がらくた/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

がらくた

2017.08.23 桑田佳祐61歳

ソロ5枚目のアルバム

「がらくた」と名付けられた、現在の日本で最高のポップ・ミュージック。桑田さんは「大衆音楽」という言い方を好むかな?

無駄な曲が1曲もなくて、1曲目のイントロから最後の曲の最後まで一気に聴いてしまう。既発のシングル曲も多いけど、シングル・カップリング曲でも収録されていない曲もあるし、この年の「偉大なる歌謡曲に感謝」(WOWOWで放送されのちに映像作品化)で放送された名曲「悪戯されて」もアルバム本編には入っていない。※初回限定版の特典映像にMVが収録されているが。その意味では寄せ集めではなくてしっかりとしたコンセプトのもとに構成されていると言っていい。

そのコンセプトとは何か?思うに、『今の世に問うポップ・ミュージック』みたいなことか?桑田さんもしきりに「還暦」という言葉を使うし、以前よりも自分や周囲の年齢、社会情勢、音楽シーンなどを常に意識して、それらとの関わりを歌うことが多くなっているように思う。東日本大震災から数年は「いのち」や「ふるさと」というものがテーマになった曲が多かったが、自分の病からの復活、サザンの復活を経て再びソロに立ち返った時に自然に意識するのは、『今の世に音楽でできることは何か?』みたいなことではないか?とは言っても1970年代のロックシーンのように政治的に何かを成し遂げようというのではなく、あくまでも個人個人の心に何かを届けてひとりひとりが元気になれば、という思いからこれらの「がらくた」を生み出してきたのではないだろうか。桑田さん本人としてはそれほど大したことはできないというある種の自虐から「がらくた」というタイトルになったのかもしれないが、その「がらくた」のひとつひとつが大切な今日の、明日の活力になっているというのは聴いている自分たちが一番よくわかる。

個人的にはアルバム後半が特に自分にとって大切な歌ばかりで、桑田さんのソロ作品の中では今は一番大事なアルバムとなっている。

全国のアリーナやドームを回ったライブツアー「がらくた」も全28曲のうち14曲がこのアルバムの曲だったけど、無理やりニューアルバムの曲をやりました感は全くなくて、非常に濃密なライブだった。