綺麗/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

綺麗

1983.07.05 6枚目のアルバム

最初に1曲目の「マチルダBABY」のイントロを聴いた時には、「ひええ~、サザンがテクノポップになっちゃった!」というのが第一印象。

デビュー以来、ブルースやスワンプロックなど黒人音楽を源流とする、いわゆる「ルーツミュージック」をずっと追及してきたサザンだけど、前作「NUDE MAN」でそれがひとつの到達点に達し、完成された感があった。そしてこの「綺麗」からはさらに新しいフィールドに踏み出していこうという意欲が感じられる。

当時世界のミュージックシーンは、70年代後半から始まったニューウェーブがそれまでのロックの在り方を変えて、よりシンプルなロックから新しいテクノロジーを使ったテクノ、NYなどのクラブから始まったラップ/ヒップホップ、ワールドミュージックの影響を受けたエスニックなものなどどんどん多様性を増していたように思う。またそれらは今でもポップ・ミュージックの基礎になってると感じる。それだけこの時期は新しいものがどんどん出てきて、ポップ・ミュージックが変わっていった時代で、サザン/桑田さんもそれらをどんどん吸収して自分たちも変わろうとしていた、またできれば世界進出も?なんて野心もあったのではないかと推測する。

82年の「チャコの海岸物語」以来再びシングルは出せば大ヒット、アルバムは出せばチャートの1位、桑田さんが他人に提供した、あるいは他人がカバーした曲も次々に大ヒット、という状況で、自信もついただろうしまさに波に乗っている状態だった。

そんな野心いっぱいの意欲作がこの「綺麗」で、それまでのルーツミュージックっぽさはちょっと影をひそめてテクノ、ファンカラティーナ、パンク、アフリカンビート、昭和歌謡、レゲエといっそう音楽性を拡げている。

ここから新しいサザンが始まった。

ALL STAR JUNGO/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

ALL STAR JUNGO 

シングル「EMANON」カップリング/アルバム「綺麗」M05

 

なんだこれは?こんな曲聞いたことない!というのが第一印象。だったかな?とにかくインパクトが強かった。複雑なリズムは当時流行っていたアフリカンビートなのか?わけのわからない、がなり立てるような歌。印象的なイントロのメロディ。

最初に聴いたころはその魅力が正直よくわからなかったけど、ライブで聴いて印象は一変した。「たいした発表会・私は騙された!!」ツアーでは後半の盛り上がりで演奏され、イントロの野太い音と分厚いリズムに一発でやられて、大好きな曲になった。

また、88年の「大復活祭」ライブは、サザン~桑田さんソロ~サザンという3部構成だったけど、その後半のサザンのパートの最初で、これまたインパクトが超強くて、会場の雰囲気を一気に盛り上げた。

ただ、それ以後は99年歌舞伎町シークレットライブなどを除いてほとんどライブでは演奏されていない。もっとライブでやってくれてもいいと思うんだけど。

EMANON /サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

EMANON 

18枚目のシングル 1983.07.05

アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)というジャンルにはまるだろうか。それまでのサザンにはなかったタイプの曲。ちょっとジャズっぽくもあるし、ソウルっぽくもある。

「ごめんねチャーリー」「Big Star Blues」「思い出のスターダスト」以来のソウルフルな女性コーラスグループ「EVE」も参加している。そのフィーチャーぶりは前3曲に比べると随分控えめだけど。

シングルの流れでいうとこの1年「YaYa~あの時代を忘れない」「ボディスペシャルII」とキャッチ-な曲が続いたあとにこの、どちらかというと地味な曲。しかもニューアルバム「綺麗」のリードシングル。相当な自信作だったかもしれないけど、セールス的にはいまいちパッとしなかったように思う。

 

ボディスペシャルⅠ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

ボディスペシャルⅠ

シングル「ボディスペシャルⅡ」カップリング

 

サザンとしては初の原由子作詞作曲作品。しかもインスト。よく聴くと短い英語の歌がちょっとだけあるけど。

なんでこっちがⅠでA面がⅡなのか?とか色々疑問は湧くけど、多分大した意味はない。

でもゆったりした雰囲気のいい曲で、激しいA面といいバランスが取れている。見過ごされがちだけど、結構楽しめる曲。

もしかするとどこにも紹介されたことのないかもしれない短い歌詞をご紹介。

How do you think of me, my dear one?

Why am I apart from you, my loved one.

Miss you.

 

当時世界を席巻していたイギリスのロックバンド「THE POLICE」の曲に「Synchronicity I」と「Synchronicity II」というのがあり、これも「Ⅱ」の方が有名で、もしかしてそれを真似たのか(失礼!)とも思ったけど、確認すると、「ボディスペシャル」の方が先だった!桑田さん原坊、疑ってごめんなさい!

ボディスペシャルⅡ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

ボディスペシャルⅡ

17枚目のシングル  1983.03.05 桑田佳祐27歳

 

 やっぱりサザンはロックバンドだ!と強烈に感じさせてくれるナンバー。当時シングルとしてはこういうロックナンバーでヒットした曲はあまりなかったので、我々ファンとしては快哉を叫んだ記憶がある。「チャコの海岸物語」以来シングルも出せば大ヒット、という状況で「ザ・ベストテン」などのテレビ番組にもよく出ていた。

ただ、あえて言うなら、この時代はまだレコーディングと曲本来の魅力のバランスが取れていない時があって、この曲も曲本来の迫力や疾走感みたいなものがレコードでは表現しきれていない気がする。後日、大森隆志さんが「レコードではもっとギターを強調するべきだった」という意味のコメントをしていたが、確かにそうかも。

また、たまたまつい先日(2018年6月2日)のラジオ「やさしい夜遊び」でこの曲について、当時ドラマーの間で流行っていたシンセ・ドラム「シモンズ」を新しい物好きの松田弘が取り入れて、初めて使った曲だと語っていた。なるほど。確かにドラムの音が少し違うとは思っていたけど。

この曲はライブでもよく演奏される定番曲のひとつで、長い間にわたってライブでアレンジも変えたり成長してきた曲だと思う。最近では2008年の30周年「真夏の大感謝祭」(無期限活動休止)や2014年の年越しライブ「ひつじだよ!全員集合!」の後半で演奏された。

 

シャッポ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

シャッポ

シングル「YaYa〜あの時代(とき)を忘れない カップリング

 

山下達郎みたい…

今では夫婦ぐるみで交流の深い二人だけど、この頃はどうだったのか?

山下達郎テイストの曲はひとり多重録音のパターンでこの後も出てくる。

夏らしいトロピカルなサウンド(言葉の使い方が80年代?)、毛ガニのコンガがよく効いている。でも山下達郎のこの世界はやっぱり彼独特のもので、これをサザンがやってもね…という感じ。

曲の後半の間奏はこれも当時流行っていたフュージョンぽい感じ。サザンもデビュー当時に比べると演奏力が格段に上がってきて、より色んなジャンルに挑戦してみたくなるのだろうか?

YaYa〜あの時代(とき)を忘れない/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

YaYa〜あの時代(とき)を忘れない

16枚目のシングル  1982.10.05

いとしのエリー」以来、桑田さんの作曲家としての稀有な存在感を世間に知らしめた超名曲。曲も素晴らしいし、演奏も『ロックバンドが奏でる正統派バラードの王道』という感じで真正面から勝負していて、それがまた素晴らしい仕上がりとなっている。

歌詞は、それまでは語感重視で意味はどうでもいいという発言が多かったが、この頃からようやく意味にもこだわるようになってきたみたい。自身の青学時代のことを歌っていて♪独り身のキャンパス 涙のチャペル とか♪Better Days とか出てくる。個人的な歌詞にも聴こえるけど、こういう回想的な、ノスタルジックな感情は多くの人に共感するものなので、聴く者はみんな自分の思い出を重ね合わせて感情移入してしまい、『自分の歌』みたいになってしまうのではないか?かくいう自分もそうだけど。

大学2年生、20歳の頃にこの曲を知り、当分の間サザンで一番好きな曲だった。

ライブでは、82年当時の「青年サザンのふらちな社会学」ツアーではオープニングでこの曲のレコード音源が使われてライブ本編のラストで生演奏と重要視されていた。

また、なんといっても近年になって、2008年8月の30周年ライブ@雨の日産スタジアム。無期限活動休止のライブで最後の最後、アンコールのラストにこの曲が演奏された時は涙なしには聴けなかった。なぜこの曲を最後の曲に選んだのか?という理由を当時桑田さんはこう説明した。「この曲なら誰も文句言わないだろうと思って。」

さらにさらに、もうサザンは聴けないのだろうと思って過ごした5年間、桑田さんの闘病や東日本大震災などを経て、2013年突然のサザン復活!この年の8月~9月に行われた復活ライブ「灼熱のマンピー!Gスポット解禁!!」ではなんとオープニングでこの曲が!!!ただ残念ながらこのライブは各地2DAYS開催でオープニング曲が1日目「海」2日目「YaYa」と日替わりで、自分が行った2回(神戸&茅ヶ崎)はどちらも初日だったので「海」。これはこれで素晴らしかったけど、「YaYa」も聴いてみたかった~(涙)。

ちなみに、タイトルの「YaYa」の由来は誰か知りませんか?知ってたら教えてください。「YaYa」といえば知ってるのは、ジョンレノンのアルバム「Rock n' Roll」に同名の曲があることくらい。同アルバムは確か74年作で桑田さんで言えば高校時代?