チャコの海岸物語/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

チャコの海岸物語

13枚目のシングル 1982.01.21

ステレオ太陽族」は大ヒットしたものの、相変わらずシングルが売れない状況が続き、どうやらこの頃の桑田さんの悩みは『やっぱり売れたい・・・』だったみたい。

テレビに出ずっぱりだったころはそれが嫌でたまらなかったらしいけど、呼ばれなくなったらなったで、それは寂しいみたいで、この都合よさというか目だりたがり屋の性分というか、それは自分でも認めているし、ひたすらストイックに自分の音楽を追及するという側面と、常に売れ続けることで社会の中で一定のポジションを保っていたい、というバランスが桑田さんの良さであり、それが実際にできてしまうところがすごさだと思う。

そんな背景から生まれたのがこの曲。後年、「チャコには音楽的な思想は何もありませんから」と語っているように、ただただまたデビューの頃みたいに目立ちたいという「イロモノ」で観られていた時代を今度は自分で演出して見せた。そう考えると世間をある意味意のままに操ったという点ですごいことだと思う。

曲は古いグループサウンズをモチーフにして田原俊彦のものまねでわざと下手な歌手を装っている。テレビには冴えない公務員風の衣装で出演。世間は見事に術中にハマって、これが久しぶりの大ヒット!紅白出場まで果たしたからやっぱり凄い!この辺のセルフプロデュースというか、世間とのバランスのとり方は現在でも生かされていて、いつも売れ続けるサザンであり続けている。

 

 

栞(しおり)のテーマ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

栞(しおり)のテーマ

13枚目のシングル 1981.09.21

アルバム「ステレオ太陽族」からのシングルカット。なんとカップリングは「My Foreplay Music」で、当時は確か両A面シングルだった。アルバムは50万枚売れたし、このアルバムの中でも人気の2曲のシングルカットということで、この強力な組み合わせは数あるサザンのシングルの中でも最強と言っていいほど。さぞかし大ヒット!と思いきや全くヒットしなかった・・・・

個々の曲は決して人気がないわけではないのに・・・なぜだかわからない。

前年の「Five Rock Show」プロジェクト以来シングルが売れなくなっていて、これは推測だけど、桑田さん、メンバー、スタッフみんなこのシングルにはかなりの自信と期待を抱いていたのではないだろうか?それが完全に裏切られた結果となり、落胆もおおきかったのでは?

その証拠に、かどうかわからないけど、これ以降、現在2018年に至るまで、先に出たアルバムからシングルを出す、といういわゆる『シングルカット』というやり方はサザン/桑田さんではなくなってしまった。

曲についてはアルバム「ステレオ太陽族」内のレビュー参照

 

栞(しおり)のテーマ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

13. 栞(しおり)のテーマ

出た!いうまでもない超名曲。サザン、ソロを含めて数えきれない桑田さん作のバラードの名曲の中でも有数の傑作。

お得意の8分の6拍子のパターンは素晴らしい曲が多くて、「恋はお熱く」「ラチエン通りのシスター」「素敵なバーディ」「引き潮(Ebb Tide)」など。桑田さんは結構同じ系統の曲を踏襲することがあるけど、この手の曲の中では結局「栞のテーマ」を超えられないと何かのインタビューで話していたような気がする。またこのパターンは意識してか海とか渚をイメージさせる曲が多く、これもサザンの典型的なイメージを形成する要因のひとつになっている。

エレクトリックピアノが印象的なイントロ。全部がサビみたいな美しいメロディ。情景が目に浮かぶような歌詞。原坊のコーラスもいい。

81年9月の大阪フェスティバルホールでのライブ。アンコールもすべて終わったのに興奮冷めやらずアンコールの拍手が鳴り響く中、再びステージに現れたメンバー!桑田さんが「今一番気に入ってる曲なんでもう一度聴いてください」と言って最後にもう一度演奏されたこの曲が忘れられない。あんなことは後にも先にもあの時だけの経験だった。

いまだにライブで演奏されることも多く、古い曲だけど最新の曲と比べてもまったく遜色なく、たくさんの人の心の中で生き続けている曲だと思う。

ムクが泣く/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

10. ムクが泣く

関口和之(ムクちゃん)さんのビートルズ愛たっぷりの曲。タイトルはもちろんビートルズの「僕が泣く(I'll cry instead)」をもじったもの。

聴いていると何となく「ノルウェイの森(Norwegian Wood)」あたりを思い浮かべてしまうのは自分だけだろうか?

前作「タイニイ・バブルス」では松田弘さんボーカルの『松田の子守唄』(作詞作曲は桑田さんだけど)を収録し次作「NUDE MAN」では大森隆志さんの「猫」を収録していたり、80年代は結構桑田さん以外のメンバーの曲をアルバムに入れていた。中でもムクちゃんは「南たいへいよ音頭」(綺麗)とか「最後の日射病」(KAMAKURA)とか結構意欲的なのがわかる。

この曲も、まるで♪僕はビートルズが好きだ~♪って歌っているみたで、それだけで微笑ましい。