【ネタばれ解禁!】2021.10.7.広島グリーンアリーナ「KUWATA KEISUKE BIG MOUTH, NO GUTS!!」ライブレポート(2)

M12 どん底のブルース

いつもここからの4~5曲くらいが、そのライブで桑田さんが一番表現したいことを実現するコーナーと言える。今回はその意味でこの曲が今回のライブで最も象徴的な曲だったかもしれない。ライブ前に桑田さんは「やさしい夜遊び」で「どうしてもやりたい曲がある」と話していて、どの曲だろうとライブ中にも考えていたのだけど、たぶんこの曲じゃないかな。

その答えはこの曲の歌詞にあった。1番はふつうに元の歌詞のままで歌ったが、2番からは替え歌に。まずは何かひとつ誰かが問題を起こすと一斉にバッシングする、プライベートも何もあったものではないこの世の中を憂う。2017年の「がらくた」の中の「最低のワル」に通ずるテーマを感じた。そして3番に感動。このコロナ禍に、「来年もまた広島に帰ってきたい。マスクなしで。みんなの笑顔が見たいから。」と歌う。これには泣けた~。このライブで伝えたかったメッセージはこのあたりに凝縮されているような気がする。ライブができる喜び。現状の不自由さと違和感。未来への希望と期待。

M13 東京

どん底のブルース」が終わりスクリーンには夜の雨の映像が。これはさては・・・と思ったらやはり「東京。」この曲もやはり演奏が分厚くて大迫力。前の曲から続く暗いイメージ。間奏は桑田渾身のソロ。最後の♪雨よこのまま どうか泣かせて が省略されたショートバージョン。

M14 鬼灯(ほおづき)

ここはまたぐっと雰囲気が変わってリラックスムード。スタジオバージョンではポール・マッカートニーのホームレコーディング「マッカートニー」や「RAM」を意識した音作りで桑田さんが一人で多くの楽器を演奏していたが、ここはきれいなバンドアンサンブルが楽しめる。今回のライブは新作の6曲を集中させず、適切に配置しながら、メジャーな曲、そうでもない曲をバランスよく構成している。

M15 遠い街角~The Wanderin' Street

ユニクロのCMに使われて再び注目された曲。それもあって演奏されたのだろう。ライブでは2007年以来では?ライブの流れとしては中盤の盛り上げから終盤の怒涛の連発に行く前のバラードという位置づけ。個人的にはこういうおなじみの曲はつい声を出して歌いたくなるのだけれど、今回は「声だし禁止」なので抑えるのに苦労する。

M16 SMILE~晴れ渡る空のように

ここで来た!ここまでやや暗めだった照明が一気に明るくなったかと思うと、ステージ上のメンバーがみんな手を頭の上にあげて手拍子を打っている。この曲が発表されて1年9ヶ月。これを聴くためにここに来たと言ってもいい。今年の「ごはんEP」の中では一番古い曲で、これまであまりにも聴きすぎて新鮮味はなくなったかもしれないけど、あらためてライブで聴いてみるとやっぱりこの曲が重要なんだと気づかされる。“Oh, Oh, Oh, Oh~”というコーラスの部分は会場全体が(おそらくはスタッフもみんな)腕を突き上げて、(心の中で)歌う。もともとはTOKYO2020オリンピック/パラリンピックの民放統一応援ソングとして作られた曲だけど、今はもうそれらを超越して今を生きる人全員への応援ソングとなっている。また最近ユニクロのCMで使われることになり、この曲に勇気づけられる人をどんどんと増やしていくことだろう。

M17 SOULコブラツイスト~魂の悶絶

ここでやっぱり来た!この曲が今年のイチ押しという意味合いだろう。照明の雰囲気などがらりと変わって、リストバンドも華やかに輝く。とってもハッピーでちょっとやるせない感じの曲調が前の曲の感動といいコントラストになり、一気に盛り上がる。みんなこの曲を待っていた!

うまく表現できないのだけど、一拍ごとに手をぐるぐる回す手拍子(NHKの「SONGS」でもやってたやつだけど、それを思い出さなくても自然にそんな感じになる)が楽しい。いつの間にか会場全体がそんな手拍子で包まれる。

今年はこの曲にいっぱい元気と幸せをもらった。そんな人が多いだろう。このライブでもこの曲がクライマックス。それを象徴するシーンとなった。

M18 Yin Yang(イヤン)

この曲も最近のライブではよく演奏する曲。ソウルフルでちょっと歌謡曲っぽいという点で「SOUL コブラツイスト」と共通点がある。ダンサーも出てきて会場をさらに盛り上げる。個人的には、この曲をライブで聴くたびに、カップリングの「涙をぶっとばせ!」を聴きたいなぁと思ってしまうのだけれど。2012年の福岡でアンコール1曲目で聴いたあのノリが忘れられない。

M19 大河の一滴

キタ~!桑田さんは常々この曲を「ライブで演奏しやすくて好き」だと言ってるけど、2017年の「がらくたツアー、」今年のブルーノート東京での配信ライブでも演奏している。しかしこのクライマックスで演奏するとは思わなかった。この曲もちょっと歌謡曲っぽいテイストがあるので、前曲からのつながりか。いつ聴いてもカッコいい!

ノリはいいけど、どこかクールなトーンがあるこの曲はクライマックスシーンでの選曲としては抑制的な印象で、いつもの弾けた感じは少し後退気味だったのは否めない。この演出は、マスク装着・声援禁止という今回のライブを意識して敢えて抑えたものなのか?はわからない。

M20 スキップビート

少し抑え気味のピアノのインタールードから聞きなれたイントロ!この曲とわかった瞬間の会場の盛り上がりは凄かった。この曲も最近になってまたよく演奏されるようになった。なんかノリ慣れたリズム、身をゆだねているのが楽しい。今回たった一人での参戦でとなりには誰もいないけど、独り勝手にノレるのもいいかな~なんて思った。

後半の「Woh,man say」「Yeah!」という掛け合いは、今回客席に向かってではなく、メンバーに向かって。客は声出し禁止だから。でも観客も、声は出さずとも腕を突き上げて応える!当然でしょう!

M21 悲しい気持ち~Just A Man In Love

そしてクライマックスの5曲目。たぶん本編のラスト、というところで来た!イントロが聴こえた瞬間会場は弾けた!87年の発表から34年が経過し、古臭くなるどころかますます新鮮さを増すような上質なポップソング。ライブではこれほどまでに人を幸せにさせる。

この曲もサビの♪Just a man in love, oh Yeah というところはいつもなら大きな声で歌うところだけど、今回は歌唱禁止なので声は出さず、その分腕を前後に振るいつものジェスチャーで会場全体がステージへ応える!自分はまわりに人がいないのをいいことにいつもより派手にはしゃいで(声はださず)ひとりで弾けまくる!

ここでアンコール。最近はファンの高齢化も進み、アンコールは完全に休憩時間と化しているのがちょっと笑える。

そして再びメンバー、桑田さん登場。桑田さんはアコースティックギターを持ち、珍しく「東北の方たちの幸せを祈って」みたいなことを話してから

M22 明日へのマーチ

このタイミングでのこの曲には感動を覚えざるを得ない。今回のライブはところどころ非常にメッセージ性の強いところがあるけど、オープニングの「それいけベイビー!」「君への手紙。」中盤での「どん底のブルース。」そして終盤の「明日へのマーチ。」が特に意味あいが強いように感じた。ライブのポイントとなる部分にそれぞれメッセージ性の強い曲を配して、全体としてのメッセージを際立たせている。そのメッセージとは言うまでもなくコロナ禍を反映して、でもなんとか明日へ向かっていこうという、桑田さんのファンに寄り添ってともに前進しようとするはっきりした姿勢を感じる。それは、よく感じるのだけど桑田さんの多くの人に与える影響力の大きさを意識するが故の矜持だったり責任感だったりすると思う。桑田さんは決して認めないだろうけど。

また、珍しく♪願うは東北で生きる人の幸せ とはっきり歌った。これは東日本大震災から10年ということもかなり意識してのことなのだろうと感じた。

そんなことを考えながらこの曲を聴くとやっぱりちょっと落涙。

M23 悲しきプロボウラー

このイントロ!個人的にこれは狂喜乱舞!最近「やさしい夜遊び」でかかることが多いのでもしやライブで、と期待してはいたが、やっぱりやってくれるとは!音楽的にはビーチボーイズやエンディングではビートルズをモチーフにした非常に良質なポップソング。ちょっとせつない歌詞が大好きな曲。ボウリングに特化したというところでちょっと異質な感じはあるけど、♪けしてガーターを恥じないで だってストライクがすべてじゃない ひとそれぞれやり直しがきくのも人生さ と桑田さんらしくボウリングに人生を反映させるところが素晴らしい。

アンコールのこのタイミングは会場をリラックスさせるのに充分だった。

このあと、短いMC。「じゃあ、最後に、人の曲なんですけど、僕が歌いたい曲を歌って終わります。人のことなんか考えず、自分が歌いたい曲を歌って帰る。最低ですよね。」とか言いながら。そしてコーラスの田中雪江さんを「素晴らしいボーカリストです」と紹介しながら「一緒に歌ってみたいと思います。」当然雪江さんとデュエットだと思ったら、「隣にいるタイガーと歌います。」だって!会場大爆笑。曲はヒデとロザンナだって????

M24 愛の奇跡 by ヒデとロザンナ

正直、ライブも終盤、あと何曲やってくれるの?というこのタイミングで脈絡もわからず「なんだこれ~?」って印象はぬぐえないけど、まあこれはこれで楽しめたしとってもいい曲だということがわかった。

またここでひとつ思い浮かんだことが。ブルノート東京でのライブ。アンコールでドクタージョンの「Aiko,Aiko」という曲を突然やり始めたと思ったらそこからメドレーみたいな感じでなんと「ヨシ子さん」へ。ということがあったがそれを思い出した。「ははあ、これはワンコーラスくらいでヨシ子さんへいくパターンか。」と思った。そう考えるとこの流れも理解できる。でも、ワンコーラスどころか、ずっと歌ってるし、タイガーだけでなく田中雪江さんも入って3人でえらく熱のこもったいい歌を聴かせている。ほぼフルコーラス歌ったんじゃなかろうか?

で、さあ、「ヨシ子さん」かあ!?と思ったら

M25 波乗りジョニー

完全に当てがはずれた!でも僕が桑田さんソロでは一番好きな曲なのでうれしくないはずがない!何度目かわからないけど弾けまくり!

桑田さんのライブで「波乗りジョニー」を聴く。弾ける。手をたたく。ステージのダンサーやメンバーのみなさんと一緒に「スイム」と言われるダンスの振りを真似てみる。これほど楽しい、幸せを感じられる瞬間というのは他にはほとんどない。そりゃ日々いやなこともある。楽しいこともある。落ちたり上がったり、そんな心の振幅が生きてるということだし、それがなくなったら生きる価値もないと思うけど、その一番楽しい、幸せな瞬間のひとつの形。この日もこの体験ができた。それだけでもう幸せの頂点。

この曲が終わってメンバー紹介。あれ?これはもう終わるパターン?「波乗りジョニー」で終わるとは新しい?と思ったけど、うれしいことにもう1曲やってくれた!しかも曲紹介つきで。

M26 祭りのあと

ライブの最終曲定番。大きく手を広げてリズムに合わせて一拍ずつ大切にたたく。これでアンコールも(愛の奇跡をいれて)5曲め。これで終わりなんだなといつも寂しくなる。あ、ヨシ子さん、明日晴れるかな白い恋人達、ダーリン。。。他にも聴きたい、やりそうな曲はたくさんあるけど、今回は聴けないのか、という寂しさも心をよぎる。

またいつ桑田さんのライブに来れるだろう?サザンは?とかなんか寂しいことばかり考えてしまう。でもこれで終わりなのだからしっかり耳にやきつけておこう、と集中して耳を傾ける。

そして終わった。

全26曲。2時間半。マスク着用。声援禁止。ソーシャルディスタンス。いったいどんなライブになるんだろう?構成や演出はいつもと違うのか?感染したりしないだろうな。

参加する前はいろんな不安があったのも事実だけど、終わってみればいつものように素晴らしい時間。特に今回は桑田さんの思いがよくわかった気がする。

思い切りノリノリにさせてくれる曲。じんわりと心に染み入るような曲。その両方がとても際立っていて、辛いことが多いこんな時だからこそ伝えたいメッセージがあったのだと感じる。

そのメッセージは

「楽しんでいいんだよ!」というところか?

なんだか殺伐としたこの時代に開催されたこのライブの意義は大変なものだ。