通算51回目・52回目のサザン/桑田さんライブ参戦。
昨年に続くライブツアー。こんどはソロ3回目の5大ドームツアーからの年越し横浜アリーナ。
昨年はコロナ禍真っ只中でのライブツアーで、会場のキャパ半数からスタート。マスク着用、歓声なしという制約下での敢行。今年はまだコロナも収束しない上に思いもしない戦争がはじまり、世界、そして日本の国民生活もますます厳しさをます。そんな中でエンタメ界、ミュージックシーンをリードする桑田さんは何を歌い、何を語るのか?
そんなことを考えてしまうほど、桑田さんのライブはただのエンターテインメントだけでなく、社会的な意味合いも重くなってきている。
とはいえ、今回のツアータイトルは「お互い元気にがんばりましょう」だ。我々ファンに向けためちゃくちゃストレートなメッセージだ。難しい時代だけに、一人一人へ語り掛けてくるような意味合いなのかもしれない。
席はスタンド3塁側前から44番目。同じフロアでは後ろから3番目という場所で、ステージのメンバーはほとんど肉眼では視認できない。でもまあ全体が見渡せて思ったほど悪くない。
横浜では打って変わってセンター28列(真ん中よりやや前)のほとんどど真ん中という最高の席。ステージもよく見えるし、音もよかった。
開演前のBGMは吉田拓郎、竹内まりあ、安全地帯、稲垣潤一、佐野元春など、70~80年代の日本のヒット曲だった。これは意外。めずらしい。
そんな中での注目の1曲め。世相を反映して「しゃあない節」か?いやこれは4年前のツアーのオープニングだった。「漫画ドリーム」や「グッバイワルツ」の替え歌か?とかいろいろ予想するが、これはこれでベタだし、きっと大きく外してくるだろう。
今回は少し凝っていて、ジャズバーをイメージした映像が流れ始め「若い広BAR」という名前が。え?「若い広場」なの?と思ったら、ドアが開いてそこから桑田さんが登場する、という演出。そういえばラジオ番組「やさしい夜遊び」でそんな話してたな。そして演奏が始まったのはM1「こんな僕で良かったら。」これはまた意表をつかれた。まいりました。どんな予想も必ず外してくる。ゆったりしたジャズなので、非常にリラックスしたムードで始まり(自分も含めて、拍子抜けした人も多かったのでは?)、少しショートバージョンで終わって2曲目へ。M2「若い広場」さっきの映像は2曲目への伏線だった。曲調はジャズから古い歌謡曲(ちょっと古いリズム&ブルースでもある)へとがらりと変わったがリラックスしたムードは変わらず。自然にほんわかとした笑顔になってくるところがいい。
そしてこうなると期待したくなるのが3曲目だが。これまた驚いた。昨年も聴いた♪Ah, AhというTwist&shoutみたいなコーラス。そして聴きなれたイントロ。昨年と同じM3「炎の聖歌隊〜CHOIR」!♪開演お待ちどおさん ご来場大変ありがとうさん 毎日お疲れさん、という歌詞がやっぱり沁みる!ここがまず最初のハイライトシーンだったのは間違いない。個人的にはこの曲を聴くために出かけてきたようなものなので、もう大感動、大興奮。
いつものように3曲終わってMC。そして次のコーナーへ。ライブで聴くのは久しぶりのM4「MERRY Xmas IN SUMMER」から始まってM5「可愛いミーナ」M6「真夜中のダンディー」M7「明日晴れるかな」M8「いつか何処かで」とおなじみの、でもやや懐かし目の曲が続く。曲ごとに雰囲気が変わり飽きさせない。
M9 は、名古屋では「愛のささくれ」だったが、横浜では、なんと「ダーリン。」横浜で聴く「ダーリン」はまた格別で、映像も横浜の名所をシルエットで出しながらクリスマスムードたっぷり。
M10 はある意味今公演最大のサプライズかも?「NUMBER WONDA GIRL」!ラジオで事前にちょっとにおわせるコメントをしてたので意外感はそれほどではなかったけど、やっぱりこの曲はいい!山下達郎もびっくりのグルーブ感が最高!
そして、横浜では「赤い靴」の短い演出があってM11「SMILE~晴れ渡る空のように」!手首のLEDライトが点灯し、間奏では会場全員で腕を突き上げ、♪OH,Oh ~というコーラスを心のなかで歌いあげながら、みんなの心がひとつになった瞬間といえるだろう。この曲が発表されてもうすぐ3年。昨年のツアーでも演奏されたけど、今年はまたいろんな思いをもってここに集まった人たちの一体感がものすごいパワーとなって会場を包んでいた。それは間違いなく前向きなパワーだった。
ここでMCとメンバー紹介。そしてギターをアコースティックに持ち替えて、雰囲気をガラリと変えて、まずはM12「鏡」、そしてサプライズでM13「BAN BAN BAN」M14「Blue~こんな夜には踊れない」。「BAN BAN BAN」はオーリアンズの「Dance With Me」をほうふつとさせ、「Blue」はスパニッシュ(フラメンコ)のような妖艶なアレンジでひときわ異彩を放つ。このコーナーも間違いなく今回のライブの見どころのひとつだった。
次はMCをはさんで新曲コーナー。M14「なぎさホテル」のなんともいえないせつなさもいいけど、今回びっくりしたのはM15「平和の街」だろう。ポップでパワフルな演奏、スクリーンに映し出される歌詞がものすごいポジティブなパワーを発散。横浜で聴いた時には思わず落涙を抑えきれなかった。
続く曲もサプライズだった。M16 「現代東京奇譚」。最初に聴いた名古屋ではなぜこの曲がここで?と考えながらずっと聴いていたけど、人身売買をテーマにした映画の主題歌となったこの曲がたたえる痛切な悲しみに現代の世界をとりまく情勢を桑田さんは重ねてみたかったのだろうか?♪幼き日にみた夢がすべて嘘だというのなら 世の中は裏表 なぜか教えて という歌詞が胸に突き刺さる。
M17 はこれまたおどろきの「ほととぎす~杜鵑草」。これもまた届かない想いと深い深い悲しみがテーマになっていて、この2曲が続けて訴えてくる心の深いところにある悲哀を意識させられて切なくなってくる。個人的にはこの2曲が今回のライブで桑田さんが一番やりたかったことなのではないかという気がしている。
そしてここからは期待通りの後半の大盛り上がりコーナーへ!まずは昨年発表された曲ながらすでにおなじみとなったM18「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」両手を回転させながら手拍子を打つのも昨年のツアーの映像ですっかりファンにもおなじみになっている。そして「コブラツイスト」といえば今年亡くなったアントニオ猪木さんの技であるのは言うまでもなく、この曲は当然猪木さんの送り火のような意味合いを帯びている。後半の、オリジナルでは♪イヒヒ・・というパートで、今回は猪木さんの名言「迷わず行けよ。行けばわかるさ!」を桑田さんが高らかにシャウト!これにはしびれてしまって、目頭に熱いものがこみあげてくる。
M19はおなじみのイントロ「悲しい気持ち~Just A Man In Love」で会場大爆発!この日2度目の銀うちテープがさく裂!もう押しも押されぬ桑田さんソロライブの代表曲となった感があり、どこで演奏しても、ダンサーがいなくても大盛り上がり!
そしてM20「ヨシ子さん」!セカンドラインビートが強調されたアレンジで、あの「(ダンサーの郁美さんが扮した)ヨシ子さん」は出てこなくて、代わりになんか気持ちの悪いじいさんの着ぐるみ?が3人出てきて、ただ突っ立っているだけだったり、のろのろと歩き回っているだけだったり。いずれにしてもこの曲の魅力を引き立てるには十分で、会場はカオスな盛り上がりに突入。
もうライブ本編もいよいよ最終盤。いつものように息もつかせず次の曲へ、かと思ったらいきなりの桑田さんトーク。「疲れちゃったのよ。」とかしゃべり始めて、スクリーンには「誰かが降りてきています。」という字幕が・・・どうやら美空ひばりさんのものまねらしい、と気づくまでにそれほど時間はかからない。そして「真っ赤な太陽」が始まった。昨年のツアーではヒデとロザンナの「愛の奇跡」を歌って「波乗りジョニー」へ突入したが、どうやらそのパターンか?さらに昨年の夏「ロックインジャパン・フェス」でもこの演出を予定していたと言ってたので、どうやら叶わなかった演出をここで果たしたかったようだ。という期待通り、「真っ赤な太陽」に続いて期待通りのM22「波乗りジョニー」!水着のダンサーがたくさん出てきて、ステージはめっちゃ華やかに!この曲独自の振り付けも定着してきて(おじさんとしてはこっぱずかしいけど)、一体感と盛り上がりはとにかくすごい!横アリでは席がよかったこともあり、ステージだけでなく会場全体のエネルギーを体感できて最高!
この曲のラストではトランペットの「スガチン」が演奏終了のタイミングをはずしてしまうという演出があって、アンコールへ。
いつも本編最後の連チャンは5曲なのに今回は4曲だったこと。いつものように立て続けではなく美空ひばりさんのものまねコーナーが入ったこと。などちょっといつもと違っていたけど、だからかどうかわからないがアンコールに入ってからのガンガン攻める感じが今回はすごかった。EN1は「ROCK AND ROLL HERO」。これはずいぶん久しぶりの演奏。2007年以来か?こんなに痛快なロックンロールはめずらしいほどだけど、歌詞は政治的なメッセージを含んでいて、これも世相を反映してのことなのか?
さらに続けてEN2は「銀河の星屑」!これも意表を突かれた。この曲はバイオリンの金原さんがいないと成り立たないと思っていたが、バイオリンのパートを見事に中シゲヲくんのギターで代用していた。この曲もスタジオ盤を大きく上回る迫力で最高だった。
そしてEN3は「白い恋人達」。クリスマスシーズン~年末のライブでは欠かせないこの曲。最近高い声が出ないとこぼしている桑田さんだけど、この曲の熱唱には心を、耳を奪われた。斎藤誠さんが一番好きだというこの曲のラストのパート「ただ逢いたくて、もう切なくて、恋しくて・・・涙」というところを桑田さんは懸命に歌っていた。最高。感動。
そして最後の曲。「腕自慢のメンバー達の生演奏をお楽しみください」といって始まったのはEN4「百万年の幸せ」。この曲の持つ、幸せを願う気持ちを今こんな時代に桑田さんは訴えたかったのだろうと感じながら聴いていた。
曲の2番からはメンバー全員が楽器を離れて前のほうへ出てきて、「今年もありがとうございました」「来年もよろしくおねがいします」とか一文字ずつ書かれたプラカード?を掲げて見せる。もちろん曲は続いて桑田さんは歌っているわけで、いわゆるカラオケで桑田さんは歌っているということがわかる。これはさっきの「腕自慢のメンバー達の生演奏・・・」というのが伏線だったことがようやくわかるという演出。でもこれは2012年のツアーでもやってたな。でもこの微笑ましい演出も、この曲のメッセージを際立たせていた。
これでついに終わってしまった。最後にいつもの通り、メンバー全員、ダンサーまでもステージにラインナップしてのご挨拶。そのBGMは「時代遅れのロックンロールバンド」。この曲は正直ほかのどの曲よりも2022年のハイライトだったけど、夏の「ロッキン」の前に桑田さんは「リハーサルしてみたけど、この曲はあの4人がいないと成り立たないことがわかった」とソロでの演奏を断念していた。当然今回のツアーでもセットリストに入ることはなかった。でもそれが紅白歌合戦で観られるとは!!
桑田さんは最後までずっとステージに残って拍手を受け止め、感謝の気持ちを伝え続けていた。こちらも、その姿をしっかり瞼の奥に焼き付けておこうと見つめ続けていた。
【セットリスト】
01.こんな僕でよかったら
02.若い広場
03.炎の聖歌隊~CHOIR
MC
04.Merry X'max In Summer
05.可愛いみーな
06.真夜中のダンディー
07.明日晴れるかな
08.いつか何処かで~I FEEL THE ECHO
09.愛のささくれ(横浜ではダーリン)
10.NUMBER WONDA GIRL
11.SMILE~晴れ渡る空のように
MC メンバー紹介
12.鏡
13.BAN BAN BAN
14.BLUE~こんな夜には踊れない
MC
15.なぎさホテル
16.平和の街
17.現代東京奇譚
18.杜鵑草
19.Soulコブラツイスト~魂の悶絶
20.悲しい気持ち~JUST A MAN IN LOVE
21.ヨシ子さん
22.真っ赤な太陽~波乗りジョニー
ENCORE
EN2.銀河の星屑
EN3.白い恋人達
EN4.百万年の幸せ