SMILE~晴れ渡る空のように~(2)

この曲については2020年1月に発表された時に一度書いた。

当時は新型コロナウィルスというワードが本格的に騒がれ始めた頃で、まだ誰もTOKYO2020オリンピック/パラリンピックが延期になるとか、世界中がこれほどこのウィルスに翻弄されるとは考えていなかっただろう。おそらくこの曲は当初の予定では2020年7月のオリンピック開幕に合わせて大きな話題性と祝祭感のに包まれながらリリースされて、この年を代表するヒット曲になる、という計画が描かれていたのではないかと推測するけど、またもしかしてそれらに合わせて桑田さんの活動も、ライブやオリンピック関連を含めていろいろと計画されていたのだろうと思うけど、それらはすべて吹っ飛んでしまった。延期が決まってからはこの曲がメディアでオンエアされる機会もほとんどなくなってしまった。それどころかオリンピック/パラリンピック自体、中止論議がかまびすしい。発表時の称賛も一時ぱたりと止まり、まるでこの曲は世間から消えてしまったようだった。

ただ桑田さん本人だけは、この曲を「やさしい夜遊び」で毎週のようにかけ続け、「いつかこの曲をみなさんの前で歌える日が来るといいなと思います」と発信しつづけた。

2021年になり、喧々諤々の論争のなかTOKYO2020は開催。それとともにこの曲も連日民放各局の番組で流れまくった。でもこの曲の価値はオリンピック/パラリンピックの応援ソングというだけではなくなっていた。

♪永きこの地球の歴史のひと幕に立ち会うことを奇跡と呼ぶのだろう

♪情熱を消さないで歩みを止めないで この世に生まれた以上

♪愛情に満ちた魔法も悪戯な運命(さだめ)にも 心折れないで

♪世の中は今日この時も悲しみの声がする

これらのフレーズは、オリンピック/パラリンピックの応援という意味を超えて、コロナ禍にあえぐ日本人へのメッセージとなった。

原由子さんは「やさしい夜遊び」のお留守番DJとして、この曲について「栄光に満ちた者の陰で夢追う人たちがいる いつもそばにいて共にゴール目指してその命燃やしてるんだ」という歌詞を挙げて、桑田さん(原さんによると「けいちゃん」)のこの視点にぐっとくる、いつも泣けてくる、と話していた。「心折れないで でなきゃモテないじゃん!がけいちゃんらしい」とも。またビクターの小野さんはオリンピックの応援歌なのに悲しみを歌っているのがすごいと評価していた。

2021年3月にBLUENOTE TOKYOで行われた配信ライブで、なんとこの曲をアコースティックセットで演奏。ここでの厚みのある演奏の素晴らしさにびっくり。生演奏でこの曲を聴ける幸せに浸ることができた。桑田さんが言う「この曲を早くみんなの前で歌いたい」の意味が分かった?演奏者はもちろんスタッフも一つになったような一体感はこの曲ならではないだろうか。観客のいるライブだったらどうなるのか?

いよいよ「BIG MOUTH, NO GUTS」ツアーでこの曲がファンの前で演奏される!

おそらく桑田さんが作った数多くの曲の中でも指折りの名曲として後世語り継がれるだろう。