明日へのマーチ&Let's Try Again by 桑田佳祐


2011年5月発売。

日本中を未曽有の危機に陥れた東日本大震災の直後に発表された、桑田さんのソロシングル。
派手なロックや感動的はバラードではなく、むしろ拍子抜けしそうなほど牧歌的なフォークソング被災者の方々を始め日本の人々にそっと寄り添うような名曲。当時タイアップで使用されていたドコモのCMのキャッチコピーが“Walk With You.” このコピーもいい。桑田さん自身は、「ふるさと」をテーマに作曲したと話していたけど、みんなが共有できる暖かさを持っている。
曲としてはPPM(ピーター・ポール&マリー)とか、70年代初頭のフォークサウンドをイメージさせる。しかし歌詞は「十五夜月」「宵町の花」とか、「風吹く海」など、日本人の原風景をイメージさせ、心が自然と穏やかに泰然と落ち着いていく。また「遠くで」という歌詞をさりげなく「東北で」と聞こえるように歌うセンスは天才。
辛い状況を受け止めながら、みんなで一歩一歩歩んでいこう。震災という状況がなくとも、いつでもどこでも気軽に歌える。「歌」というのは本来そんなものだよね、と思い起こさせる。
 

カップリングの“Let's Try Again.”は震災直後に「チーム・アミューズ」で発表した支援ソングのフルバージョン。これぞ桑田佳祐というロックンロールに仕上がり、同年の「宮城ライブ」では客席と一体となって歌い上げる様子は涙なしには見られなかった。2012年のライブツアーでは「もういいかな」と思っていたそうだが、結局演奏されることになり、今やライブでは欠かせない曲になったと思っている。

 
今、再びこの2曲のチカラが日本には必要なのではないか。