サイテーのワル/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

08. サイテーのワル

テクノロジーを活用しまくったハードロック。アルバムの中にたいてい1曲はこういうのが入っている。グイグイ引き込まれる迫力がある。

Tigerのちょっとエスニックなスキャットが入っていたり、桑田さんのボーカルにもエフェクトをかけてみたり、敢えてリズムのパターンを崩した不規則なブレイクを入れてみたりとなかなか凝ったつくりになっている。

歌詞は現代の「炎上社会」「血祭り社会」をアイロニカルに歌っている。インターネット上であることないこと真偽もわからない情報が拡散され信じられて、誰かが一方的に悪者になる、という現代の一種の病理を桑田さんは訴えようとしているのだろう。

愛のささくれ~Bobody Loves Me/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

06. 愛のささくれ~Nobody Loves Me

うねるリズムが特徴的で本格的なR&B。リズムの厚みなどネヴィル・ブラザーズあたりを聴いているようだ。歌詞にはビヨンセとかスティービーワンダーとか出てくる。

間奏では珍しいラップも聴くことができる。

桑田さんの音楽的な幅を感じさせる1曲。

歌詞は女性を口説こうとするのにうまくいかない、桑田さんの曲によく出てくるモテない男の物語。語り口のエロさが桑田さんらしい。またこの曲はWOWOWのTVCMにも使われていて、電車の中で眠りこけて周りに迷惑をかけている冴えないサラリーマンを桑田さんが演じている。クスっと笑ってしまうような演技が印象的だった。

簪(かんざし)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

04. 簪(かんざし)

いまだにこの曲のタイトルを漢字で書けない。

島健さんの管編曲によるジャジーなバラード。ジャズっぽい曲はこれまでもあったが、この曲はこれまでとは一線を画す本格的なジャズ・フレーバー。ラジオ「やさしい夜遊び」等でかける曲は結構ジャズボーカルも多く、桑田さんも好きなのだとは思うが、自分の曲にはなかったタイプ。これも桑田さんの新境地か。

歌詞の世界観は都会の孤独、堕ちた愛、そしてはっきりとは言われていないが死、みたいなものか。「まゆら」とか「ごちた」とか、言葉の選び方、使い方がこれまでにない。かなりの苦心作のようだ。

 

大河の一滴(Album version)/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

03. 大河の一滴(Album Version)

シングルの稿をご参照ください。

このアルバムはシングル既発曲はすべてリマスター(一部リミックス?)が施されてAlbum versionとして収録されている。曲によって違いがはっきり分かるものもあるが、この曲は自分にはあまりわからない。

eboshi-rock.hatenablog.com

若い広場/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

02. 若い広場

この年話題になったNHK朝ドラ「ひよっこ」のテーマ曲。一聴してレトロな昭和歌謡で、昔の曲を引っ張り出してきたみたいだけど、れっきとした2017年作品だから驚く。サビの部分などは「青い山脈」の藤山一郎みたい。だけどただレトロ調の歌謡曲に似せて創られたのかと言うと実はそうではない。桑田さんも言っていたが、実は60年代に活躍した知る人ぞ知る和製ドゥーワップ・グループ「キングトーンズ」(「グッドナイトベイビー」などが代表作)みたいな要素も入れて、日本の歌謡曲に当時の洋楽を取り込んで、とかなりマニアックな作品。もっとも桑田さんに言わせると、当時の歌謡曲というのは、洋楽でもなんでも全部ごちゃまぜにしてしまえ、といったエネルギーがあったのだそうだけど(「第3回ひとり紅白歌合戦」後の「やさしい夜遊び」)。

普通に聴いていてもやさしい曲調にほっこりするし、普段桑田さんを聴かないような高い年齢層の人にもこの曲は訴求できていたみたいだ。

ひよっこ」のテーマ曲を桑田さんに頼んだNHKもすごいけど、応えて見せた桑田さんもやっぱりすごい。