唐人物語(ラシャメンのうた)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー
08. 唐人物語(ラシャメンのうた)
一片の美しい短編小説のような曲。唐人(ラシャメン)とは幕末期の洋娼のことで、米国公使タウンゼントハリスの世話をしていた芸者お吉のことを歌っているとされる。
この曲では、日本語がこれほど美しくイメージ喚起力に優れているのかと気づかせてくれる。「さくら」というアルバムタイトルが出てくるのもこの曲だけ。そう考えると、このアルバムではこれまでになく日本語にこだわっていると考えることもできる。さくらという言葉もこの曲では華やかさとともに儚さを感じさせるイメージで使われている。
美しいがどこか憂いを湛えたメロディに原坊の透明感のあるボーカルが素晴らしい。原坊ボーカル曲の中でも屈指の名曲だろう。2018年の「海のOh Yeah!!」に収録されたのもうなずける。
LOVE AFFAIR~秘密のデート/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー
04. LOVE AFFAIR~秘密のデート
シングルの稿をご参照ください。
アルバムの中では、この曲で一気に盛り上がり、リスナーはアルバムに引き込まれていく、そんな強い効果を発揮している。
マイ フェラ レディ/サザン40周年記念勝手に全曲レビュ
03. マイ フェラ レディ
この曲を聴いた時ほど「桑田さんは天才だ!」と思ったことはない。サラッと聴いていると古いジャズスタンダードか何かに聴こえる。歌詞はスペイン語かな?
と思ったらこれが全部日本語で、しかもこうして「レビュー」と称して感想を書くことも恥ずかしくなるほどのエロ表現の羅列また羅列。しかも表現が下品!だけど面白い!歌詞を読みながら聴いてると吹き出しそうになる。「プエルトリコ マルガリータ」かと思ったら「(下の毛)増えるといい子丸刈りだ」って・・・
しかもバックの演奏はしごく真面目にジャズしてるから余計に可笑しい。
以前、桑田さんが著書「ロックの子」だったか、「ディジーガレスピー(ジャズトランぺッター)のふくらんだほっぺた、王貞治の一本足打法、あれをポップだと思わなきゃ。」と語っていたが、「一見奇異に見えることでもオリジナリティを突き詰めることがポップだ」と解釈するなら、この「マイ フェラ レディ」こそ桑田佳祐のポップだ。桑田さんの音楽的なキャパの大きさ、言語感覚、エロオヤジぶり、エンターテインメント精神が合わさってこそ誕生した傑作。
「希望の轍」もいい。「いとしのエリー」もいい。でもこの曲あってのサザンだ。こんな曲が創れるのは日本に、いや世界にも桑田佳祐しかいないのではないか?
YARLEN SHUFFLE~子羊たちへのレクイエム~/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー
02. YARLEN SHUFFLE~子羊たちへのレクイエム~
この曲は1970年代~80年代にややマニアックなロックファンの間で人気があったアメリカのバンド「スティーリー・ダン」を意識していると考えられる。キーボードのイントロ、管楽器の使い方がまるでそんな感じ。スティーリー・ダンは大好きなバンドなので、個人的には大好きな1曲。
歌詞はそろそろ桑田さんお得意の、という感じになってきた社会風刺。子ども達、サラリーマン、夫婦、日本人全般といったところが今回の主人公で、二人称で語られる。とにかくこの曲のAメロの歌詞を1番2番3番と読みながら聴いてほしい。綺麗なリズミカルでちゃんと韻を踏んでいて口ずさんでいても心地よくて、それでいてしっかり意味が通っていて社会風刺として成立している!この曲が傑作であることがわかるだろう。この手の「社会派桑田佳祐」の曲としてはナンバー1ではないだろうか?こうした曲はその時代を歌っているので時間がたつと時代と歌詞がマッチしなくなる場合がある。そのためライブではあえて替え歌で歌ったりする場合があるが、この曲ほど完璧に韻を踏んでリズムと一体化していると替え歌にはなりえないのかもしれない。
でもライブでまた聴いてみたいなぁ。