過ぎ去りし日々(ゴーイングダウン)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

01. 過ぎ去りし日々(ゴーイングダウン)

なぜか桑田さんのソロアルバムの1曲目は内省的なロックンロールが多いが、この曲はまたインパクト大。ジョン・レノンばりのゴキゲンでイキのいいロックンロールが炸裂!桑田さんとしてもここまでストレートなのは珍しい。

歌詞はおそらくは自分自身を投影して「全盛期は過ぎた」と嘆くロックスターを歌う。それでも「鏡の向こうの友」に向かって「Singin' Pop Pop Pop Pop」

「がらくた」ツアーでは終盤の盛り上がり(桑田さんは『客煽り』と呼ぶ)の1曲目で歌いメチャメチャ盛り上がった。ツアー前半では(自分が見た時もそうだったが)丸い黒ぶち眼鏡だったりラメの衣装で昔のロックスターくずれの道化師のように扮して歌っていたが、ツアー後半からは完全に内田裕也のパロディで登場。これがまた笑えた。

またステージ下手(向かって左側)の金原千恵子さんやコーラスのタイガーさん達の盛り上がり方も見もので、これも大きく盛り上がる一因になっている。

とにかくこの曲最高。

がらくた/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

がらくた

2017.08.23 桑田佳祐61歳

ソロ5枚目のアルバム

「がらくた」と名付けられた、現在の日本で最高のポップ・ミュージック。桑田さんは「大衆音楽」という言い方を好むかな?

無駄な曲が1曲もなくて、1曲目のイントロから最後の曲の最後まで一気に聴いてしまう。既発のシングル曲も多いけど、シングル・カップリング曲でも収録されていない曲もあるし、この年の「偉大なる歌謡曲に感謝」(WOWOWで放送されのちに映像作品化)で放送された名曲「悪戯されて」もアルバム本編には入っていない。※初回限定版の特典映像にMVが収録されているが。その意味では寄せ集めではなくてしっかりとしたコンセプトのもとに構成されていると言っていい。

そのコンセプトとは何か?思うに、『今の世に問うポップ・ミュージック』みたいなことか?桑田さんもしきりに「還暦」という言葉を使うし、以前よりも自分や周囲の年齢、社会情勢、音楽シーンなどを常に意識して、それらとの関わりを歌うことが多くなっているように思う。東日本大震災から数年は「いのち」や「ふるさと」というものがテーマになった曲が多かったが、自分の病からの復活、サザンの復活を経て再びソロに立ち返った時に自然に意識するのは、『今の世に音楽でできることは何か?』みたいなことではないか?とは言っても1970年代のロックシーンのように政治的に何かを成し遂げようというのではなく、あくまでも個人個人の心に何かを届けてひとりひとりが元気になれば、という思いからこれらの「がらくた」を生み出してきたのではないだろうか。桑田さん本人としてはそれほど大したことはできないというある種の自虐から「がらくた」というタイトルになったのかもしれないが、その「がらくた」のひとつひとつが大切な今日の、明日の活力になっているというのは聴いている自分たちが一番よくわかる。

個人的にはアルバム後半が特に自分にとって大切な歌ばかりで、桑田さんのソロ作品の中では今は一番大事なアルバムとなっている。

全国のアリーナやドームを回ったライブツアー「がらくた」も全28曲のうち14曲がこのアルバムの曲だったけど、無理やりニューアルバムの曲をやりました感は全くなくて、非常に濃密なライブだった。

メンチカツブルース/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

メンチカツブルース

シングル「君への手紙」カップリング

ロバートジョンソン、の曲を歌うエリッククラプトン、を真似してるみたいな曲。思わずニヤッとしてしまう。もっとも、クラプトンはこんなふざけた曲はやらないけど。

そんなトラディショナルなブルースで、メロディ、ギターのフレーズ、一つ一つが全てロバートジョンソンの頃の素朴な味わい。でもクラプトンに言わせるとロバートジョンソンの曲はメチャメチャ高度で迫力があるのだそうだが、よくわからない。

この曲はブルース好きを公言している桑田さんには意外なほど珍しいベタなブルースで、ちょっとマニアックに楽しめる。歌詞はダジャレやダブルミーニングを交えた遊び心満載。

2016年の年末ライブ「ヨシ子さんへの手紙」でエレクトリックギターで演奏された。

あなたの夢を見ています/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

あなたの夢を見ています

シングル「君への手紙」カップリング

ロマンティックなウィンターソング。「ダーリン」「白い恋人達」「Kissin' Christmas」「シャララ」「Christmastime forever」「クリスマスラブ」「Lonely Woman」あたりと並べると、素敵なクリスマス向けのプレイリストが出来上がる。

斉藤誠さんが、この曲について、サビのスピード感が凄い。と発言していたが、まさにその通りで語呂を重視した歌詞と美しいメロディや勢いのあるアレンジでせつなさが増幅する。さらに、個人的にはこの曲の最大の魅力は間奏で、ライブでは斉藤さんが弾いていたがスライドギターのソロと「ウー・ララ」というコーラス、そして再びサビに戻る直前のピアノ。これらはビートルズを思い出していつもノリノリになってしまう。

後半のサビはブレイクとか入ってさらに疾走感が増し、高揚感に包まれる。

ライブツアー「がらくた」では雪の精みたいな、白い衣装のダンサーも登場して冬のイメージを盛り上げた。また間奏のスライドギターは斉藤さんと中シゲオさんのツイン。これはたまらん!

悪戯されて/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

悪戯されて

シングル「君への手紙」カップリング

これも発表当時(2016年11月)にこのブログに書いた感想があるので、まずはそれを再掲する。こちら↓

WOWOWやフジテレビで放送され、DVDにもなる「偉大なる歌謡曲に感謝」で、内山田洋とクールファイブみたいに扮して歌っていた、パロディのような、でもよく聞くと胸を締めつけるほど切ない曲。この手の桑田佳祐スタイルの歌謡曲には、2013年の「YIN-YANG」「おいしい秘密」などがあるが、この曲は中でも白眉というか、昭和の歌謡曲の艶やかさというか色っぽさが一番良く出てる。ノスタルジーというより、昭和30年代か40年代にホントに桑田佳祐という歌手がいたみたい。

どちらかというと洋楽で育ったと思っていた自分にも、やっぱり昭和30年代生まれのDNAがあるんだなぁと再認識した次第。

なんとも言えない切なさが胸を打つ名曲。幅広い世代の人たちに聞いてほしい。

↑ここまで。

今感じるのも、ここに書いてある通りなのだが、少し追記すると、この年の年末ライブ「ヨシ子さんへの手紙」を横浜アリーナで観た時、オープニングで広末涼子主演のサスペンスドラマ風のMVが流れる中、この曲が歌われ、度肝を抜いた。このMVも普通にドラマとしてちゃんと成立していて、インパクトが強い。

このライブでは前川清の真似をしながら歌っていて笑いを誘っていた。

君への手紙/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

君への手紙

2016.11.23  ソロ17枚目のシングル

ウッチャンナンチャン内村光良監督の映画「金メダル男」主題歌。映画も見たが、映画のストーリーをなぞるような歌詞で、この主人公や作者の内村光良さんのことを歌っているようだ。

初期のボブ・ディランみたいなアコースティックギターと語り掛けるような桑田さんのボーカルが印象的。後半は力強く盛り上がっていく構成はダイナミック。クレジットを確認するとキーボードを原坊が、またコンピューター関係をいつもの角谷さんがやっている以外は桑田さんの演奏。

この曲を貫くのは大切な人へのやさしい眼差し。聴く者をせつなくさせたり勇気づけたりする言葉が並ぶ。サビに出てくる「サヨナラと出逢いの繰り返し」という言葉は、桑田さんが意識したかどうか知らないが、ビリー・ジョエルの「Say Goodbye To Hollywood」にある「Life is a siries of helloes and goodbyes」という一行を思い出す。

どことなく、桑田さんの重ねてきた年輪というか人生の深みを感じさせる曲。

明日晴れるかな(Live at Onagawa Station -2016.03.26)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

明日晴れるかな(Live at Onagawa Station -2016.03.26)

シングル「ヨシ子さん」カップリング

ここに収録されたこのスペシャルライブの3曲は宮城女川のさいがいFMの閉局というシチュエーションを考慮してのものだろう。震災から5年というタイミングで少しずつリアリティが薄れていく中で、桑田さんはことあるごとに「震災はまだ終わっていない」と発言している。

この曲はライブの最後に演奏された。これを聴いて、桑田さんの心情や会場で聴いた宮城の人たちに思いをはせ、自分もまた明日から頑張ろう、と思った人は多いだろう。

ただ実はこのライブの最高の演奏はオープニングの勝手にシンドバッドだった!ラジオではオンエアされたが、アコースティックなシンドバッドは初めて聴いた。ジプシーの祭典のような、ちょっと憂いを含んだ曲調に改めてこの曲の深みを感じた、