The Highway

ブルースのスタンダードでクラプトンもたびたび取り上げている曲だけど、個人的には2001年のアコースティックバージョンがインパクトが強くて、今回のエレクトリックバージョンはむしろ新鮮。ずいぶんリラックスしてアーシーなブルースを楽しむことができた。

M4. Hoochie Coochie Man 

出た!ブルース!これはクラプトンさんのライブでは定番ともいえる曲だけど、こんなに早くくるとは。このあたりで確かピアノやキーボード、ギターのソロまわしもあったと思う。

M5. I Shot The Sheriff

イントロの前にクラプトンさんが軽くギターでリズムを刻み始める。もうそれでわかってしまうこの曲。この曲を聴きにきたと言っても過言ではないほどの素晴らしいパフォーマンス。最初の"I shot the sheriff~"というコーラスに女性コーラスが入ってボブ・マーリィのバージョンみたい。でもほかのところでは完全にクラプトンさんの曲にしてしまっているようで、すごいのひと言。後半のギターソロはこの曲特有の長い「キュイーン!」というチョーキングを起点に、静けさからだんだんと盛り上がっていく。この流れは形容のしようがないほどの高揚感をもたらしてくれる。今回もその期待に十分応えてくれる素晴らしい演奏だった。一気にライブはクライマックスへ。気持ちはスタンディングオベーション

M6. Kind Hearted Woman

ここからはアコースティックセット。一転して落ち着いたリラックスした雰囲気に。

そして演奏されたのは、ロバート・ジョンソンの曲でクラプトンさんお気に入りの"Kind Hearted Woman"。こんな風にアコースティックでこの曲を演奏するのも珍しいのではないか?新鮮でこの曲の魅力を再発見したかも?

M7. Nobody Knows You When You're Down And Out.

これもブルースのスタンダード。有名な"Unplugged"をはじめ、最新作(?)のThe lady in the Balconyでも取り上げているクラプトンさんにとってもお気に入りの曲。栄光と挫折を何度も経験してきた彼の精神性の現れた曲なのだろう。でも演奏はリラックスそのもの。

M8. They Call Me The Breeze

「これはJ.J.ケイルに」と言って始まった。J.J.ケイルのトリビュートアルバムで取り上げていた曲で、いかにもJ.J.ケイルらしい、また彼を敬愛するクラプトンさんらしい曲。アコースティックコーナーの流れは一貫してリラックスしているけど、ルーツ・ミュージックへの敬愛が感じられる。このアコースティック・セットは今回のライブの大きなポイントだったのではないか?

M9. Sam Hall

「これはアイルランドのトラディショナル・ソングだ」といって歌い始めた。事前にApple Musicの「予習用プレイリスト」というやつで聴いていたけど、それでもなじみのない曲。でも初めてなのに聴いたことあるような、懐かしい草の香りがするような曲だった。

M10. Tears In Heaven

イントロの1秒でわかる、聴きなれたこの曲。生では久しぶりに聴いた。

いつのまにか、スタンド席のところどころでスマホのライトが見える。最初は「誰だこんな時に・・・」と思ったけど、だんだんとそのライトの数が増えていき・・・「これはペンライトかLEDライトの代わりにしようとしてるのか」と気づいた。観客からの粋な演出、というべきだろうか?ちょっと感動して自分もスマホのライトをつけてゆらゆらと揺らしてみた。ほかのライブでは感じたことのない演出だった。

また、演奏も、それに気づいたのだろう、十分に応えてくれる演奏だった。

M11. Badge

アコースティックセットのインパクトは強烈で、すっかり身をゆだねてリラックス。ここで再びエレクトリックセットに戻って、またも1秒でわかるイントロ。「これを聴くために来た」という1曲。

2コーラス終わったところで、わざとギターの残響をひずませる様子が印象的だった。またこの曲だけではないが、ギターソロがとても調子よく見えたのは自分だけではないはず。

クラプトンの曲の中でも1・2を争うカッコいい曲だ。

M12. Wonderful Tonight

ここはもう定番の連発でいよいよクライマックスの感が。

この曲でもTears~のようなスマホライトの演出が客席から発生。でも自分的には、2度目となるとなんか感激が薄くてここは乗らなかった。この曲最近は、以前の"24Nights"や"One More Car, One More Rider"のバージョンのように後半を長く引っ張らず、シンプルに終わらせるようになっているが、オリジナルに近いシンプルなアレンジもいい。

M13. Crossroads

キター!ここで来た!クラプトンさんの象徴ともいえる曲。ガンガンギターを弾いてくれて、血管切れないかと心配になるほどドスの効いた声でがなり立てる。

実は事前に聴いていた「The Lady In The Balcony」では以前に比べて声の張りとかがないような気がして、「やはり歳なのか?」「あまり期待し過ぎないほうがよいかも?」なんて考えていたけど、そんな心配を吹き飛ばすような健在ぶりをまざまざと見せつけられた。

M14. Little Queen Of Spades

今回のブルースはコレ!クラプトンさんが好んで演奏するロバート・ジョンソンナンバー。正直ブルースになったらどの曲でもそんなに違わない気はするけど、この曲のギターソロとか、気合はかなり凄いように感じる。スタジオ録音もあるけど、こういうブルースはやっぱりライブで聴くに限る。またバンドのソロ回しなどもあって、最高。

M15. Cocaine

出た!誰も文句言えない曲。Laylaと並ぶライブ超定番曲だけど、今回の日本ツアーではどちらかしか演奏しないらしい。この曲をやったということは・・・・・

最後はお約束で、客席の"Cocaine‼"の大合唱で終了。そして・・・・Laylaをやらないままステージを去っていく。

En1. High Time We Went

それほど時間をおかずにアンコールへ。

事前の予習通り演奏した曲はジョーコッカーの"High Time We Went"

だけどなんと歌っているのはクラプトンさんではなく、ポールキャラック!結局クラプトンさんはソロも弾かずに終わった。このアンコールは正直面くらったけど、本編までで十分楽しんだだろ?アンコールはおまけでバンドのみんなの演奏をよく聞けよ、ということなのかな?

最後はちょっとあっけなかったけど、約2時間のステージ。事前の懸念は完全に杞憂に終わり、まだまだIncredibleなクラプトンさんを見せつけられた!

聞くところでは今年の秋にはまた"Crossroad Guitar Festival"を開催するそうだし、まだまだ元気なクラプトンさんを楽しめそうだ。ありがとう。

今回のライブ、日本のじゃなくてもいいけど、ぜひ音源化、映像化してほしい!

 

 

【ネタばれ注意!】Jackson Browne Japan Tour 2023 at JMS Aster Plaza, Hiroshima, 22 Mar.

Set 1:
1. Before the Deluge
2. I'm Alive
3. Never Stop
4. The Crow on the Cradle (Sydney Carter cover)
5. The Barricades of Heaven
6. Fountain of Sorrow
7. Rock Me on the Water
8. Downhill From Everywhere
9. Call It a Loan
10. Linda Paloma
11. Here Come Those Tears Again
Set 2:
12. Until Justice Is Real
13. The Dreamer
14. The Long Way Around
15. Sky Blue and Black
16. Your Bright Baby Blues
17. A Little Soon to Say
18. Doctor My Eyes
19. Late for the Sky
20. The Pretender
21. Running on Empty
Encore:
1. The Load-Out
2. Stay(Maurice Williams & the Zodiacs cover)
3. Take It Easy(Eagles cover)
4. Our Lady of the Well

 

会場の「JMSアステールプラザ」はキャパ1,200名のこじんまりとした会場だけど、ステージと客席の関係が近くて、音もよくて、音楽をゆったりと楽しめる環境。客層はかなり年齢層高く、やはり50代後半~60代がメインか。

全25曲。#4の”The Crow on the Cradle”は広島だけの選曲。

ジャクソンブラウンは初めてだし、正直去年くらいまでは”Running on empty”とあと数曲しか知らなかったけど、山下達郎がこれまでで一番良かったライブとして挙げていたので、昨年末に来日のニュースを聞いて迷わずチケットをゲット。それから予習しまくって臨んだ。

その過程で聴いた何枚かのライブアルバムの雰囲気がとても良くて、ファンからのリクエストに応える様子とか、リラックスしたファンとの関係性に共感を抱いていた。

この日も、派手な演出とかは一切ないけど、バンドメンバーの堅実で印象的な仕事ぶりも含めて、1曲1曲がとても深く心に残る演奏だった。

1. Before the Deluge

古い曲だが人気のある曲でほとんどのライブで演奏される。いきなり「ああ、ジャクソン・ブラウンだ」という感じ。またバックのバイオリンやペダルスティールが最高。いきなり心をつかまれた。

2. I'm Alive

比較的最近の曲。軽快で会場をリラックスさせるには十分。

3. Never Stop

これも明るくて軽快な曲。もうすっかり会場の空気は曲に集中。

4. The Crow on the Cradle (Sydney Carter cover)

核について歌った曲らしく、そんなMCを挟んで歌った。「ヒロシマは自分にとって大切な町だ」とも。

5. The Barricades of Heaven

個人的に大好きな曲で、これもライブでは必ず歌われる。

6. Fountain of Sorrow

これも初期の曲ながらイントロの迫力が印象的で素晴らしかった。ライブで聴いて大好きになった1曲。

7. Rock Me on the Water

前半のハイライトといってもいいほど。厚みのある演奏が素晴らしかった。

8. Downhill From Everywhere

一転して最新アルバムの曲。ソリッドな印象。

9. Call It a Loan

きれいなメロディーをもつ曲でリラックスできる。

10. Linda Paloma

歌姫のことを歌った曲らしいが、ラテンの陽気なリズムが楽しい曲。

11. Here Come Those Tears Again

美しいメロディ。ノリもよくてめっちゃ盛り上がる。ここで15分の休憩。

Set 2:

12. Until Justice Is Real

女性コーラス2名がステージ前方へ出て歌う。これも最新アルバムの曲。

13. The Dreamer

これも最新アルバムから。ジャクソンの得意なラテン系の曲。

14. The Long Way Around

これは正直わからなくて、あとから探したけど、名曲。

15. Sky Blue and Black

個人的に一番好きな曲。これが聴きたくて来たといってもいいくらい。リクエストをしようと思ったけど、大声を出すのをためらっていたら、この曲が始まったのでめちゃうれしかった。静かな曲だけど、ホールいっぱいにジャクソンの歌声が響き渡るのが最高。この曲から会場の雰囲気が変わったような気がする。

16. Your Bright Baby Blues

この曲もわからなかった。勉強不足。

17. A Little Soon to Say

最新アルバムの中の人気曲。この日のライブでは3曲目のあとくらいに客席からのリクエストがあった。

18. Doctor My Eyes

ここからは明らかにわかるくらいの後半の盛り上がりへ。

19. Late for the Sky

これはみんなが待っていた名曲。しんみりと聞き入っていたけど、心に深い感動が残る。

20. The Pretender

これはレコードで聴いてもいいけど、ライブで聴くとまたいっそう素晴らしい。曲の終わりに会場全体がスタンディングオベーション。そして総立ちのまま次の曲へ。

21. Running on Empty

会場全体がノリノリに。ジャクソン・ブラウンのライブでこんなになるんだ!とびっくりしたほどの盛り上がり。

Encore:
1. The Load-Out
2. Stay(Maurice Williams & the Zodiacs cover)

アンコールは最初ジャクソン本人だけが登場して、ピアノで歌い始め、途中からバンドメンバーが参加してくる。観客のことを歌うフレーズもあるけどそこでは自然と会場から拍手が。そしてメドレーでStayへという流れはレコードと同じ。ただし、レコードよりも少しStay!というフレーズが強めに歌われて、これはオリジナル(Zodiaks)に寄せたものか?いずれにしてもこのメドレーが聴けて感激。

3. Take It Easy(Eagles cover)
4. Our Lady of the Well

この2曲もメドレー的に続けて演奏された。これが最後に来るとは思わなかったので感動。 Take It Easyの前に、「Glen Freyのために歌おう」と言っていた。

始まったのは6:35ごろで終わったのは9:20ごろ。3時間近い25曲のステージ。しかも1曲1曲本当に忘れられない深い印象を残してくれた。

桑田佳祐LIVE TOUR2022「お互い元気に頑張りましょう!」名古屋2022.11.20/横浜2022.12.30

通算51回目・52回目のサザン/桑田さんライブ参戦。

昨年に続くライブツアー。こんどはソロ3回目の5大ドームツアーからの年越し横浜アリーナ

昨年はコロナ禍真っ只中でのライブツアーで、会場のキャパ半数からスタート。マスク着用、歓声なしという制約下での敢行。今年はまだコロナも収束しない上に思いもしない戦争がはじまり、世界、そして日本の国民生活もますます厳しさをます。そんな中でエンタメ界、ミュージックシーンをリードする桑田さんは何を歌い、何を語るのか?

そんなことを考えてしまうほど、桑田さんのライブはただのエンターテインメントだけでなく、社会的な意味合いも重くなってきている。

とはいえ、今回のツアータイトルは「お互い元気にがんばりましょう」だ。我々ファンに向けためちゃくちゃストレートなメッセージだ。難しい時代だけに、一人一人へ語り掛けてくるような意味合いなのかもしれない。

席はスタンド3塁側前から44番目。同じフロアでは後ろから3番目という場所で、ステージのメンバーはほとんど肉眼では視認できない。でもまあ全体が見渡せて思ったほど悪くない。

横浜では打って変わってセンター28列(真ん中よりやや前)のほとんどど真ん中という最高の席。ステージもよく見えるし、音もよかった。

開演前のBGMは吉田拓郎、竹内まりあ、安全地帯、稲垣潤一佐野元春など、70~80年代の日本のヒット曲だった。これは意外。めずらしい。

 

そんな中での注目の1曲め。世相を反映して「しゃあない節」か?いやこれは4年前のツアーのオープニングだった。「漫画ドリーム」や「グッバイワルツ」の替え歌か?とかいろいろ予想するが、これはこれでベタだし、きっと大きく外してくるだろう。

今回は少し凝っていて、ジャズバーをイメージした映像が流れ始め「若い広BAR」という名前が。え?「若い広場」なの?と思ったら、ドアが開いてそこから桑田さんが登場する、という演出。そういえばラジオ番組「やさしい夜遊び」でそんな話してたな。そして演奏が始まったのはM1「こんな僕で良かったら。」これはまた意表をつかれた。まいりました。どんな予想も必ず外してくる。ゆったりしたジャズなので、非常にリラックスしたムードで始まり(自分も含めて、拍子抜けした人も多かったのでは?)、少しショートバージョンで終わって2曲目へ。M2「若い広場」さっきの映像は2曲目への伏線だった。曲調はジャズから古い歌謡曲(ちょっと古いリズム&ブルースでもある)へとがらりと変わったがリラックスしたムードは変わらず。自然にほんわかとした笑顔になってくるところがいい。

そしてこうなると期待したくなるのが3曲目だが。これまた驚いた。昨年も聴いた♪Ah, AhというTwist&shoutみたいなコーラス。そして聴きなれたイントロ。昨年と同じM3「炎の聖歌隊〜CHOIR」!♪開演お待ちどおさん ご来場大変ありがとうさん 毎日お疲れさん、という歌詞がやっぱり沁みる!ここがまず最初のハイライトシーンだったのは間違いない。個人的にはこの曲を聴くために出かけてきたようなものなので、もう大感動、大興奮。

 いつものように3曲終わってMC。そして次のコーナーへ。ライブで聴くのは久しぶりのM4「MERRY Xmas IN SUMMER」から始まってM5「可愛いミーナ」M6真夜中のダンディーM7明日晴れるかなM8「いつか何処かで」とおなじみの、でもやや懐かし目の曲が続く。曲ごとに雰囲気が変わり飽きさせない。

M9 は、名古屋では「愛のささくれ」だったが、横浜では、なんと「ダーリン。」横浜で聴く「ダーリン」はまた格別で、映像も横浜の名所をシルエットで出しながらクリスマスムードたっぷり。

M10 はある意味今公演最大のサプライズかも?「NUMBER WONDA GIRL」!ラジオで事前にちょっとにおわせるコメントをしてたので意外感はそれほどではなかったけど、やっぱりこの曲はいい!山下達郎もびっくりのグルーブ感が最高!

 そして、横浜では「赤い靴」の短い演出があってM11「SMILE~晴れ渡る空のように」!手首のLEDライトが点灯し、間奏では会場全員で腕を突き上げ、♪OH,Oh  ~というコーラスを心のなかで歌いあげながら、みんなの心がひとつになった瞬間といえるだろう。この曲が発表されてもうすぐ3年。昨年のツアーでも演奏されたけど、今年はまたいろんな思いをもってここに集まった人たちの一体感がものすごいパワーとなって会場を包んでいた。それは間違いなく前向きなパワーだった。

 ここでMCとメンバー紹介。そしてギターをアコースティックに持ち替えて、雰囲気をガラリと変えて、まずはM12「鏡」、そしてサプライズでM13「BAN BAN BAN」M14「Blue~こんな夜には踊れない」。「BAN BAN BAN」はオーリアンズの「Dance With Me」をほうふつとさせ、「Blue」はスパニッシュ(フラメンコ)のような妖艶なアレンジでひときわ異彩を放つ。このコーナーも間違いなく今回のライブの見どころのひとつだった。

 次はMCをはさんで新曲コーナー。M14「なぎさホテル」のなんともいえないせつなさもいいけど、今回びっくりしたのはM15「平和の街」だろう。ポップでパワフルな演奏、スクリーンに映し出される歌詞がものすごいポジティブなパワーを発散。横浜で聴いた時には思わず落涙を抑えきれなかった。

 続く曲もサプライズだった。M16 「現代東京奇譚」。最初に聴いた名古屋ではなぜこの曲がここで?と考えながらずっと聴いていたけど、人身売買をテーマにした映画の主題歌となったこの曲がたたえる痛切な悲しみに現代の世界をとりまく情勢を桑田さんは重ねてみたかったのだろうか?♪幼き日にみた夢がすべて嘘だというのなら 世の中は裏表 なぜか教えて という歌詞が胸に突き刺さる。

 M17 はこれまたおどろきの「ほととぎす~杜鵑草」。これもまた届かない想いと深い深い悲しみがテーマになっていて、この2曲が続けて訴えてくる心の深いところにある悲哀を意識させられて切なくなってくる。個人的にはこの2曲が今回のライブで桑田さんが一番やりたかったことなのではないかという気がしている。

 そしてここからは期待通りの後半の大盛り上がりコーナーへ!まずは昨年発表された曲ながらすでにおなじみとなったM18「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」両手を回転させながら手拍子を打つのも昨年のツアーの映像ですっかりファンにもおなじみになっている。そして「コブラツイスト」といえば今年亡くなったアントニオ猪木さんの技であるのは言うまでもなく、この曲は当然猪木さんの送り火のような意味合いを帯びている。後半の、オリジナルでは♪イヒヒ・・というパートで、今回は猪木さんの名言「迷わず行けよ。行けばわかるさ!」を桑田さんが高らかにシャウト!これにはしびれてしまって、目頭に熱いものがこみあげてくる。

 M19はおなじみのイントロ「悲しい気持ち~Just A Man In Love」で会場大爆発!この日2度目の銀うちテープがさく裂!もう押しも押されぬ桑田さんソロライブの代表曲となった感があり、どこで演奏しても、ダンサーがいなくても大盛り上がり!

 そしてM20「ヨシ子さん」セカンドラインビートが強調されたアレンジで、あの「(ダンサーの郁美さんが扮した)ヨシ子さん」は出てこなくて、代わりになんか気持ちの悪いじいさんの着ぐるみ?が3人出てきて、ただ突っ立っているだけだったり、のろのろと歩き回っているだけだったり。いずれにしてもこの曲の魅力を引き立てるには十分で、会場はカオスな盛り上がりに突入。

 もうライブ本編もいよいよ最終盤。いつものように息もつかせず次の曲へ、かと思ったらいきなりの桑田さんトーク。「疲れちゃったのよ。」とかしゃべり始めて、スクリーンには「誰かが降りてきています。」という字幕が・・・どうやら美空ひばりさんのものまねらしい、と気づくまでにそれほど時間はかからない。そして「真っ赤な太陽」が始まった。昨年のツアーではヒデとロザンナの「愛の奇跡」を歌って「波乗りジョニー」へ突入したが、どうやらそのパターンか?さらに昨年の夏「ロックインジャパン・フェス」でもこの演出を予定していたと言ってたので、どうやら叶わなかった演出をここで果たしたかったようだ。という期待通り、「真っ赤な太陽」に続いて期待通りのM22「波乗りジョニー!水着のダンサーがたくさん出てきて、ステージはめっちゃ華やかに!この曲独自の振り付けも定着してきて(おじさんとしてはこっぱずかしいけど)、一体感と盛り上がりはとにかくすごい!横アリでは席がよかったこともあり、ステージだけでなく会場全体のエネルギーを体感できて最高!

 この曲のラストではトランペットの「スガチン」が演奏終了のタイミングをはずしてしまうという演出があって、アンコールへ。

 いつも本編最後の連チャンは5曲なのに今回は4曲だったこと。いつものように立て続けではなく美空ひばりさんのものまねコーナーが入ったこと。などちょっといつもと違っていたけど、だからかどうかわからないがアンコールに入ってからのガンガン攻める感じが今回はすごかった。EN1ROCK AND ROLL HERO。これはずいぶん久しぶりの演奏。2007年以来か?こんなに痛快なロックンロールはめずらしいほどだけど、歌詞は政治的なメッセージを含んでいて、これも世相を反映してのことなのか?

 さらに続けてEN2「銀河の星屑」!これも意表を突かれた。この曲はバイオリンの金原さんがいないと成り立たないと思っていたが、バイオリンのパートを見事に中シゲヲくんのギターで代用していた。この曲もスタジオ盤を大きく上回る迫力で最高だった。

 そしてEN3は白い恋人達。クリスマスシーズン~年末のライブでは欠かせないこの曲。最近高い声が出ないとこぼしている桑田さんだけど、この曲の熱唱には心を、耳を奪われた。斎藤誠さんが一番好きだというこの曲のラストのパート「ただ逢いたくて、もう切なくて、恋しくて・・・涙」というところを桑田さんは懸命に歌っていた。最高。感動。

 そして最後の曲。「腕自慢のメンバー達の生演奏をお楽しみください」といって始まったのはEN4「百万年の幸せ」。この曲の持つ、幸せを願う気持ちを今こんな時代に桑田さんは訴えたかったのだろうと感じながら聴いていた。

 曲の2番からはメンバー全員が楽器を離れて前のほうへ出てきて、「今年もありがとうございました」「来年もよろしくおねがいします」とか一文字ずつ書かれたプラカード?を掲げて見せる。もちろん曲は続いて桑田さんは歌っているわけで、いわゆるカラオケで桑田さんは歌っているということがわかる。これはさっきの「腕自慢のメンバー達の生演奏・・・」というのが伏線だったことがようやくわかるという演出。でもこれは2012年のツアーでもやってたな。でもこの微笑ましい演出も、この曲のメッセージを際立たせていた。

 これでついに終わってしまった。最後にいつもの通り、メンバー全員、ダンサーまでもステージにラインナップしてのご挨拶。そのBGMは「時代遅れのロックンロールバンド」。この曲は正直ほかのどの曲よりも2022年のハイライトだったけど、夏の「ロッキン」の前に桑田さんは「リハーサルしてみたけど、この曲はあの4人がいないと成り立たないことがわかった」とソロでの演奏を断念していた。当然今回のツアーでもセットリストに入ることはなかった。でもそれが紅白歌合戦で観られるとは!!

 桑田さんは最後までずっとステージに残って拍手を受け止め、感謝の気持ちを伝え続けていた。こちらも、その姿をしっかり瞼の奥に焼き付けておこうと見つめ続けていた。

【セットリスト】

01.こんな僕でよかったら

02.若い広場

03.炎の聖歌隊~CHOIR

MC

04.Merry X'max In Summer

05.可愛いみーな

06.真夜中のダンディー

07.明日晴れるかな

08.いつか何処かで~I FEEL THE ECHO

09.愛のささくれ(横浜ではダーリン)

10.NUMBER WONDA GIRL

11.SMILE~晴れ渡る空のように

MC メンバー紹介

12.鏡

13.BAN BAN BAN

14.BLUE~こんな夜には踊れない

MC

15.なぎさホテル

16.平和の街

17.現代東京奇譚

18.杜鵑草

19.Soulコブラツイスト~魂の悶絶

20.悲しい気持ち~JUST A MAN IN LOVE

21.ヨシ子さん

22.真っ赤な太陽~波乗りジョニー

ENCORE

EN1.ROCK AND ROLL HERO

EN2.銀河の星屑

EN3.白い恋人達

EN4.百万年の幸せ

時代遅れのRock 'n' Roll Band|桑田佳祐 feat. 佐野元春,世良公則,Char,野口五郎

突然の発表、突然の配信。驚いた。たった1曲でこんなにいろんな感慨がうかぶ曲もめずらしい。でもいろいろ考えると、タイトルの「時代遅れのRock 'n' Roll Band」にすべて集約されているような気がする。

ちょっと自虐的に聞こえるけど、このタイトルには「誇り」「連帯」「友」「ポジティブ」「見果てぬ夢」などいろんな想いがこもっている。

この5人が同級生だとは知らなかった。野口五郎やCharはサザンよりも少し早いデビューで、先に活躍していたのでもっと年上だったと思っていた。

桑田さんはラジオ「やさしい夜遊び」でTraveling Wilburys(1980年代に活躍した覆面バンド。正体はジェフ・リン、トム・ペティジョージ・ハリスンボブ・ディランロイ・オービソン)を例に挙げていたけど、まさにそんな感じの「お友達感覚のバンド。」ここで重要なのは「同級生」というポイントだろう。それは歌詞や音作りにも表れている時代性もあるし、コラボするにあたって「同級生」という風にくくることによってほかのさまざまな制約やしがらみからフリーになれる、という側面もあったのでは?ちょっと疑問なのは大友康平が入っていないことだけど。

この曲を聴くと、「時代遅れ」いいじゃないか!と思わせてくれる。我々おじさんにとっての応援歌。

■「時代遅れ」の良さその1 音作り

おそらくこの曲は打ち込みはほとんどなしでレコーディングされたのではないか?Charのギターで始まるイントロ。印象的なアコースティックギター。男くさい、汗くさい、どこかアマチュアバンドのようなノリ。桑田さんは「同級生が集まって今でも音楽を楽しませてもらってます、という感じ」と話していたが、かなりの照れ隠しはあるにしても、まさに昭和のおっさんたちが集まって音楽を楽しんでいるのがよくわかる。

■「時代遅れ」の良さその2 メッセージ

歌詞を聴くと、明らかにウクライナ戦争を意識して時代を憂うメッセージであることがわかる。この時代、世代の人たちは、1960年代~1970年代の、ロックがまじめに時代と格闘していたころのミュージシャン(ビートルズボブ・ディラン等々)の影響をもろに受けているので、現代のような不安定な時代に声をあげずにいられないのではないか?今の若いミュージシャンにはもしかするとない感覚なのかもしれない。

でも桑田さんが紡ぐ言葉は、あくまでも政治的なメッセージというよりは、同じ時代を生きるひとりひとりに目をむけているのがよくわかる。

「子供の命を全力で守ること それが自由という名の誇りさ」

「悲しみの黒い雲が地球をおおうけど」

「力の弱いものが夢見ることさえ拒むというのか」

「この世に大切なひとりひとりがいて、歌えRock 'n' Roll Band」

■「時代遅れ」の良さ その3 Rock 'n' Roll

ロックンロールという言葉そのものが死語なのかもしれないけど、この言葉、そして音楽があったからこそ、この5人が発案からリリースまでわずか3ヶ月という超短期間でこの企画の実現にこぎつけられたのだろう。ロックンロールはこの世代にとって(この世代だけでなく、おそらく1950年代から1970年代くらいに生まれた人にとって)共通の言語であり、その言語で世の中にメッセージを発信するというのはごく自然なことなのだろう。

 

桑田さんがいつこの企画を思いついたのかははっきりわからないけど、2月に世良公則さんの自宅を訪れた時には8小節の簡単な曲を作っていたというから、なんらかTraveling Wilburys的なものを考えていたのだろう。ロシアのウクライナ侵攻は2月24日なので、この時点でそこまで曲のイメージができていたとは考えにくい。でもおそらくはコロナ禍とか、相次ぐ自然災害などで苦しむ日本のみんなを勇気づけられる曲を、という、この曲を貫くコンセプトはできていたのではないか?そして、佐野元春、Char、野口五郎にそれぞれ手紙を書き、訪ねていったというから、その行動力や熱意には驚くしかない。あの桑田佳祐が!

そうして実現したこの企画、誕生したこの曲は(自分のような桑田さんより6つ下も含めて)同世代には勇気と誇りを、若い世代には大いなる刺激を与える作品になった。

そりゃ、今ヒットチャートをにぎわす若いバンドのような勢いやセンスはないかもしれない。でも彼らから見たらへたすると祖父ちゃんかもしれないオッサンたちがこれだけの思いをもって活動していることは間違いなく刺激だろう。

 

桑田さんは2011年の東日本大地震の時には所属事務所アミューズをアーティストやタレントを集めて「チームアミューズ」で「Let’s try again 」を企画してのちに自分の作品としてリリースもした。あの時もそうだけど、社会の危機に対して仲間と一緒に立ち向かおうという意識があるのだろう。トラベリングウィルベリーズでもあり、日本版「We are the world 」でもある。

 

曲をじっくり聴いてみると、それぞれの個性がまた楽しい。

桑田さんは、もちろん作詞作曲を手がけている。歌においても一番目立ったいるのは桑田さんであることには違いないけど、他のメンバーへの配慮も感じられる。また、レコーディングは桑田さん立ち合いのもとに別々に行われたそうだが、となるとよくこれほど一体感のあるバンドサウンドにまとめ上げたなあと感じる。もちろんエンジニアなどの力も大きいのだろうけど、桑田さんのプロデュースの賜物だろう。

世良公則

1コーラスのボーカルを桑田さんに続いてとり、最初のサビの途中を歌っているが、昔の印象に比べると随分お行儀のいいボーカルでちょっと意外。その他コーラスや3声ギターに参加している。正直、一番印象が薄い。でもいい人なんだろうな、というのがわかる。

Char

2番のサビで「子供の命を全力で・・・」というフレーズを歌う。ソロ・ボーカルはそこだけだけど、これがビックリ。メチャ歌うまいやん。また、最初から最後までギターを弾きまくって、このサウンドがこの曲のイメージを決定づけている。なんかイメージ的に一番気難しい気がしたけど、よくこのプロジェクトに参加してくれました。ぜひソロ作品を聴いてみたい。

野口五郎

一番意表をつかれた名前がこの人。桑田さんと同級生というのもビックリだけど、この人実はすごいインストゥルメンタリスト(by桑田さん)なのだそう。間奏のギターもChar、世良公則と一緒に弾いてる。またボーカルがなんかロックしていて、昔の歌謡曲イメージと全然違うのが楽しい。申し訳ない言い方だけど、ご本人もこういうロック文脈の人たちと一緒にやれて嬉しいのではなかろうか?

佐野元春

個人的には、「桑田さんと佐野君のコラボ」というのは永遠の夢のような気がしていて、それが叶うなんてほんとに夢のよう。こんなことがあっていいのか?

サビの主旋律を桑田さんと2人で歌っている!また2番のボーカルは、ほんとに佐野君らしくて思わず微笑んでしまう。サビの歌詞に「Some day」が出てくのは、桑田さんは佐野さんを意識したわけじゃない、と言うが、無意識の意識があったのでは?

以前から桑田さんは、佐野君の(なぜか僕は桑田さんに対して佐野さんは『佐野君』と呼びたくなる)“La Vita e Bella”などをすごく評価していて「よくこの曲作ったよ!」と言っていた。同世代の中で、いまも変わらず精力的に活動を続ける佐野君へのリスペクトを公言してはばからない。昨日のラジオの中でも「明日は佐野さんは宮城(だったかな?)コンサートをやります。頑張ってください。と2回も言っていた。

最後のサビのリフレインで「闇を照らそう!」と歌う佐野元春は紛れもなくロックンロールの体現者だ!

 

日本のTravelling Wilburys、もしかすると日本の最後のロックンロールバンド!

素晴らしい曲を、パフォーマンスをありがとうございます!

MVも撮影するらしいので、楽しみです!

桑田佳祐LIVE TOUR 2021 BIG MOUTH, NO GUTS!! Blu-ray

2020年に始まった新型コロナ騒動。エンタテインメントの世界も2020年はほとんど活動ができなくなってしまった。そんな中で桑田さんは、サザンで業界初の有料配信ライブを行いファンにも業界にも「音楽のチカラ」という強烈なメッセージを発信した。年末にも再び配信で年越しライブを開催。

そして迎えた2021年。ミニアルバム「ごはんEP」の発売に続き、ついに有観客ライブ開催に踏み切った!これもメジャーアーティスト初!ツアーは当初国のイベント指針に基づき、人数制限、マスク着用、歓声禁止などの感染対策をとって始まった。しかし幸運なことに年末に向けて感染者数は減少し、収容人数の制限も徐々に緩和され、11月のさいたまではキャバ一杯での開催となった。

このBlu-rayはそんな特異な時代を記録した、ポップミュージックの歴史でも貴重なものとなった。でもそれだけに、ここに歌われた曲の数々には強いスピリットが宿りメッセージがビンビン伝わってくる。桑田さんはこんな世の中でも変わらず音楽のチカラ、優しさを通じて僕たちの心を揺さぶり明日への希望を届けてくれる。また声のない観客も、その精一杯の拍手と輝く笑顔で応え、見事なコラボレーションによって一つの濃密な空間、沢山の心が大きなパワーの塊になった瞬間を描いている。

「炎の聖歌隊~CHOIR~」の盛り上がり。何度見てもこのシーンでは涙を抑えきれない。そしてやはりこのライブ最大の見せ場は「どん底のブルース」だろう。またライブをやりたい。その時はマスクをはずしてみんなの笑顔がみたいから。また「スキップビート」でのコール&レスポンスを手拍子でやるところなど、こんな時代だからの工夫がいっぱい。それだけでなく、後半の弾けっぷりや「YIN-YANG」でのエロ全開ぶりなどは変わらなない桑田さんの茶目っ気満載。

2021年という時代にエンターテイメントが人々の暮らしに与えた元気を記録した一枚。

鬼灯(ほおずき)

初めて聴いたのは「やさしい夜遊び。」

タイトルから想像していたのは「蛍」みたいなしっとりしたバラード。だけど実際はちょっとファンキーなイントロで本編はフォークっぽいロックだった。ビートルズみたいだな、となんとなく思った。

桑田さんによると、ポール・マッカートニーのソロ・アルバム「マッカートニー」とか「RAM」をイメージしたのだとか。確かに「マッカートニー」に入っている“That would be something”なんかにイントロが似ている(^-^;  また「マッカートニー」と同じくほとんどセルフ演奏?

でも歌詞のテーマは沖縄戦に出かけていく若きパイロットとそこに幼いころの思い出を重ねる女性。「妹みたい」って私の頭をなで・・・

桑田さんがこうした戦争の話題を取り上げる時はいつもそうだけど、視線はいつもそこにいる市井の人々。。政治的なメッセージではなくて、いつも心の中にいる「彼」や「彼女」の姿がリアルに浮かんでくる。

また一つ、夏に聴きたくなる曲が増えた。

【ネタばれ解禁!】2021.10.7.広島グリーンアリーナ「KUWATA KEISUKE BIG MOUTH, NO GUTS!!」ライブレポート(2)

M12 どん底のブルース

いつもここからの4~5曲くらいが、そのライブで桑田さんが一番表現したいことを実現するコーナーと言える。今回はその意味でこの曲が今回のライブで最も象徴的な曲だったかもしれない。ライブ前に桑田さんは「やさしい夜遊び」で「どうしてもやりたい曲がある」と話していて、どの曲だろうとライブ中にも考えていたのだけど、たぶんこの曲じゃないかな。

その答えはこの曲の歌詞にあった。1番はふつうに元の歌詞のままで歌ったが、2番からは替え歌に。まずは何かひとつ誰かが問題を起こすと一斉にバッシングする、プライベートも何もあったものではないこの世の中を憂う。2017年の「がらくた」の中の「最低のワル」に通ずるテーマを感じた。そして3番に感動。このコロナ禍に、「来年もまた広島に帰ってきたい。マスクなしで。みんなの笑顔が見たいから。」と歌う。これには泣けた~。このライブで伝えたかったメッセージはこのあたりに凝縮されているような気がする。ライブができる喜び。現状の不自由さと違和感。未来への希望と期待。

M13 東京

どん底のブルース」が終わりスクリーンには夜の雨の映像が。これはさては・・・と思ったらやはり「東京。」この曲もやはり演奏が分厚くて大迫力。前の曲から続く暗いイメージ。間奏は桑田渾身のソロ。最後の♪雨よこのまま どうか泣かせて が省略されたショートバージョン。

M14 鬼灯(ほおづき)

ここはまたぐっと雰囲気が変わってリラックスムード。スタジオバージョンではポール・マッカートニーのホームレコーディング「マッカートニー」や「RAM」を意識した音作りで桑田さんが一人で多くの楽器を演奏していたが、ここはきれいなバンドアンサンブルが楽しめる。今回のライブは新作の6曲を集中させず、適切に配置しながら、メジャーな曲、そうでもない曲をバランスよく構成している。

M15 遠い街角~The Wanderin' Street

ユニクロのCMに使われて再び注目された曲。それもあって演奏されたのだろう。ライブでは2007年以来では?ライブの流れとしては中盤の盛り上げから終盤の怒涛の連発に行く前のバラードという位置づけ。個人的にはこういうおなじみの曲はつい声を出して歌いたくなるのだけれど、今回は「声だし禁止」なので抑えるのに苦労する。

M16 SMILE~晴れ渡る空のように

ここで来た!ここまでやや暗めだった照明が一気に明るくなったかと思うと、ステージ上のメンバーがみんな手を頭の上にあげて手拍子を打っている。この曲が発表されて1年9ヶ月。これを聴くためにここに来たと言ってもいい。今年の「ごはんEP」の中では一番古い曲で、これまであまりにも聴きすぎて新鮮味はなくなったかもしれないけど、あらためてライブで聴いてみるとやっぱりこの曲が重要なんだと気づかされる。“Oh, Oh, Oh, Oh~”というコーラスの部分は会場全体が(おそらくはスタッフもみんな)腕を突き上げて、(心の中で)歌う。もともとはTOKYO2020オリンピック/パラリンピックの民放統一応援ソングとして作られた曲だけど、今はもうそれらを超越して今を生きる人全員への応援ソングとなっている。また最近ユニクロのCMで使われることになり、この曲に勇気づけられる人をどんどんと増やしていくことだろう。

M17 SOULコブラツイスト~魂の悶絶

ここでやっぱり来た!この曲が今年のイチ押しという意味合いだろう。照明の雰囲気などがらりと変わって、リストバンドも華やかに輝く。とってもハッピーでちょっとやるせない感じの曲調が前の曲の感動といいコントラストになり、一気に盛り上がる。みんなこの曲を待っていた!

うまく表現できないのだけど、一拍ごとに手をぐるぐる回す手拍子(NHKの「SONGS」でもやってたやつだけど、それを思い出さなくても自然にそんな感じになる)が楽しい。いつの間にか会場全体がそんな手拍子で包まれる。

今年はこの曲にいっぱい元気と幸せをもらった。そんな人が多いだろう。このライブでもこの曲がクライマックス。それを象徴するシーンとなった。

M18 Yin Yang(イヤン)

この曲も最近のライブではよく演奏する曲。ソウルフルでちょっと歌謡曲っぽいという点で「SOUL コブラツイスト」と共通点がある。ダンサーも出てきて会場をさらに盛り上げる。個人的には、この曲をライブで聴くたびに、カップリングの「涙をぶっとばせ!」を聴きたいなぁと思ってしまうのだけれど。2012年の福岡でアンコール1曲目で聴いたあのノリが忘れられない。

M19 大河の一滴

キタ~!桑田さんは常々この曲を「ライブで演奏しやすくて好き」だと言ってるけど、2017年の「がらくたツアー、」今年のブルーノート東京での配信ライブでも演奏している。しかしこのクライマックスで演奏するとは思わなかった。この曲もちょっと歌謡曲っぽいテイストがあるので、前曲からのつながりか。いつ聴いてもカッコいい!

ノリはいいけど、どこかクールなトーンがあるこの曲はクライマックスシーンでの選曲としては抑制的な印象で、いつもの弾けた感じは少し後退気味だったのは否めない。この演出は、マスク装着・声援禁止という今回のライブを意識して敢えて抑えたものなのか?はわからない。

M20 スキップビート

少し抑え気味のピアノのインタールードから聞きなれたイントロ!この曲とわかった瞬間の会場の盛り上がりは凄かった。この曲も最近になってまたよく演奏されるようになった。なんかノリ慣れたリズム、身をゆだねているのが楽しい。今回たった一人での参戦でとなりには誰もいないけど、独り勝手にノレるのもいいかな~なんて思った。

後半の「Woh,man say」「Yeah!」という掛け合いは、今回客席に向かってではなく、メンバーに向かって。客は声出し禁止だから。でも観客も、声は出さずとも腕を突き上げて応える!当然でしょう!

M21 悲しい気持ち~Just A Man In Love

そしてクライマックスの5曲目。たぶん本編のラスト、というところで来た!イントロが聴こえた瞬間会場は弾けた!87年の発表から34年が経過し、古臭くなるどころかますます新鮮さを増すような上質なポップソング。ライブではこれほどまでに人を幸せにさせる。

この曲もサビの♪Just a man in love, oh Yeah というところはいつもなら大きな声で歌うところだけど、今回は歌唱禁止なので声は出さず、その分腕を前後に振るいつものジェスチャーで会場全体がステージへ応える!自分はまわりに人がいないのをいいことにいつもより派手にはしゃいで(声はださず)ひとりで弾けまくる!

ここでアンコール。最近はファンの高齢化も進み、アンコールは完全に休憩時間と化しているのがちょっと笑える。

そして再びメンバー、桑田さん登場。桑田さんはアコースティックギターを持ち、珍しく「東北の方たちの幸せを祈って」みたいなことを話してから

M22 明日へのマーチ

このタイミングでのこの曲には感動を覚えざるを得ない。今回のライブはところどころ非常にメッセージ性の強いところがあるけど、オープニングの「それいけベイビー!」「君への手紙。」中盤での「どん底のブルース。」そして終盤の「明日へのマーチ。」が特に意味あいが強いように感じた。ライブのポイントとなる部分にそれぞれメッセージ性の強い曲を配して、全体としてのメッセージを際立たせている。そのメッセージとは言うまでもなくコロナ禍を反映して、でもなんとか明日へ向かっていこうという、桑田さんのファンに寄り添ってともに前進しようとするはっきりした姿勢を感じる。それは、よく感じるのだけど桑田さんの多くの人に与える影響力の大きさを意識するが故の矜持だったり責任感だったりすると思う。桑田さんは決して認めないだろうけど。

また、珍しく♪願うは東北で生きる人の幸せ とはっきり歌った。これは東日本大震災から10年ということもかなり意識してのことなのだろうと感じた。

そんなことを考えながらこの曲を聴くとやっぱりちょっと落涙。

M23 悲しきプロボウラー

このイントロ!個人的にこれは狂喜乱舞!最近「やさしい夜遊び」でかかることが多いのでもしやライブで、と期待してはいたが、やっぱりやってくれるとは!音楽的にはビーチボーイズやエンディングではビートルズをモチーフにした非常に良質なポップソング。ちょっとせつない歌詞が大好きな曲。ボウリングに特化したというところでちょっと異質な感じはあるけど、♪けしてガーターを恥じないで だってストライクがすべてじゃない ひとそれぞれやり直しがきくのも人生さ と桑田さんらしくボウリングに人生を反映させるところが素晴らしい。

アンコールのこのタイミングは会場をリラックスさせるのに充分だった。

このあと、短いMC。「じゃあ、最後に、人の曲なんですけど、僕が歌いたい曲を歌って終わります。人のことなんか考えず、自分が歌いたい曲を歌って帰る。最低ですよね。」とか言いながら。そしてコーラスの田中雪江さんを「素晴らしいボーカリストです」と紹介しながら「一緒に歌ってみたいと思います。」当然雪江さんとデュエットだと思ったら、「隣にいるタイガーと歌います。」だって!会場大爆笑。曲はヒデとロザンナだって????

M24 愛の奇跡 by ヒデとロザンナ

正直、ライブも終盤、あと何曲やってくれるの?というこのタイミングで脈絡もわからず「なんだこれ~?」って印象はぬぐえないけど、まあこれはこれで楽しめたしとってもいい曲だということがわかった。

またここでひとつ思い浮かんだことが。ブルノート東京でのライブ。アンコールでドクタージョンの「Aiko,Aiko」という曲を突然やり始めたと思ったらそこからメドレーみたいな感じでなんと「ヨシ子さん」へ。ということがあったがそれを思い出した。「ははあ、これはワンコーラスくらいでヨシ子さんへいくパターンか。」と思った。そう考えるとこの流れも理解できる。でも、ワンコーラスどころか、ずっと歌ってるし、タイガーだけでなく田中雪江さんも入って3人でえらく熱のこもったいい歌を聴かせている。ほぼフルコーラス歌ったんじゃなかろうか?

で、さあ、「ヨシ子さん」かあ!?と思ったら

M25 波乗りジョニー

完全に当てがはずれた!でも僕が桑田さんソロでは一番好きな曲なのでうれしくないはずがない!何度目かわからないけど弾けまくり!

桑田さんのライブで「波乗りジョニー」を聴く。弾ける。手をたたく。ステージのダンサーやメンバーのみなさんと一緒に「スイム」と言われるダンスの振りを真似てみる。これほど楽しい、幸せを感じられる瞬間というのは他にはほとんどない。そりゃ日々いやなこともある。楽しいこともある。落ちたり上がったり、そんな心の振幅が生きてるということだし、それがなくなったら生きる価値もないと思うけど、その一番楽しい、幸せな瞬間のひとつの形。この日もこの体験ができた。それだけでもう幸せの頂点。

この曲が終わってメンバー紹介。あれ?これはもう終わるパターン?「波乗りジョニー」で終わるとは新しい?と思ったけど、うれしいことにもう1曲やってくれた!しかも曲紹介つきで。

M26 祭りのあと

ライブの最終曲定番。大きく手を広げてリズムに合わせて一拍ずつ大切にたたく。これでアンコールも(愛の奇跡をいれて)5曲め。これで終わりなんだなといつも寂しくなる。あ、ヨシ子さん、明日晴れるかな白い恋人達、ダーリン。。。他にも聴きたい、やりそうな曲はたくさんあるけど、今回は聴けないのか、という寂しさも心をよぎる。

またいつ桑田さんのライブに来れるだろう?サザンは?とかなんか寂しいことばかり考えてしまう。でもこれで終わりなのだからしっかり耳にやきつけておこう、と集中して耳を傾ける。

そして終わった。

全26曲。2時間半。マスク着用。声援禁止。ソーシャルディスタンス。いったいどんなライブになるんだろう?構成や演出はいつもと違うのか?感染したりしないだろうな。

参加する前はいろんな不安があったのも事実だけど、終わってみればいつものように素晴らしい時間。特に今回は桑田さんの思いがよくわかった気がする。

思い切りノリノリにさせてくれる曲。じんわりと心に染み入るような曲。その両方がとても際立っていて、辛いことが多いこんな時だからこそ伝えたいメッセージがあったのだと感じる。

そのメッセージは

「楽しんでいいんだよ!」というところか?

なんだか殺伐としたこの時代に開催されたこのライブの意義は大変なものだ。