JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

01. JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)

アルバムのオープニングチューンはそれまでのサザンにはない、いや他のどこにもないようなインパクトを放つ曲。タイトルとは裏腹にレゲエのリズムではない。

極端にシンプルなアレンジ。文語調の歌詞。専門的なことはわからないけど変わった音階のメロディ。よくこんな曲思いついたね、と言いたいほど聴きどころいっぱいの曲。

音数の少ないアレンジは、当時全盛期を迎えていたイギリスのバンドThe Policeの影響と思われる。中でも間奏のサックスソロとベースラインが印象的。また演劇風のセリフが入ったりと、和、洋、新、旧、色んな文化をごちゃ混ぜにして新しいモノを生み出そうとしているように思える。とにかく独特で異彩を放つ曲。

ライブでは、84年「やっぱりアイツはクロだった!」ツアーでは本編ラスト、「ミスブランニューデイ」の次という大事なところで演奏された。また99年「セオーノ・ルーハ・ナ・キテス〜素敵な春の逢瀬」てはオープニングで演奏され度肝を抜かれた。

人気者で行こう/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

人気者でいこう

7枚目のアルバム 1984.07.07

「綺麗」からは時代に歩調を合わせた新しい音楽に挑戦を始め、それをさらに発展させつつもずっとリスペクトして来たブラックミュージックにも改めてアプローチし、それらが見事に結実した名盤。ジャケットはへのへのもへじが書かれた黒人の背中というインパクトの強いものだが、それもブラックミュージックへの強いこだわりなのかもしれないと思わせるほど。

ファンク、バラード、ジャズ、ブルース、ラテン、リズム&ブルースと、そのアプローチはそれまでにないほど多彩。一方でテクノロジーを使った当時先端の音作りにも積極的で、新しいサザンの魅力を次々と見せている。たいがいアルバムの中に数曲は、あまり好きじゃない曲、忘れてしまいそうな曲などがあるものだけど、このアルバムというかこの時期のサザンにはそんな曲が1曲もない。全部の曲が、それぞれに特徴があっていい。

名曲が多くて、革新的な「ミスブランニューデイ」、屈指のバラード「海」、桑田風リズム&ブルース「夕方HOLD ON ME」など現在でもライブで、しかも重要なところで演奏される曲が多い。このアルバムと次作「KAMAKURA」がサザンのひとつの頂点と見ていいのではないか?一般的には「KAMAKURA」の物量や濃厚さをもってサザンの最高傑作とする向きも多いが、個人的には「人気者で行こう」の方を推したい。

このアルバムまでは、毎年7月に必ずといっていいほどアルバムを出していた。個人的にも当時の夏の思い出がたっぷりつまっている。この翌年から、アルバムがでる時期もかならずしも夏とは限らなくなってきた。

なんば君の事務所/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

なんば君の事務所

シングル「MISS BRAND-NEW DAY」カップリング

ター坊(大森隆志)のインスト曲。彼の曲もだんだん洗練されて来て、この曲なんかはテクノっぽいアレンジもこなれてちょっとYMO(イエローマジックオーケストラ)みたい。

ター坊の曲はこの後も何曲かあるけど、全てインスト曲となっている。

MISS BRAND-NEW DAY/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

MISS BRAND-NEW DAY

1984.06.21 20枚目のシングル 桑田佳祐28歳

あまりにも長く、あまりにも強く深く親しんできた曲で、いざこの曲について何か書こうと思うと逆に何を書いていいのかわからない。

数あるサザンの曲の中でも最も重要な曲の一つだと思う。ある意味サザンの将来を決めたと言っていいくらいの超・名曲。非の打ち所がない完璧な曲。時々こういうとんでもない曲が生まれてくるけど、その瞬間をリアルタイムで体験できるのはファンとしても冥利に尽きる。

前年の「綺麗」あたりからアレンジやレコーディングに電子楽器など当時先進の音作りを取り入れ始めたが、この曲やアルバム「人気者でいこう」ではその手法がより洗練されている。またそれだけでなく、途中でビートルズの「エリナーリグビー」みたいなバイオリンが入ったり、間奏では生ギターが入ったり、普段からいろんな音楽スタイルに挑戦していろんなものを自分の血や肉としている桑田さんだからできる、さまざまな要素が化学反応して新しいものが生まれたような名曲だと感じる。

当時は新しい音楽の制作手法だったとしても、それだけなら現代では珍しくもない。むしろ時代が進むにつれて古臭く感じるはずだけど、この曲の魅力は時間をまったく感じさせることはない。こんなに長くファンから、ファンでない人からも愛されるのはそれだけではなく、メロディの美しさやノリのよいビート、心地よい楽器の音色など音楽としての本質的な魅力を持っているからだろう。今80年代のヒット曲などを聴くと懐メロ臭がムンムンだけど、この曲は全く色あせていない。

自分は常々、この曲と96年の「愛の言霊」、あとデビュー曲の「勝手にシンドバッド」がそういう多種多様な要素から全く新しいものが生まれるというマイルストーン的な作品だと思っている。最近では2016年の「ヨシ子さん」もそうかな?

84年の夏が本格的に始まろうとする頃、この曲を聴いたときは衝撃だったが、あれから34年たった今もこんなに新鮮に聴けているとは想像もしなかった。

余談だが、実はこのシングル、当初は「海」が予定されていて、ジャケットの印刷ももう終わっていたという話がある。ある日桑田さんが朝目覚めてふと思いつき、急きょ「ミス・ブランニュー・デイ」に差し替えられたのだとか。「海」も超・名曲だけど、もしこのシングルが「海」だったら、どうなっていたのだろうか?または「ブランニュー・デイ」と「海」のカップリングというアイデアはなかったのかな?

この曲はライブでも長い間、超・定番曲で会場を盛り上げ続けてきた。以前ヒロシさんのコメントで「この曲はライブのどこでも使える。前後がどんな曲でもこの曲でライブの雰囲気を変えられる」みたいなのがあったけど、まさにその通りだと思う。ライブの前半でも、後半の盛り上がりでもどこでも会場は大爆発。この曲が聴けないとちょっと不満が残るくらいライブでは欠かせない曲になっている。

Still I Love You/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

Still I Love You

シングル「東京シャッフル」カップリング

大森隆志さん作詞作曲。大森さんのギターとボーカルをフィーチャーしたレゲエ。

彼の曲は初期はロックギンギンみたいな曲だったけど、だんだん落ち着いてくるというか、幅を見せるようになった。

この曲を久しぶりに聴いてみると、1970年代のエリッククラプトンのアルバム「461 Ocean Boulevard」に入っている「Willie and The Hand Jive」あたりのレイドバックしたレゲエサウンドを思い出した。時代はちょっと違うけどそのあたりを意識したのか?

そう考えながら聴いているとなかなか心地よく楽しめる曲だと感じた。

東京シャッフル/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

東京シャッフル

19枚目のシングル 1983.11.05

アルバム「綺麗」ではニューウェーブ路線に挑戦したかと思えば、その4か月後のこのシングルではレトロな昭和歌謡に挑戦。まあ当時もまだ昭和だったけど。

いろんな音楽スタイルに挑戦するのは、節操がないからではなくて、それらをすべて飲み込んで自分だけのスタイルを築こうとしているから。だから時々ジャンル分けできないようなとんでもない名曲が生まれる。

この曲でも、レトロな昭和歌謡と言いながら、例のシモンズというシンセドラムを使ったり、間奏のコーラスにもエフェクトかけてみたり、歌謡曲ニューウェーブを融合させようみたいな試みも感じられる。

この曲はライブでは「匂艶The Night Club」とつないでメドレーみたいに演奏され、そのつなぎがたまらなく良かったので、後でカセットテープでそれを再現しようと一生懸命何十回も編集を試みたがうまくいかなかった記憶がある。カセットテープでそんなのできるわけないよね。

旅姿六人衆/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

13. 旅姿六人衆

シンセサイザーなどを多用し、当時の最新の音楽シーンを追い求めたようなこのアルバムの中で、最後のこの曲だけはライブ感たっぷりの、おそらくはスタジオでの一発どりではないかと推測させる生々しい演奏になっている。それだけにラストナンバーのインパクトは強く、アルバムの中で、異彩を放っている。

ピアノのイントロ、野太いボーカル、力強いギターソロ、これぞロックバンドが奏でる正統派ロッカバラードの王道!といった感じの曲。アレンジや録音もライブなら、歌詞もライブツアーのことを歌っていて、ファンとしては胸が締め付けられる思いがする。

ラストの♪ラララ―というコーラスは明らかに「Hey, Jude」のコーラスを意識しているのだろう。これがまた盛り上がる盛り上がる!

ライブでは、なぜかこのアルバム発売当時の「私は騙された」ツアーでの演奏は実はあまり覚えていないのだけれど、20周年の「渚園」ライブでの演奏(実際には参加していなくてDVDで観たのだけれど)が目に焼き付いている。間奏で「20周年おめでとう」とかなんとかの文字がスクリーンに映されるのだけれど、桑田さんは知らされていなかったのか?えらく感動していた。

♪お前が目の前にいるならいい

♪素敵な今宵を分けあえりゃ

♪また会えるまではこの時を忘れないでいて

なんて、素晴らしい歌詞だ~。

※2019年5月20日追記(以下ネタバレあり要注意!)

「Live Tour 2019“キミはみてくれが悪いんだからアホ丸出しでマイクを握ってろ!”だと!?ふざけるな」のアンコールラストで20年ぶりに演奏された。スクリーンには「旅姿四十周年」と表示された。歌詞の一部(2番の「華やかなものの陰で今 動く男達 Mr. Suizuらがいてくれたら今日も大丈夫」)を現在バージョンに変更(「華やかなものの陰で今 動く仲間たち Mr. Nanyaさんらがいてくれたら今日も大丈夫」)して歌っていた。

また最後のLalala~の最後に「●●(会場の地名)でまた逢おうね ●●でまた逢おうね みんな元気で また逢おうね」という感動的なリフレインがつけくわえられて、涙なしでは聴けない1曲となった。この最後のリフレインは今でも耳にこびりついている。