愛のささくれ~Bobody Loves Me/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

06. 愛のささくれ~Nobody Loves Me

うねるリズムが特徴的で本格的なR&B。リズムの厚みなどネヴィル・ブラザーズあたりを聴いているようだ。歌詞にはビヨンセとかスティービーワンダーとか出てくる。

間奏では珍しいラップも聴くことができる。

桑田さんの音楽的な幅を感じさせる1曲。

歌詞は女性を口説こうとするのにうまくいかない、桑田さんの曲によく出てくるモテない男の物語。語り口のエロさが桑田さんらしい。またこの曲はWOWOWのTVCMにも使われていて、電車の中で眠りこけて周りに迷惑をかけている冴えないサラリーマンを桑田さんが演じている。クスっと笑ってしまうような演技が印象的だった。

簪(かんざし)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

04. 簪(かんざし)

いまだにこの曲のタイトルを漢字で書けない。

島健さんの管編曲によるジャジーなバラード。ジャズっぽい曲はこれまでもあったが、この曲はこれまでとは一線を画す本格的なジャズ・フレーバー。ラジオ「やさしい夜遊び」等でかける曲は結構ジャズボーカルも多く、桑田さんも好きなのだとは思うが、自分の曲にはなかったタイプ。これも桑田さんの新境地か。

歌詞の世界観は都会の孤独、堕ちた愛、そしてはっきりとは言われていないが死、みたいなものか。「まゆら」とか「ごちた」とか、言葉の選び方、使い方がこれまでにない。かなりの苦心作のようだ。

 

大河の一滴(Album version)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

03. 大河の一滴(Album Version)

シングルの稿をご参照ください。

このアルバムはシングル既発曲はすべてリマスター(一部リミックス?)が施されてAlbum versionとして収録されている。曲によって違いがはっきり分かるものもあるが、この曲は自分にはあまりわからない。

eboshi-rock.hatenablog.com

若い広場/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

02. 若い広場

この年話題になったNHK朝ドラ「ひよっこ」のテーマ曲。一聴してレトロな昭和歌謡で、昔の曲を引っ張り出してきたみたいだけど、れっきとした2017年作品だから驚く。サビの部分などは「青い山脈」の藤山一郎みたい。だけどただレトロ調の歌謡曲に似せて創られたのかと言うと実はそうではない。桑田さんも言っていたが、実は60年代に活躍した知る人ぞ知る和製ドゥーワップ・グループ「キングトーンズ」(「グッドナイトベイビー」などが代表作)みたいな要素も入れて、日本の歌謡曲に当時の洋楽を取り込んで、とかなりマニアックな作品。もっとも桑田さんに言わせると、当時の歌謡曲というのは、洋楽でもなんでも全部ごちゃまぜにしてしまえ、といったエネルギーがあったのだそうだけど(「第3回ひとり紅白歌合戦」後の「やさしい夜遊び」)。

普通に聴いていてもやさしい曲調にほっこりするし、普段桑田さんを聴かないような高い年齢層の人にもこの曲は訴求できていたみたいだ。

ひよっこ」のテーマ曲を桑田さんに頼んだNHKもすごいけど、応えて見せた桑田さんもやっぱりすごい。

過ぎ去りし日々(ゴーイングダウン)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

01. 過ぎ去りし日々(ゴーイングダウン)

なぜか桑田さんのソロアルバムの1曲目は内省的なロックンロールが多いが、この曲はまたインパクト大。ジョン・レノンばりのゴキゲンでイキのいいロックンロールが炸裂!桑田さんとしてもここまでストレートなのは珍しい。

歌詞はおそらくは自分自身を投影して「全盛期は過ぎた」と嘆くロックスターを歌う。それでも「鏡の向こうの友」に向かって「Singin' Pop Pop Pop Pop」

「がらくた」ツアーでは終盤の盛り上がり(桑田さんは『客煽り』と呼ぶ)の1曲目で歌いメチャメチャ盛り上がった。ツアー前半では(自分が見た時もそうだったが)丸い黒ぶち眼鏡だったりラメの衣装で昔のロックスターくずれの道化師のように扮して歌っていたが、ツアー後半からは完全に内田裕也のパロディで登場。これがまた笑えた。

またステージ下手(向かって左側)の金原千恵子さんやコーラスのタイガーさん達の盛り上がり方も見もので、これも大きく盛り上がる一因になっている。

とにかくこの曲最高。

がらくた/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

がらくた

2017.08.23 桑田佳祐61歳

ソロ5枚目のアルバム

「がらくた」と名付けられた、現在の日本で最高のポップ・ミュージック。桑田さんは「大衆音楽」という言い方を好むかな?

無駄な曲が1曲もなくて、1曲目のイントロから最後の曲の最後まで一気に聴いてしまう。既発のシングル曲も多いけど、シングル・カップリング曲でも収録されていない曲もあるし、この年の「偉大なる歌謡曲に感謝」(WOWOWで放送されのちに映像作品化)で放送された名曲「悪戯されて」もアルバム本編には入っていない。※初回限定版の特典映像にMVが収録されているが。その意味では寄せ集めではなくてしっかりとしたコンセプトのもとに構成されていると言っていい。

そのコンセプトとは何か?思うに、『今の世に問うポップ・ミュージック』みたいなことか?桑田さんもしきりに「還暦」という言葉を使うし、以前よりも自分や周囲の年齢、社会情勢、音楽シーンなどを常に意識して、それらとの関わりを歌うことが多くなっているように思う。東日本大震災から数年は「いのち」や「ふるさと」というものがテーマになった曲が多かったが、自分の病からの復活、サザンの復活を経て再びソロに立ち返った時に自然に意識するのは、『今の世に音楽でできることは何か?』みたいなことではないか?とは言っても1970年代のロックシーンのように政治的に何かを成し遂げようというのではなく、あくまでも個人個人の心に何かを届けてひとりひとりが元気になれば、という思いからこれらの「がらくた」を生み出してきたのではないだろうか。桑田さん本人としてはそれほど大したことはできないというある種の自虐から「がらくた」というタイトルになったのかもしれないが、その「がらくた」のひとつひとつが大切な今日の、明日の活力になっているというのは聴いている自分たちが一番よくわかる。

個人的にはアルバム後半が特に自分にとって大切な歌ばかりで、桑田さんのソロ作品の中では今は一番大事なアルバムとなっている。

全国のアリーナやドームを回ったライブツアー「がらくた」も全28曲のうち14曲がこのアルバムの曲だったけど、無理やりニューアルバムの曲をやりました感は全くなくて、非常に濃密なライブだった。