ステレオ太陽族/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

ステレオ太陽族

4枚目のアルバム 1981.07.21

適切な形容詞が見つからないほどの名盤。個人的にすごく大切な1枚。

デビューから3年。4枚目のアルバムにして、ずっと目指してきた音楽がひとつの完成形を迎えたと言っていいのではないか。このアルバムと次作「NUDE MAN」がひとつの頂点で、以後はまた少し違った方向性への新たなチャレンジが始まる。

このアルバムが発表されて今年(2018年)で37年経つが、その魅力はまったく色あせず、今あらためて聴くと、朝露に濡れてキラキラと輝く新緑のように新鮮で輝いている。若さ、勢いみたいなものが十分にありながらベテランのような成熟も持ち始めている。サザンの全15枚のオリジナルアルバムの中でも非常に重要なポジションを締めると思う。

楽曲も粒揃いですべての曲が聴きごたえ十分。結成以来追及してきたスタイル、ブルース、ロックンロール、R&B、ジャズ、レゲエといった音楽へのリスペクトを自分たちのオリジナルに昇華させている。このアルバムについては特にこうしたブラックミュージックの影響が色濃く感じられる。その点ではサザンのアルバムの中で一番か。中でも強いて挙げるなら「My Foreplay Music」「Big Star Blues」「栞のテーマ」の3曲が収録されているというこの事実だけでこのアルバムの重要性がわかると思う。いまだにライブで演奏されて人気の高いこれらの曲がこの1枚で楽しめる。ちなみにだけど、歌謡曲的な要素がこのアルバムに限ってはないと言っていい。それがちょっと意外と言えば意外で、ひとつの特徴にはなっている。

また常々桑田さん/サザンの音楽の魅力は、マンピーからエリーまで、その振れ幅というかキャパシティの大きさにあると思っているけど、その魅力もどんどん顕著になってきていると思う。

もう一つ、桑田さんの音楽はその当時に一緒にやっていたアレンジャーとかプロデューサーの影響を受けることが大きい。今なら片山敦夫さん、90年代前半は小林武史さん。「ステレオ太陽族」当時は曲にも歌われている八木正夫さん(故人)の影響が大きかったと言われ、ストリングスやブラスのアレンジがちょっとジャズっぽいのが特徴。

このアルバムは50万枚売れて、チャートでも1位を獲得。ロックバンドとしての評価は確立したといっていい。でも推測だけど、この時期のサザンの唯一の悩みは、「シングルが売れなくなったこと」。あれほどテレビ出演を嫌っていた桑田さんだが、これだけシングルが売れなくてテレビ出演もなくなると、それはそれで一抹の寂しさがあったのではないか?その反動は間もなく形になって現れるのだけど。