Big Star Blues~ビッグスターの悲劇/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

Big Star Blues~ビッグスターの悲劇

12枚目のシングル 1981.06.21 桑田佳祐25歳

 

はっきり言ってこのレコーディングはうまく行ってないと思う。

この曲の魅力が100とするなら、30くらいしか表現されていないと思うから。

この曲は実はそれほど重要な曲。バンドとして驚異的な成長をとげたFive Rock Show~タイニイバブルスの流れを経て、新しいアルバムに取り組んで最初にリリースされた先行シングル。

「ごめんねチャーリー」に続いてソウルフルな女性コーラスグループEVEを起用していて、それもあってソウルフレーバーたっぷりのロックンロールという仕上がり。当時のインタビューで桑田さんは「ホントはビートルズとか、(筆者注=リズム&ブルースや黒人のロックンロールを白人がやった)リバプールサウンドみたいなのをやりたかったんだけど、マイクは違うしいろいろうまくいかなかった」的なことを言ってた。R&Bへのトライは「ごめんねチャーリー」よりもずっとうまく行っていて、自分はこの曲がきっかけで60年代のR&Bに興味を持つようになり、好きな音楽の幅を大きく広げてくれた曲でもある。

歌詞は思いあがったビッグスターを皮肉っている内容で多少自虐的な意味もあるのか?タイトルは70年代後半にヒットした「ラジオスターの悲劇」のパロディ。歌詞の中にはダスティン・ホフマンエリック・クラプトン、ヨーコ・オノ、マーク・チャップマンといった名前が出てくる。また「わたしゃ有名なビートルズファン」と歌った後にコーラスで“You can't do that”とビートルズの曲のタイトルを歌いこんだり、“You may be wrong”と当時流行ったビリージョエルの“You may be right”をもじったり、遊び心もいっぱい。

たぶん桑田さんやメンバー、スタッフはかなりこの曲には自信を持っていたのではないかと思うが、シングルとしてのセールスはさっぱり。アルバムは評価を受けるがシングルが売れない、という状況が続いていた。シングルが売れないのでテレビにもあまり出ていなかったと思う。

レコーディングがうまく行ってないと言ったが、当時自分が聴いていた貧弱なオーディオシステム(レコードやカセット)だからなのか、最近のリマスターバージョンなどではかなり迫力のある音が楽しめるようにはなった。

しかしこの曲の真の魅力はライブで発揮される。81年当時初めて行ったサザンのライブ。山口市民会館。実はレコードではそれほど好きじゃなかったこの曲が始まったとたんぶっ飛んだ!まだサザンだけでなくロックのライブというものにほとんど行ったことがなくて免疫がなかったこともあるが、これほどの迫力、これほどのノリの良さ、これほどの開放感、異次元のハイテンションがこの世に存在するとは!これがサザンのライブの原体験だった。それ以来サザンは自分にとって唯一無二のものになったと言っていいし、いまだにそれは続いている。その原点となったのがこの曲。

その後数年はライブの定番として、ライブの中での起爆剤として演奏されていた。特に88年の『大復活祭』ではオープニング曲に選ばれてこれがまた感涙ものだった。このライブバージョンは「フリフリ65」のカップリングとして再びシングルになった。このバージョンはこの曲の魅力をフルに発揮していると言っていいだろう。

90年代からはライブで演奏されることは少なくなったが、それでも自分の記憶の範囲では2005年の「みんなが好きです」ツアーや2014年の年越しライブのオープニングで演奏され、いまだにその魅力は色あせない。

個人的にはサザンで一番好きな曲を選べ!と言われたらその候補になるほどの曲。