NEVER FALL IN LOVE AGAIN /サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

07. NEVER FALL IN LOVE AGAIN 

桑田さんにはちょっと珍しい、暗い歌詞のバラード

桑田さんが作るラブソングの歌詞は、相手を想う切ない気持ちをそのままに歌ったものが多い、と自分は思っていて、それが叶わぬ想いであっても相手に対する恨みのようなネガティブな感情が表に出ることはほとんどない。それが多くの人の共感を呼ぶ要因ではないかと感じるのだけど、それからするとこの曲はなんか歌詞がネガティブで異色といえば異色。

それにサザンといえば当時はやっぱり夏のイメージだったけど、この曲は「やけに9月の風が…」といきなり秋をイメージさせてその辺も違和感。

とこの曲にはネガティブなことばかり書いてしまうけど、2013年の「灼熱のマンピー」(復活ライブ)では中盤のアコースティックコーナーで演奏されて、とてもリラックスしていい感じだった。

また83年当時の「私は騙された」ツアーでは、この曲の紹介では、「ジョンレノンに捧げたい」みたいなことを話していたように思う。

そんなヒロシに騙されて/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

06. そんなヒロシに騙されて

これはまたわかりやすい!

ベンチャーズとか、昭和40年代のGS(グループサウンズ)を意識したサウンド。原坊のボーカルがリードボーカルをとっていて、当時はこんな女性ボーカルのバンドなんてなくて、そういうちょっと外した感じとかが楽しい。これもイロモノと言えば言えるかもしれないけど、それで片付けてしまえない楽しさ、ノリの良さがある。

「ヒロシ」とは松田弘さんのことだろうけど、そこは大した意味はなさそう。

この曲、なにげに重要視されているのか、サザン最大のCDセールスを記録したベスト盤「海のYEAH!」に収録されたり(しかも、ほぼ年代順に並んでいるこのアルバムの中で、あえてかなり年代のずれたところに配されている)、30周年ライブ「夏の大感謝祭」(活動休止ライブ)の前半のメドレーで歌われたり。原坊が歌う曲の中でも人気が高い曲なのだろう。

星降る夜のHARLOT/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

04. 星降る夜のHARLOT

レゲエの名曲。インパクトの強いイントロ。憂いをたたえたメロディ。装飾を排したアレンジ。意表をつく曲の進行。桑田さんのボーカルもメンバーの演奏も素晴らしい。中でもヒロシさんのドラムとムクちゃんのペースには目を見張る。

歌詞はいわゆる売春婦を歌っていて、タイトルのHARLOTとはそういう職業の人を指す。「赤い炎の女」ではレズビアン、「かしの樹の下で」では中国残留孤児、そしてこの曲と、歌詞のテーマもかなり難しい問題を取り上げるようになっている。以前は「歌詞はメロディに乗れば意味はどうでもいい」と発言していたが、歌詞の面でも新しいフィールドに挑戦しようとしている姿勢の表れかもしれない。

ライブではこの年の「私は騙された」ツアーと翌年の「やっぱりアイツはクロだった!」ツアーくらいでしか演奏されていない。「クロだった!」ツアーの演奏は特に素晴らしかった。

かしの樹の下で/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

03. かしの樹の下で

 なんとなく中華風のイントロとエンディング、メロディ。リズムはシンセドラム(シモンズ)で他にもシンセが多用されて、今でいう「アンビエンスミュージック」的な雰囲気もあり、3分ほどの短い曲だけど、アルバムの中でも異彩を放つ佳曲。

歌詞は中国残留孤児のことを歌っている。

アルバム「綺麗」発表後の「私は騙された」ツアーではこれがオープニングで歌われて、意表をつかれてびっくりしたのを覚えている。他にはライブでは演奏されていないかな?

赤い炎の女/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

02. 赤い炎の女

当時ファンクとラテンが融合したファンカラティーナというジャンルが出てきて、有名なところではボーイ・ジョージ率いるカルチャークラブの「カーマは気まぐれKarma Kamereon」なんかが大ヒットしていた。この曲はそんなリズムやアレンジを意識している。

間奏のアコースティックギターのソロや終盤のShake it !というブレイクの連続とかラテンテイストいっぱいの独特のノリが楽しめる。

歌詞は女性同士の恋愛、今でいうLGBTを歌っている。これは、ボーイ・ジョージが女装していて、おそらくはゲイだったことと関係あるのだろうか?

ライブでは「私は騙された」ツアー以外ほとんど演奏されていない。

マチルダBABY/サザン40周年記念勝手に全曲レビュー

01. マチルダBABY

イントロのシンセサイザーの音は衝撃的だった。サザンがテクノをやるとは想像もしていなかった。そのあと入るサックスのフレーズも聴いたことがない。でもこれはよく聴くと当時ちょっと流行ったニューウェーブバンドMen At Work のWho Can It Be was Now?にこんなフレーズがあったような?

それまでのサザンは、ルーツミュージックをペースに60年代から70年代初期の音楽を拠り所としていたけど、ここへ来て時代に歩調を完全に同期させたと言えるかもしれない。そう感じた象徴的なアルバムが「綺麗」であり、象徴的な曲が「マチルダBABY」だと思う。

とは言っても、「Big Star Blues」や「ボディスペシャルⅡ」のように、この曲もレコーディングはイマイチ。レコードやCDではこの曲の魅力を充分に表現しているとは言い難い。一度でもライブでこの曲を聴くとはっきりわかるはず。この曲もライブ定番曲の一つで近年では2015年「おいしい葡萄の旅」2013年「灼熱のマンピー」活動休止前の2005年「みんなが好きです」で演奏された。正直、ライブでこの曲を聴くのは最高だけど、レコーディングバージョンはなかなか聴く気にならない。

歌詞についてちょっと。ドラマ仕立てのサスペンス、スリラー的なストーリーが展開する珍しい歌詞。でも実は桑田さんの曲にはこういう曲が結構多い。それを辿っていくだけでも興味深い連鎖が楽しめるのだけれど、それはまた「メリケン情緒は涙のカラー」の稿にでも。