私はピアノ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

4. 私はピアノ/アルバム「タイニイ・バブルス

初の原坊リードボーカル曲。タイトルも含めてめちゃめちゃインパクトの強い曲!個人的には、サザン名義の原坊ボーカル曲ではいまだに一番かも。愁いを帯びたメロディ、美しいピアノのアレンジ、突然ラテンになってコミカルなセリフも入る間奏。どう見ても傑作。

桑田さんの昭和歌謡好きは自他ともに認めるところで、今では他にそんな人もいなくなって日本の歌謡曲の継承者とまで言われるようになったが、歌謡曲からの影響を前面に出した作品はこの曲が初めてだろう。「勝手にシンドバッド」にも歌謡曲の影響はみられるが、他にもサンバやロックやあれこれごちゃまぜになったカオス的存在感がその魅力だったので。

つまり、「シンドバッド」「エリー」「C調」等を生み出したサザン/桑田さんがこんな曲を創った!という意外性みたいなものも含めて強いインパクトを与えたのだと思う。アルバム「タイニイ・バブルス」のレビューでも書いたように、当時を代表する音楽評論家渋谷陽一氏が番組の中でこの曲を絶賛していた。

その後、桑田さん作曲・原坊ボーカルという歌謡曲路線の曲は「ポカンポカンと雨が降る(世に万葉の花が咲くなり)」「ワイングラスに消えた恋(葡萄)」などいくつも作られ、一種の定番になっていく。

当時サザンはテレビに出なくなってシングルのヒットはなくなっていたが、この曲は高田みづえにカバーされてヒット。その後桑田さんは他の歌手にも楽曲を提供するようになり、それがまた次々とヒットする。ソングライターとしての力量をだれもが認めるところとなる。