さくら/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

さくら

1998.10.21 13枚目のアルバム

個人的にはサザンの最高傑作に挙げてもいいと思うくらいの傑作。

一般的な評価はそれほど高くないのかもしれないしセールスもいまいちだったようだが、時代とリンクしながら、自分達のアイデンティティや新しく身に着けたものを表現していく、というサザンの一貫した姿勢が、もしかすると最も表れているかもしれない。しかもそれは音楽的なことだけではなく、「豊かで幸せで成長し続ける国日本」という、多くの人が信じていた「夢」が破れてどんどん不透明さを増す時代までも映し出された、時代を代表するポップカルチャーだと感じる。これほどメジャーなバンドがそんなことをやっていることが驚きだ。

まあそんな難しい解釈をしなくても、このアルバムはなんと全15曲でCDの収録可能時間ほとんどめいっぱいでアナログ盤は2枚組というボリュームが凄くてとにかくとことんサザンが楽しめる。それにまた感動のバラードあり、エロあり、先端のサウンドあり、骨太のロックあり、サザンを代表するポップソングあり。非常に振れ幅の大きいサザンの音楽が満開。大抵どんなアルバムでも中に何曲かは「この曲は??」というのがあるけど、そういうのが1曲もない。名曲がいっぱい詰まっている。

これ以降、大森隆志氏が脱退し(このアルバムでは大森氏は1曲もギターを弾いていないという未確認情報もあり)、ソロ活動が多くなりサザンも難しい時代を迎える。78年から98年の20年間で13枚のアルバムを出しながら、それから2018年までの20年では2枚のアルバムしか出していない現実でもそれはわかる。このアルバムまでがサザンの「幸せな時代」だったのかもしれない。