時代遅れのRock 'n' Roll Band|桑田佳祐 feat. 佐野元春,世良公則,Char,野口五郎

突然の発表、突然の配信。驚いた。たった1曲でこんなにいろんな感慨がうかぶ曲もめずらしい。でもいろいろ考えると、タイトルの「時代遅れのRock 'n' Roll Band」にすべて集約されているような気がする。

ちょっと自虐的に聞こえるけど、このタイトルには「誇り」「連帯」「友」「ポジティブ」「見果てぬ夢」などいろんな想いがこもっている。

この5人が同級生だとは知らなかった。野口五郎やCharはサザンよりも少し早いデビューで、先に活躍していたのでもっと年上だったと思っていた。

桑田さんはラジオ「やさしい夜遊び」でTraveling Wilburys(1980年代に活躍した覆面バンド。正体はジェフ・リン、トム・ペティジョージ・ハリスンボブ・ディランロイ・オービソン)を例に挙げていたけど、まさにそんな感じの「お友達感覚のバンド。」ここで重要なのは「同級生」というポイントだろう。それは歌詞や音作りにも表れている時代性もあるし、コラボするにあたって「同級生」という風にくくることによってほかのさまざまな制約やしがらみからフリーになれる、という側面もあったのでは?ちょっと疑問なのは大友康平が入っていないことだけど。

この曲を聴くと、「時代遅れ」いいじゃないか!と思わせてくれる。我々おじさんにとっての応援歌。

■「時代遅れ」の良さその1 音作り

おそらくこの曲は打ち込みはほとんどなしでレコーディングされたのではないか?Charのギターで始まるイントロ。印象的なアコースティックギター。男くさい、汗くさい、どこかアマチュアバンドのようなノリ。桑田さんは「同級生が集まって今でも音楽を楽しませてもらってます、という感じ」と話していたが、かなりの照れ隠しはあるにしても、まさに昭和のおっさんたちが集まって音楽を楽しんでいるのがよくわかる。

■「時代遅れ」の良さその2 メッセージ

歌詞を聴くと、明らかにウクライナ戦争を意識して時代を憂うメッセージであることがわかる。この時代、世代の人たちは、1960年代~1970年代の、ロックがまじめに時代と格闘していたころのミュージシャン(ビートルズボブ・ディラン等々)の影響をもろに受けているので、現代のような不安定な時代に声をあげずにいられないのではないか?今の若いミュージシャンにはもしかするとない感覚なのかもしれない。

でも桑田さんが紡ぐ言葉は、あくまでも政治的なメッセージというよりは、同じ時代を生きるひとりひとりに目をむけているのがよくわかる。

「子供の命を全力で守ること それが自由という名の誇りさ」

「悲しみの黒い雲が地球をおおうけど」

「力の弱いものが夢見ることさえ拒むというのか」

「この世に大切なひとりひとりがいて、歌えRock 'n' Roll Band」

■「時代遅れ」の良さ その3 Rock 'n' Roll

ロックンロールという言葉そのものが死語なのかもしれないけど、この言葉、そして音楽があったからこそ、この5人が発案からリリースまでわずか3ヶ月という超短期間でこの企画の実現にこぎつけられたのだろう。ロックンロールはこの世代にとって(この世代だけでなく、おそらく1950年代から1970年代くらいに生まれた人にとって)共通の言語であり、その言語で世の中にメッセージを発信するというのはごく自然なことなのだろう。

 

桑田さんがいつこの企画を思いついたのかははっきりわからないけど、2月に世良公則さんの自宅を訪れた時には8小節の簡単な曲を作っていたというから、なんらかTraveling Wilburys的なものを考えていたのだろう。ロシアのウクライナ侵攻は2月24日なので、この時点でそこまで曲のイメージができていたとは考えにくい。でもおそらくはコロナ禍とか、相次ぐ自然災害などで苦しむ日本のみんなを勇気づけられる曲を、という、この曲を貫くコンセプトはできていたのではないか?そして、佐野元春、Char、野口五郎にそれぞれ手紙を書き、訪ねていったというから、その行動力や熱意には驚くしかない。あの桑田佳祐が!

そうして実現したこの企画、誕生したこの曲は(自分のような桑田さんより6つ下も含めて)同世代には勇気と誇りを、若い世代には大いなる刺激を与える作品になった。

そりゃ、今ヒットチャートをにぎわす若いバンドのような勢いやセンスはないかもしれない。でも彼らから見たらへたすると祖父ちゃんかもしれないオッサンたちがこれだけの思いをもって活動していることは間違いなく刺激だろう。

曲をじっくり聴いてみると、それぞれの個性がまた楽しい。

桑田さんは、もちろん作詞作曲を手がけている。歌においても一番目立ったいるのは桑田さんであることには違いないけど、他のメンバーへの配慮も感じられる。また、レコーディングは桑田さん立ち合いのもとに別々に行われたそうだが、となるとよくこれほど一体感のあるバンドサウンドにまとめ上げたなあと感じる。もちろんエンジニアなどの力も大きいのだろうけど、桑田さんのプロデュースの賜物だろう。

世良公則

1コーラスのボーカルを桑田さんに続いてとり、最初のサビの途中を歌っているが、昔の印象に比べると随分お行儀のいいボーカルでちょっと意外。その他コーラスや3声ギターに参加している。正直、一番印象が薄い。でもいい人なんだろうな、というのがわかる。

Char

2番のサビで「子供の命を全力で・・・」というフレーズを歌う。ソロ・ボーカルはそこだけだけど、これがビックリ。メチャ歌うまいやん。また、最初から最後までギターを弾きまくって、このサウンドがこの曲のイメージを決定づけている。なんかイメージ的に一番気難しい気がしたけど、よくこのプロジェクトに参加してくれました。ぜひソロ作品を聴いてみたい。

野口五郎

一番意表をつかれた名前がこの人。桑田さんと同級生というのもビックリだけど、この人実はすごいインストゥルメンタリスト(by桑田さん)なのだそう。間奏のギターもChar、世良公則と一緒に弾いてる。またボーカルがなんかロックしていて、昔の歌謡曲イメージと全然違うのが楽しい。申し訳ない言い方だけど、ご本人もこういうロック文脈の人たちと一緒にやれて嬉しいのではなかろうか?

佐野元春

個人的には、「桑田さんと佐野君のコラボ」というのは永遠の夢のような気がしていて、それが叶うなんてほんとに夢のよう。こんなことがあっていいのか?

サビの主旋律を桑田さんと2人で歌っている!また2番のボーカルは、ほんとに佐野君らしくて思わず微笑んでしまう。サビの歌詞に「Some day」が出てくのは、桑田さんは佐野さんを意識したわけじゃない、と言うが、無意識の意識があったのでは?

以前から桑田さんは、佐野君の(なぜか僕は桑田さんに対して佐野さんは『佐野君』と呼びたくなる)“La Vita e Bella”などをすごく評価していて「よくこの曲作ったよ!」と言っていた。同世代の中で、いまも変わらず精力的に活動を続ける佐野君へのリスペクトを公言してはばからない。昨日のラジオの中でも「明日は佐野さんは宮城(だったかな?)コンサートをやります。頑張ってください。と2回も言っていた。

最後のサビのリフレインで「闇を照らそう!」と歌う佐野元春は紛れもなくロックンロールの体現者だ!

 

日本のTravelling Wilburys、もしかすると日本の最後のロックンロールバンド!

素晴らしい曲を、パフォーマンスをありがとうございます!

MVも撮影するらしいので、楽しみです!

桑田佳祐LIVE TOUR 2021 BIG MOUTH, NO GUTS!! Blu-ray

2020年に始まった新型コロナ騒動。エンタテインメントの世界も2020年はほとんど活動ができなくなってしまった。そんな中で桑田さんは、サザンで業界初の有料配信ライブを行いファンにも業界にも「音楽のチカラ」という強烈なメッセージを発信した。年末にも再び配信で年越しライブを開催。

そして迎えた2021年。ミニアルバム「ごはんEP」の発売に続き、ついに有観客ライブ開催に踏み切った!これもメジャーアーティスト初!ツアーは当初国のイベント指針に基づき、人数制限、マスク着用、歓声禁止などの感染対策をとって始まった。しかし幸運なことに年末に向けて感染者数は減少し、収容人数の制限も徐々に緩和され、11月のさいたまではキャバ一杯での開催となった。

このBlu-rayはそんな特異な時代を記録した、ポップミュージックの歴史でも貴重なものとなった。でもそれだけに、ここに歌われた曲の数々には強いスピリットが宿りメッセージがビンビン伝わってくる。桑田さんはこんな世の中でも変わらず音楽のチカラ、優しさを通じて僕たちの心を揺さぶり明日への希望を届けてくれる。また声のない観客も、その精一杯の拍手と輝く笑顔で応え、見事なコラボレーションによって一つの濃密な空間、沢山の心が大きなパワーの塊になった瞬間を描いている。

「炎の聖歌隊~CHOIR~」の盛り上がり。何度見てもこのシーンでは涙を抑えきれない。そしてやはりこのライブ最大の見せ場は「どん底のブルース」だろう。またライブをやりたい。その時はマスクをはずしてみんなの笑顔がみたいから。また「スキップビート」でのコール&レスポンスを手拍子でやるところなど、こんな時代だからの工夫がいっぱい。それだけでなく、後半の弾けっぷりや「YIN-YANG」でのエロ全開ぶりなどは変わらなない桑田さんの茶目っ気満載。

2021年という時代にエンターテイメントが人々の暮らしに与えた元気を記録した一枚。

鬼灯(ほおずき)

初めて聴いたのは「やさしい夜遊び。」

タイトルから想像していたのは「蛍」みたいなしっとりしたバラード。だけど実際はちょっとファンキーなイントロで本編はフォークっぽいロックだった。ビートルズみたいだな、となんとなく思った。

桑田さんによると、ポール・マッカートニーのソロ・アルバム「マッカートニー」とか「RAM」をイメージしたのだとか。確かに「マッカートニー」に入っている“That would be something”なんかにイントロが似ている(^-^;  また「マッカートニー」と同じくほとんどセルフ演奏?

でも歌詞のテーマは沖縄戦に出かけていく若きパイロットとそこに幼いころの思い出を重ねる女性。「妹みたい」って私の頭をなで・・・

桑田さんがこうした戦争の話題を取り上げる時はいつもそうだけど、視線はいつもそこにいる市井の人々。。政治的なメッセージではなくて、いつも心の中にいる「彼」や「彼女」の姿がリアルに浮かんでくる。

また一つ、夏に聴きたくなる曲が増えた。

【ネタばれ解禁!】2021.10.7.広島グリーンアリーナ「KUWATA KEISUKE BIG MOUTH, NO GUTS!!」ライブレポート(2)

M12 どん底のブルース

いつもここからの4~5曲くらいが、そのライブで桑田さんが一番表現したいことを実現するコーナーと言える。今回はその意味でこの曲が今回のライブで最も象徴的な曲だったかもしれない。ライブ前に桑田さんは「やさしい夜遊び」で「どうしてもやりたい曲がある」と話していて、どの曲だろうとライブ中にも考えていたのだけど、たぶんこの曲じゃないかな。

その答えはこの曲の歌詞にあった。1番はふつうに元の歌詞のままで歌ったが、2番からは替え歌に。まずは何かひとつ誰かが問題を起こすと一斉にバッシングする、プライベートも何もあったものではないこの世の中を憂う。2017年の「がらくた」の中の「最低のワル」に通ずるテーマを感じた。そして3番に感動。このコロナ禍に、「来年もまた広島に帰ってきたい。マスクなしで。みんなの笑顔が見たいから。」と歌う。これには泣けた~。このライブで伝えたかったメッセージはこのあたりに凝縮されているような気がする。ライブができる喜び。現状の不自由さと違和感。未来への希望と期待。

M13 東京

どん底のブルース」が終わりスクリーンには夜の雨の映像が。これはさては・・・と思ったらやはり「東京。」この曲もやはり演奏が分厚くて大迫力。前の曲から続く暗いイメージ。間奏は桑田渾身のソロ。最後の♪雨よこのまま どうか泣かせて が省略されたショートバージョン。

M14 鬼灯(ほおづき)

ここはまたぐっと雰囲気が変わってリラックスムード。スタジオバージョンではポール・マッカートニーのホームレコーディング「マッカートニー」や「RAM」を意識した音作りで桑田さんが一人で多くの楽器を演奏していたが、ここはきれいなバンドアンサンブルが楽しめる。今回のライブは新作の6曲を集中させず、適切に配置しながら、メジャーな曲、そうでもない曲をバランスよく構成している。

M15 遠い街角~The Wanderin' Street

ユニクロのCMに使われて再び注目された曲。それもあって演奏されたのだろう。ライブでは2007年以来では?ライブの流れとしては中盤の盛り上げから終盤の怒涛の連発に行く前のバラードという位置づけ。個人的にはこういうおなじみの曲はつい声を出して歌いたくなるのだけれど、今回は「声だし禁止」なので抑えるのに苦労する。

M16 SMILE~晴れ渡る空のように

ここで来た!ここまでやや暗めだった照明が一気に明るくなったかと思うと、ステージ上のメンバーがみんな手を頭の上にあげて手拍子を打っている。この曲が発表されて1年9ヶ月。これを聴くためにここに来たと言ってもいい。今年の「ごはんEP」の中では一番古い曲で、これまであまりにも聴きすぎて新鮮味はなくなったかもしれないけど、あらためてライブで聴いてみるとやっぱりこの曲が重要なんだと気づかされる。“Oh, Oh, Oh, Oh~”というコーラスの部分は会場全体が(おそらくはスタッフもみんな)腕を突き上げて、(心の中で)歌う。もともとはTOKYO2020オリンピック/パラリンピックの民放統一応援ソングとして作られた曲だけど、今はもうそれらを超越して今を生きる人全員への応援ソングとなっている。また最近ユニクロのCMで使われることになり、この曲に勇気づけられる人をどんどんと増やしていくことだろう。

M17 SOULコブラツイスト~魂の悶絶

ここでやっぱり来た!この曲が今年のイチ押しという意味合いだろう。照明の雰囲気などがらりと変わって、リストバンドも華やかに輝く。とってもハッピーでちょっとやるせない感じの曲調が前の曲の感動といいコントラストになり、一気に盛り上がる。みんなこの曲を待っていた!

うまく表現できないのだけど、一拍ごとに手をぐるぐる回す手拍子(NHKの「SONGS」でもやってたやつだけど、それを思い出さなくても自然にそんな感じになる)が楽しい。いつの間にか会場全体がそんな手拍子で包まれる。

今年はこの曲にいっぱい元気と幸せをもらった。そんな人が多いだろう。このライブでもこの曲がクライマックス。それを象徴するシーンとなった。

M18 Yin Yang(イヤン)

この曲も最近のライブではよく演奏する曲。ソウルフルでちょっと歌謡曲っぽいという点で「SOUL コブラツイスト」と共通点がある。ダンサーも出てきて会場をさらに盛り上げる。個人的には、この曲をライブで聴くたびに、カップリングの「涙をぶっとばせ!」を聴きたいなぁと思ってしまうのだけれど。2012年の福岡でアンコール1曲目で聴いたあのノリが忘れられない。

M19 大河の一滴

キタ~!桑田さんは常々この曲を「ライブで演奏しやすくて好き」だと言ってるけど、2017年の「がらくたツアー、」今年のブルーノート東京での配信ライブでも演奏している。しかしこのクライマックスで演奏するとは思わなかった。この曲もちょっと歌謡曲っぽいテイストがあるので、前曲からのつながりか。いつ聴いてもカッコいい!

ノリはいいけど、どこかクールなトーンがあるこの曲はクライマックスシーンでの選曲としては抑制的な印象で、いつもの弾けた感じは少し後退気味だったのは否めない。この演出は、マスク装着・声援禁止という今回のライブを意識して敢えて抑えたものなのか?はわからない。

M20 スキップビート

少し抑え気味のピアノのインタールードから聞きなれたイントロ!この曲とわかった瞬間の会場の盛り上がりは凄かった。この曲も最近になってまたよく演奏されるようになった。なんかノリ慣れたリズム、身をゆだねているのが楽しい。今回たった一人での参戦でとなりには誰もいないけど、独り勝手にノレるのもいいかな~なんて思った。

後半の「Woh,man say」「Yeah!」という掛け合いは、今回客席に向かってではなく、メンバーに向かって。客は声出し禁止だから。でも観客も、声は出さずとも腕を突き上げて応える!当然でしょう!

M21 悲しい気持ち~Just A Man In Love

そしてクライマックスの5曲目。たぶん本編のラスト、というところで来た!イントロが聴こえた瞬間会場は弾けた!87年の発表から34年が経過し、古臭くなるどころかますます新鮮さを増すような上質なポップソング。ライブではこれほどまでに人を幸せにさせる。

この曲もサビの♪Just a man in love, oh Yeah というところはいつもなら大きな声で歌うところだけど、今回は歌唱禁止なので声は出さず、その分腕を前後に振るいつものジェスチャーで会場全体がステージへ応える!自分はまわりに人がいないのをいいことにいつもより派手にはしゃいで(声はださず)ひとりで弾けまくる!

ここでアンコール。最近はファンの高齢化も進み、アンコールは完全に休憩時間と化しているのがちょっと笑える。

そして再びメンバー、桑田さん登場。桑田さんはアコースティックギターを持ち、珍しく「東北の方たちの幸せを祈って」みたいなことを話してから

M22 明日へのマーチ

このタイミングでのこの曲には感動を覚えざるを得ない。今回のライブはところどころ非常にメッセージ性の強いところがあるけど、オープニングの「それいけベイビー!」「君への手紙。」中盤での「どん底のブルース。」そして終盤の「明日へのマーチ。」が特に意味あいが強いように感じた。ライブのポイントとなる部分にそれぞれメッセージ性の強い曲を配して、全体としてのメッセージを際立たせている。そのメッセージとは言うまでもなくコロナ禍を反映して、でもなんとか明日へ向かっていこうという、桑田さんのファンに寄り添ってともに前進しようとするはっきりした姿勢を感じる。それは、よく感じるのだけど桑田さんの多くの人に与える影響力の大きさを意識するが故の矜持だったり責任感だったりすると思う。桑田さんは決して認めないだろうけど。

また、珍しく♪願うは東北で生きる人の幸せ とはっきり歌った。これは東日本大震災から10年ということもかなり意識してのことなのだろうと感じた。

そんなことを考えながらこの曲を聴くとやっぱりちょっと落涙。

M23 悲しきプロボウラー

このイントロ!個人的にこれは狂喜乱舞!最近「やさしい夜遊び」でかかることが多いのでもしやライブで、と期待してはいたが、やっぱりやってくれるとは!音楽的にはビーチボーイズやエンディングではビートルズをモチーフにした非常に良質なポップソング。ちょっとせつない歌詞が大好きな曲。ボウリングに特化したというところでちょっと異質な感じはあるけど、♪けしてガーターを恥じないで だってストライクがすべてじゃない ひとそれぞれやり直しがきくのも人生さ と桑田さんらしくボウリングに人生を反映させるところが素晴らしい。

アンコールのこのタイミングは会場をリラックスさせるのに充分だった。

このあと、短いMC。「じゃあ、最後に、人の曲なんですけど、僕が歌いたい曲を歌って終わります。人のことなんか考えず、自分が歌いたい曲を歌って帰る。最低ですよね。」とか言いながら。そしてコーラスの田中雪江さんを「素晴らしいボーカリストです」と紹介しながら「一緒に歌ってみたいと思います。」当然雪江さんとデュエットだと思ったら、「隣にいるタイガーと歌います。」だって!会場大爆笑。曲はヒデとロザンナだって????

M24 愛の奇跡 by ヒデとロザンナ

正直、ライブも終盤、あと何曲やってくれるの?というこのタイミングで脈絡もわからず「なんだこれ~?」って印象はぬぐえないけど、まあこれはこれで楽しめたしとってもいい曲だということがわかった。

またここでひとつ思い浮かんだことが。ブルノート東京でのライブ。アンコールでドクタージョンの「Aiko,Aiko」という曲を突然やり始めたと思ったらそこからメドレーみたいな感じでなんと「ヨシ子さん」へ。ということがあったがそれを思い出した。「ははあ、これはワンコーラスくらいでヨシ子さんへいくパターンか。」と思った。そう考えるとこの流れも理解できる。でも、ワンコーラスどころか、ずっと歌ってるし、タイガーだけでなく田中雪江さんも入って3人でえらく熱のこもったいい歌を聴かせている。ほぼフルコーラス歌ったんじゃなかろうか?

で、さあ、「ヨシ子さん」かあ!?と思ったら

M25 波乗りジョニー

完全に当てがはずれた!でも僕が桑田さんソロでは一番好きな曲なのでうれしくないはずがない!何度目かわからないけど弾けまくり!

桑田さんのライブで「波乗りジョニー」を聴く。弾ける。手をたたく。ステージのダンサーやメンバーのみなさんと一緒に「スイム」と言われるダンスの振りを真似てみる。これほど楽しい、幸せを感じられる瞬間というのは他にはほとんどない。そりゃ日々いやなこともある。楽しいこともある。落ちたり上がったり、そんな心の振幅が生きてるということだし、それがなくなったら生きる価値もないと思うけど、その一番楽しい、幸せな瞬間のひとつの形。この日もこの体験ができた。それだけでもう幸せの頂点。

この曲が終わってメンバー紹介。あれ?これはもう終わるパターン?「波乗りジョニー」で終わるとは新しい?と思ったけど、うれしいことにもう1曲やってくれた!しかも曲紹介つきで。

M26 祭りのあと

ライブの最終曲定番。大きく手を広げてリズムに合わせて一拍ずつ大切にたたく。これでアンコールも(愛の奇跡をいれて)5曲め。これで終わりなんだなといつも寂しくなる。あ、ヨシ子さん、明日晴れるかな白い恋人達、ダーリン。。。他にも聴きたい、やりそうな曲はたくさんあるけど、今回は聴けないのか、という寂しさも心をよぎる。

またいつ桑田さんのライブに来れるだろう?サザンは?とかなんか寂しいことばかり考えてしまう。でもこれで終わりなのだからしっかり耳にやきつけておこう、と集中して耳を傾ける。

そして終わった。

全26曲。2時間半。マスク着用。声援禁止。ソーシャルディスタンス。いったいどんなライブになるんだろう?構成や演出はいつもと違うのか?感染したりしないだろうな。

参加する前はいろんな不安があったのも事実だけど、終わってみればいつものように素晴らしい時間。特に今回は桑田さんの思いがよくわかった気がする。

思い切りノリノリにさせてくれる曲。じんわりと心に染み入るような曲。その両方がとても際立っていて、辛いことが多いこんな時だからこそ伝えたいメッセージがあったのだと感じる。

そのメッセージは

「楽しんでいいんだよ!」というところか?

なんだか殺伐としたこの時代に開催されたこのライブの意義は大変なものだ。

 

 

【ネタばれ注意!】2021.10.7.広島グリーンアリーナ「KUWATA KEISUKE BIG MOUTH, NO GUTS!!」ライブレポート(1)

前代未聞のコロナ禍で、サザンも含め昨年から3度の無観客配信ライブを敢行した桑田さん。有料での配信ライブを行ったのも最初なら、ついにアリーナクラスの会場での全国ツアーに踏み切ったのも初めてだろう。

コロナ禍で全国のファンに元気を届けたい。

ライブがやりたくてうずうず。

全国のイベンターなど瀕死の業界を救いたい

業界をリードしたい。

いろんな思いがあってのことだろう。

正直、自分としてはこのツアー開催のニュースが入った8月頃は複雑な気持ちだった。

まだまだコロナ感染者は多く、自分は行きたくても周囲(家族や仕事関係者等)の理解は得られるのか?感染のリスクは?等々いろいろ考えて、いつもなら広島、福岡、等複数会場エントリーするところ、またいろいろ仲間を誘って参加するところ、今回は全く一人で、1公演のみ参加することに決めた。こんな複雑な思い、逡巡は初めてだったがこう感じた人は多かったのではないか。いつもなら一緒に行く仲間も今回は参加を断念という人が何人かいた。

そんな複雑な感情を抱えながらもやってきた2021年10月7日。コロナ感染者も急激に減少してきた。後年今の状況はどう評価されるのだろう?

おなじみの広島グリーンアリーナをたった一人で訪れる。席ごとに時間帯をわけた分散入場。電子チケット。席は、椅子はフルに置かれているもののグループごとにまとまって隣の席は空けた状態での配席でディスタンスを保つ。そんなコロナ対策でざっとキャパの7割くらいだろうか。

開園前に流れているのはなんとビバルディの「四季。」開園前クラシックは初めてかな?5分前からあおりの前説が流れ(ここでもステージへの声掛け禁止、歌唱禁止などが訴えられる)、開園時間の6:30ちょうどに場内暗転。一斉に総立ち。大きな手拍子。歓声はなし。

クラシックの流れか、まずは「威風堂々」が流れ始めてステージの映像に「BIG MOUTH, NO GUTS!」の文字が浮かぶ。ただここはツアービジュアルのかわいいナマケモノのイラストとかはなくて至極真面目で、濃いブルーのバックにシルバーのゴシック系の文字。

そしてメンバーが登場し、最後に桑田さん登場。エレキギターを鳴らして音色のチェック。どうやら桑田さんが弾いてる?ということは1曲目は何?と思ったら、

M1 それ行けベイビー!

ああ!これか~!だよね~!納得の選曲!「適当に手を抜いていこうな 真面目に好きなようにやんな」人の気持ちをほぐして、前向きにさせてくれる曲。ステージのスクリーンに、真っ黒いバックに手書きの歌詞が映し出される。しかも書き順の通りに文字が描かれていく。ちゃんとアニメになってる。と変なところに感動。そして3番からはバンドが入って迫力増大!このアレンジは初めてだろう。

M2 君への手紙

この頭の2曲にははっきりしたメッセージ性が感じられる。コロナ禍でいろんな苦悩、ストレスを抱える人に寄り添い勇気づける。いろんな思いを抱えてここへ集まった人たちもこの2曲ですっと気持ちが楽になったり、魂をほぐされたりした気がしたのではないか。自分もこの曲の歌いだしのあたりで早くも落涙。

ステージ上にはミラーボールが現れて会場に光を振りまいていた。

この曲が終わると、まさに聖歌隊のようなアカペラ・コーラスが。そして腕に巻いたリストバンドがろうそくの炎のようにオレンジ色に点灯。あ、あの曲だ~。そのあとはリストバンドのLEDは白に変わり、コーラスはビーチボーイズみたいに。そしてイントロ。

M3 炎の聖歌隊~CHOIR

この曲の3曲目は予想通り!3曲目はいつもガーンと盛り上がる曲がくる。このツアーのために作られたようなこの曲はここ以外には考えられない!

♪開演おまちどおさん

♪ご来場大変ご足労さん

♪毎日お疲れさん

♪ようこそここへ

この曲のこのフレーズが聴きたくてここへやってきたといっても過言ではない。コロナ禍だから価値があるこのフレーズ。コロナ禍だから、ライブがこれほど貴重なものだと感じられるから。この曲は個人的には今年だけでなくこれからもずっとすごく大切な曲になりそうな予感がする。その思いがこの日の盛り上がりを経験していっそう強くなった。映像はここで初めてステージの桑田さんが映し出され、ステージバック全体を使ったワイドな画面で海や空の華やかな映像演出がいっそう盛り上げていた。最高!今思い出してもこの曲が一番良かったかな~?

「夜遊び」のお留守番DJで原坊が「ある初演の曲で、初めてなのにお客さんの振りが揃っていてびっくり!」みたいなことを言ってたけど、それはこの曲の「見えないジョッキで乾杯だ!」で乾杯する様にみんなが腕を突き上げるポーズのことを言ってるのだろう。別に示し合わせたわけでもなく、あそこでは自然にああなっていく。そういうのが楽しい。

 

ここで最初のMC。4年ぶりの広島グリーンアリーナ。でもいつもの「スタンド~!アリーナ!」を忘れていた。それを途中で思いだして照れながらそれさえもネタにして笑いを誘う。

個人的にはこのライブはもっとおとなしい展開になるのかと思っていたけど、予想以上にいつも通りの演奏、選曲、MCだったように思う。そして「次の曲は『男たちの挽歌と書いてエレジー』と紹介。」

 

M4 男達の挽歌(エレジー

この選曲はちょっとびっくり。前回のソロ・ツアー2017年の「がらくた」ツアーの2曲めだったが、どちらかというとメジャーではない曲。でもそれ以来めっちゃ好きになった曲なので嬉しかった。メンバーは事前に聞いてはいたがほぼいつもの布陣。違うのはドラムが違うのとギターに中シゲヲが加わっていること、コーラスにタイガーだけでなくユッキーこと田中雪江さん(?)が加わっている。この曲はソウルフルな女性コーラスが特徴だけど、そこはこの2人、バッチリ決めていた。

M5 本当は怖い愛とロマンス

おなじみのシングルヒット。和服を着たダンサー登場。良質なポップソング。

M6 若い広場

シングルヒットの連発ですっかり会場はリラックス。スクリーンにかわいい、けど大きいひよこのアニメが出てきた。オープニング3曲でこのライブの趣旨を伝え、ドーンと盛り上げて、このパートはとにかくリラックス。今日のライブはこんな風に進んでい行くよ~という宣言のような。

ここで短いMCが入って、この日のために作ってきた曲がある、とか言って始まったのが

M7 大阪レディブルース~広島版

2011年の宮城ライブではこの曲を東北バージョンにして歌ってたけど、全国でこれをやるのは初めてか?カープサンフレッチェのことを入れたり、岸田自民党新総裁のことを歌ったり世界中が好きさ、というところではなんか原爆ドームが出てきた?

これも桑田さんの心が現れた名演だった。

M8 なんか夕焼けのような街並みがアニメであらわれ、「遠い街角」かと思ったら「金目鯛の煮付け

このパートはさしずめ「リラックスコーナー」だろうか。そこにこの曲はピッタリ。なんか地味な曲だと最初は思ったけど、こんな日常の価値を表現できた曲があったかなって思うと、この曲の偉大さがわかる。

M9 ここはまた一気に展開が変わり、なんと「エロスで殺して~ROCK ON」ここで確かダンサー登場。この曲はまた久しぶり!ていうか、94年の「さのさのさ」ツアー以来では?

M10 さすらいのライダー

最新の「ごはんEP」からの曲。ソウルフルな重いリズムが素晴らしい曲だけど、ライブで聴くとこの低音がズンズン響いて最高。ここまで展開が目まぐるしく変わり飽きさせない。次は何が来るのか?と楽しみになる。

M11 月光の聖者達

映画の主題歌になって再び注目を集める曲。演奏に厚みと迫力があって素晴らしい。ここが前半のクライマックスだったと言っていいだろう。「今はどんなにやらせなくても明日は今日より素晴らしい」という歌詞が、今を生きる人々に希望を与える。

 

ここでいつものようにメンバー紹介。最近よくやるけど、アドリブのソロ回しをしながら次々に紹介していく。今回はドラマがいつもの河村カースケさんじゃないこととギターに中シゲヲさんが入ってるところがいつもと違う。でも桑田さんはいろんなところで今回のバンド、メンバーは最高だと口にしている。ここでも「このメンバーの素晴らしい演奏をお楽しみください」的なことを言っていた。

またここのMCだったか定かてないけど、「みんなここへ来るのにもいろんな迷いや不安があったと思います。そんな中来てくれてありがとう。」と言っていた。ああ桑田さんもファンの気持ちをわかってくれてるんだなと感動を覚えた。

 

そして次のコーナーへ。

「こんなご時世、みんな明るい曲が聴きたいと思うんだけど、敢えて暗い曲をやります。自分史上一番暗い曲です。」と紹介して次の曲が始まった。」

【ネタばれ注意!】KUWATA KEISUKE LIVE TOUR 2021 BIG MOUTH, NO GUTS!! 2021.10.07.広島グリーンアリーナ・セットリスト

1. それいけベイビー
2. 君への手紙
3. 炎の聖歌隊choir
MC
4. 男達の挽歌
5. 本当は怖い愛とロマンス
6. 若い広場
7. 大阪レディブルース替え歌広島バージョン
8. 金目鯛の煮付け
9. エロスで殺して
10. さすらいのライダー
11. 月光の聖者達
メンバー紹介
12. どん底のブルース 替え歌2021
13. 東京
14. 鬼灯
15. 遠い街角
16. SMILE 晴れ渡る空のように
17. Soul コブラツイスト~魂の悶絶
18. Yin Yang
19. 大河の一滴
20. スキップビート
21. 悲しい気持ち
アンコール
22. 明日へのマーチ
23. 悲しきプロボウラー
24. 愛の奇跡(ヒデとロザンナ)
25. 波乗りジョニー
26. 祭りのあと

炎の聖歌隊~Choir~

個人的には今年発表された5曲の中で最大のヒット!

ビーチボーイズのようなコーラス

ロネッツ(とそれを真似するビリージョエル)みたいなコーラス

「ラジオスターの悲劇」みたいな(桑田さんはELOと言った)ラジオボイス

フィルスペクターのウォールオブサウンドを彷彿させるアレンジ

桑田さんが多大なる影響を受けたであろう(そして僕たちが大好きな)60年代ポップスのエッセンスがたっぷり詰まっている!思わずにやりとするようなフレーズがいっぱい。

そして、この歌詞!

全編ライブの開幕を意識したフレーズは、どれほど桑田さんが観客を前にしたライブを渇望していたかがよくわかる気がする。また、桑田さんが目の前にいるライブを僕たちファンがどれだけ渇望していたか、を桑田さんはよく知っている。

♪開演お待ちどおさん

♪来場ご足労さん

♪毎日お疲れさん

この絶妙なサビの韻の踏み方に泣けるような意味を重ねているフレーズは最高。秀逸。

ライブで盛り上がるのはもちろんだけど、日常のさまざまな場面でもこの曲は僕たちを元気づけてくれそうだ!最高!

それにもうひとつ。最近の海外のヒット曲は60年代のそれのように短くて3分台が多い。この曲はそれを意識したのかどうかは知らないが3分台と短いのがいい!