引き潮～Ebb Tide～／サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

15.　引き潮～Ebb Tide～

 この大きな波のようなアルバムの最後を飾るのはひっそりとした美しいバラード。このタイトルといい、恋人との別れを歌う歌詞といい、さらに言えばビートルズの「アビイ・ロード」を思わせるアルバムのタイトルとジャケット・アートワークといい、当時僕はこれらすべてを絡み合わせて、「このアルバムがサザン最後のアルバムになる」とある種の覚悟を決めていた。実際にそうなるかどうかは別として桑田さんもそれくらいの覚悟でこのアルバムを作ったのだと思う。

桑田さんお得意の3拍子の「海」をイメージさせるバラード。セルフライナーに「3拍子の曲を創るたびに、『栞のテーマ』を超えることはできないと感じる」的なことを書いていたが、この曲は素晴らしいメロディと歌詞を持っている。桑田さんのボーカルもファルセットが効果的に使われて独特の良さを出している。

歌詞は恋人との別れを歌っているが、どことなくサザンのメンバーに向けたメッセージのようでもあり、少なくとも当時の自分はそのように解釈していた。

この上なく儚くて寂しくて美しい曲。