炎の聖歌隊~Choir~
個人的には今年発表された5曲の中で最大のヒット!
ビーチボーイズのようなコーラス
ロネッツ(とそれを真似するビリージョエル)みたいなコーラス
「ラジオスターの悲劇」みたいな(桑田さんはELOと言った)ラジオボイス
フィルスペクターのウォールオブサウンドを彷彿させるアレンジ
桑田さんが多大なる影響を受けたであろう(そして僕たちが大好きな)60年代ポップスのエッセンスがたっぷり詰まっている!思わずにやりとするようなフレーズがいっぱい。
そして、この歌詞!
全編ライブの開幕を意識したフレーズは、どれほど桑田さんが観客を前にしたライブを渇望していたかがよくわかる気がする。また、桑田さんが目の前にいるライブを僕たちファンがどれだけ渇望していたか、を桑田さんはよく知っている。
♪開演お待ちどおさん
♪来場ご足労さん
♪毎日お疲れさん
この絶妙なサビの韻の踏み方に泣けるような意味を重ねているフレーズは最高。秀逸。
ライブで盛り上がるのはもちろんだけど、日常のさまざまな場面でもこの曲は僕たちを元気づけてくれそうだ!最高!
それにもうひとつ。最近の海外のヒット曲は60年代のそれのように短くて3分台が多い。この曲はそれを意識したのかどうかは知らないが3分台と短いのがいい!
金目鯛の煮付け
もしかすると、今年2021年のアルバム「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」の着想はこの曲から始まった?と思わせる。
最初に聴いた時は「なんか地味な曲」という印象だったけど、聴けば聴くほど、古いフォークのテイストに桑田さんなりのロック魂をふりかけてみた、というメロディやアレンジがいい。原由子さんが話していたけど、この曲は2020年夏ごろに桑田さんがよく見ていた「深夜食堂」という番組のテーマに使われていた鈴木常吉さんの「おもひで」という曲からインスパイアされたものだとか。確かに鈴木常吉さんの歌い方をかなり意識しているようだ。
タイトルも、歌詞の内容も何気ない日常の大切さやいつもそばにいる人達の大切さをを改めて再認識させてくれる。この曲がCMタイアップで使用されていたSOMPOのTVCMもそんなテーマだった。この曲が制作されたころはまさにコロナ禍最初の緊急事態宣言のころ。そんなささくれだった世間に、こんな何気ない日常、金目鯛の煮付けが安心して食べられる価値をさりげなく訴えているようだ。
今の時代にとっても大事な曲。地味だなんて言ってごめんなさい。桑田さん。
SMILE~晴れ渡る空のように~(2)
この曲については2020年1月に発表された時に一度書いた。
当時は新型コロナウィルスというワードが本格的に騒がれ始めた頃で、まだ誰もTOKYO2020オリンピック/パラリンピックが延期になるとか、世界中がこれほどこのウィルスに翻弄されるとは考えていなかっただろう。おそらくこの曲は当初の予定では2020年7月のオリンピック開幕に合わせて大きな話題性と祝祭感のに包まれながらリリースされて、この年を代表するヒット曲になる、という計画が描かれていたのではないかと推測するけど、またもしかしてそれらに合わせて桑田さんの活動も、ライブやオリンピック関連を含めていろいろと計画されていたのだろうと思うけど、それらはすべて吹っ飛んでしまった。延期が決まってからはこの曲がメディアでオンエアされる機会もほとんどなくなってしまった。それどころかオリンピック/パラリンピック自体、中止論議がかまびすしい。発表時の称賛も一時ぱたりと止まり、まるでこの曲は世間から消えてしまったようだった。
ただ桑田さん本人だけは、この曲を「やさしい夜遊び」で毎週のようにかけ続け、「いつかこの曲をみなさんの前で歌える日が来るといいなと思います」と発信しつづけた。
2021年になり、喧々諤々の論争のなかTOKYO2020は開催。それとともにこの曲も連日民放各局の番組で流れまくった。でもこの曲の価値はオリンピック/パラリンピックの応援ソングというだけではなくなっていた。
♪永きこの地球の歴史のひと幕に立ち会うことを奇跡と呼ぶのだろう
♪情熱を消さないで歩みを止めないで この世に生まれた以上
♪愛情に満ちた魔法も悪戯な運命(さだめ)にも 心折れないで
♪世の中は今日この時も悲しみの声がする
これらのフレーズは、オリンピック/パラリンピックの応援という意味を超えて、コロナ禍にあえぐ日本人へのメッセージとなった。
原由子さんは「やさしい夜遊び」のお留守番DJとして、この曲について「栄光に満ちた者の陰で夢追う人たちがいる いつもそばにいて共にゴール目指してその命燃やしてるんだ」という歌詞を挙げて、桑田さん(原さんによると「けいちゃん」)のこの視点にぐっとくる、いつも泣けてくる、と話していた。「心折れないで でなきゃモテないじゃん!がけいちゃんらしい」とも。またビクターの小野さんはオリンピックの応援歌なのに悲しみを歌っているのがすごいと評価していた。
2021年3月にBLUENOTE TOKYOで行われた配信ライブで、なんとこの曲をアコースティックセットで演奏。ここでの厚みのある演奏の素晴らしさにびっくり。生演奏でこの曲を聴ける幸せに浸ることができた。桑田さんが言う「この曲を早くみんなの前で歌いたい」の意味が分かった?演奏者はもちろんスタッフも一つになったような一体感はこの曲ならではないだろうか。観客のいるライブだったらどうなるのか?
いよいよ「BIG MOUTH, NO GUTS」ツアーでこの曲がファンの前で演奏される!
おそらく桑田さんが作った数多くの曲の中でも指折りの名曲として後世語り継がれるだろう。
さすらいのRIDER
ネヴィルブラザースを思い出させるような重いリズムのソウル・ミュージック。タメの効いたリズムがなんとも心地よい。
2017年の「がらくた」に収録されている「愛のささくれ」にも通じる。このアルバムに入っている曲は、桑田さんと片山敦夫さんとで主要な楽器、パートをすべて演奏していてあとはコンピュータの打ち込みによる曲と、バンドで演奏されている曲に大別されるが、この曲は後者。桑田さんにとってはこういうバンドでのレコーディングというのはおそらくは2019年のサザンでの「愛はスローにちょっとずつ」以来の久しぶりのものだったはずで、新鮮だったのではなかろうか。
またこの曲の重いリズムとマイナーなメロディは男女の刹那な関係を描いた歌詞の世界観ともマッチして独特な魅力を出している。2011年のアルバム「MUSICMAN」に入っていて今年のBLUENOTE TOKYOの配信ライブでも演奏された「SO WHAT?」にも通じるやるせない男女のちょっと危ない関係。でもちょっと憧れてしまうのはなぜ?
Soulコブラツイスト~魂の悶絶
「ロックンロールとは悲しみを大声で歌うことだ」と誰かが言った。と桑田さんはよく口にする。その「誰か」とははっきり言わないが、ネット界隈ではジョン・レノンではないか、とかそうやってぼかしながら実は桑田さんが言ってるのではないか、などの説がある。
この曲はベースには「耐えらないほどの悲しみや苦しみ」を「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」と秀逸な表現で表しているけど、“I can't get you out of my mind!”とシャウトするところなど、まさに冒頭の定義に当てはまる。この曲も偉大なるロックンロールだということだろう。
インパクトのあるイントロはよく昭和歌謡へのオマージュだと言われる。尾崎紀世彦という具体的な名前があがることも。MVが尾崎紀世彦さんが日本レコード大賞を受賞した「第13回」の「輝く!日本年末音楽大賞」だったりするのもそう。でも個人的には尾崎紀世彦さんへのオマージュという点では「ダーリン」の方がよほど近いし、こちらはもっと洋楽の「ソウル」よりだという気がする。また間奏のブルースハープなどはロック全開。
またこの曲はUNIQLOのCMでも使われたことも話題になったけど、ここで流れるイメージはジーンズというCMの題材や綾瀬はるかさんという出演者のイメージにも引っ張られて、この曲のイメージを驚くほど変えたような気がする。ここで流れるこの曲は同じ曲なのによりさわやかで明るいイメージに聞こえるからびっくり。
「魂が悶絶」するほど辛い思いをしながら、♪それでも明日はやってくるんだろう~と前を向こうとするのも、コロナ禍でなんとか前に進もうというメッセージのような気がして、そこもロックンロールだな~と思う。
いつかまたカラオケが楽しめるようになったら、こころおきなく大声でこの曲を歌ってみたい。
ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat.梅干し
2021.09.15リリース。
2021年はいくつかの点で歴史に記憶されるべき年となるだろう。2020年に始まった新型コロナウィルスのパンデミックはいまだ終息の兆しを見せず、世の中のいろんなことを変えてしまった。仕事のしかた、娯楽、コミュニケーションまでも。今もまだ世界がどうなっていくのか予想がつかない不安な状態が続く。またコロナに翻弄され史上初めて1年延期され無観客という状況で行われたTOKYO2020オリンピック・パラリンピック。そして東日本大震災から10年という節目。
桑田さん待望の新作は6曲入りのミニアルバム(EP)という形態となった。正直いつものようなフルボリュームのアルバムとして聴いてみたかった気もするが、この2021年というタイミングでリリースされた作品の意義をしっかり感じてみたい。
多くの人が苦しみの中にいるこの状況で桑田佳祐が歌う歌はあくまでもポップで明るい。コロナ禍だからといって、いやだからこそ日常のどこかにありそうな感情やエピソードを切なく、優しく、明るく歌う。
これまでのアルバムでは何曲かは社会のダークな部分を鋭く切り取ったり、ちょっと斜に構えて風刺的に歌うこともあったが、この「ごはんEP」では「悲しみ」「命がけ」「彷徨い」「心はどしゃぶり」といった今の世相を連想させるような言葉も並ぶが、桑田さんの視線はこんな時代だからあえて市井の人々の日常にやさしく注がれている。そしてそこにある悲しみや葛藤、ちょっとした幸せなど、心の揺れ動くさまを歌う。
おそらくアルバムタイトルの「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」も日本で最も当たり前な食卓のメニューにそんな日常の大切さを表現したのだろう。
音楽のテイストとしては、ブラックミュージック、歌謡曲、洋楽オールディーズといった桑田さんの大好きな音楽をそれぞれオマージュしていてどれもザ・桑田佳祐という仕上がり。曲によっては桑田さんが多くの楽器を一人で演奏したホームレコーディング(これはポールマッカートニーの影響らしい)のようなものから、これからツアーに出かけるバンドと一緒に演奏したものまでさまざま。またついでながら、全6曲中3曲がCMタイアップ、1曲はTOKYO2020の民放共同応援ソングということでどれもシングルになりそうなほど華やか。またこれは意識してのことなのかどうかわからないが、今回の特徴のひとつは1曲が短いこと。6曲中3曲はなんと3分台だ。現在アメリカのヒットチャートをにぎわす曲の多くは3分台だったり下手すると2分台だったりと、1960年代のオールディーズソングみたいに短い曲が多い。それを意識しているのかどうかわからないが曲が短いのは悪いことじゃないように思う。
桑田さんはよく、「ロックンロールは悲しみを大声で歌うことだ、と誰かが言った」と口にする。それはジョン・レノンだという説もあれば、そう言ってるけど実は桑田さん自身んの言葉だ、とかいろんな説があるけど、ここに並んでいる6曲は、2021年だからこそ生まれた珠玉のロックンロールであり、今を懸命に生きる人々へのラブレターと言えるだろう。
桑田佳祐 Live in BLUENOTE TOKYO“静かな春の戯れ”
1.そばかすのある少女(てぃんぱんあれい)
2.孤独の太陽
3.若い広場
6.愛のささくれ~Nobody Loves Me~
7.簪
8.So What?
9.東京ジプシーローズ
10.グッバイワルツ
11.月光の聖者達~Mr. Moonlight
メンバー紹介
12.かもめ(浅川マキ)
13.灰色の瞳(加藤登紀子)
14.東京
15.SMILE~晴れ渡る空のように
16.明日へのマーチ
17.大河の一滴
18.スキップビート
19.真夜中のダンディー
アンコール
21.ヨシ子さん
22.君を乗せて(沢田研二)
23.悲しい気持ち~Just A Man In Love
24.明日晴れるかな
「東京ジプシーローズ」のスピード感。「グッバイワルツ」の無常観と低音の思い響き。
桑田さんが一番好きだというメンバー紹介。バンドメンバーだけで何が起こるかわからない楽しさがあるのだそう。
「かもめ」はここ2年くらいか、桑田さんが度々口にする浅川マキの1970年の曲。「灰色の瞳」は初めて聴いた。桑田さんの世界観がちょっとひろがったような?
「東京」の狂気。
「SMILE~晴れ渡る空のように」これにはビックリ!この1曲が聴けただけでもこのライブの価値は高い。初めて演奏されたというだけでなく、このアコースティックなアレンジは最高。生命力、希望、愛情に満ち溢れている。
「明日へのマーチ」この時代に生きる人達への桑田さんのやさしい眼差しと希望のメッセージ
「大河の一滴」最高。
「スキップビート」このライブではやるでしょう!ってかこの曲を1986年に作ってたのが驚愕。後半のコール&レスポンスが最高。ずっと座って進めたこのライブで桑田さんが立ち上がったのはここだけか!?
「真夜中のダンディー」桑田佳祐のロック。大人になってしまった少年。
「aiko aiko」Dr.ジョンのセカンドLINEビートのご機嫌な曲。
かと思ったら「ヨシ子さん」なんだ~これ!「aikoさん?」この曲のリズム、レゲエかと思ったらセカンドライン?スゴイ、ますますボーダレス。無国籍。
「君を乗せて」君を乗せて夜の海を渡る船になろう、ってロマンティック
「悲しい気持ち~Just A Man In Love」やっぱりこのライブを締めるのはこの曲か~?
「明日晴れるかな」めずらしいギターでのイントロバージョン